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「絵はがきの旅」と「ワールドカップ」

藤村 | 2002. 6/11(TUE) 13:25


 ワールドカップやっております。

 日本の初勝利に沸き上がる今日このごろでございます。

 でも、つい最近まで、日本が欧州の国に勝つなんて、奇蹟だと言われてました。

 それが、「きっと勝つでしょう」なんて普通に言われるようになったのは、よく考えれば驚きです。
 

 さて、思い起こして、前回のフランス・ワールドカップの時、みなさんはなにをしてましたか?

 ちょうど4年前になりますね。1998年。

 あの時、我々は香港におりました。

 香港観光協会さんのご招待を受けて、「大観光旅行」を満喫しとりました。

 コレ、いわゆる「パブリシティー」「タイアップ」という手法で、スポンサー様より「番組に協力いたしましょう!そのかわり、宣伝の方もよろしく!」。お互い持ちつ持たれつ。予算の苦しい番組にとっては、ありがたいご提案です。

 「そりゃもう!宣伝の方は、バッチリさせていただきますよぅ!」

 甘い蜜は決して逃さない我々。

 意気揚揚、香港へと向かったわけでございます。

 香港に到着した日のこと。

 「素晴らしいお部屋!」
 「こんなの見たことない!」
 「さすが香港さん!」

 我々は、関係者の方々もいらっしゃらないのに、惜しみない賛辞を、部屋いっぱいに充満させます。

 ふと見ると、ベッドの上に、なにやら大きな紙袋が4つ、置いてありました。

 それぞれに4人の名前があります。

 「おやおや、なんでしょうか?」

 手に取ってみると、ズシリと重い。

 「お土産だろうか?」
 
 いやしい系タレントの大泉さんは、さっそく無粋な詮索。  

 「さすがホンコンさん!」

 そういう私も、かなりいやしい。少なからず期待を寄せて、中を開けてみました。

 すると中には、「香港のガイドブック」やら、「観光関連資料」やらが、そりゃもうぎっしり。

 「こりゃまた・・・ずいぶんと」

 まぁ、観光協会さんとしては、「まずはこれを全部読んで、なるべく多くの香港の魅力を知っていただきたい。いや、知ってもらわないと困ります!」そういうことなんでしょう。

 当然です。仕事なんですから。

 「でも、ねぇ・・・4つはいりませんよねぇ・・・荷物になりますもんねぇ」

 正直な大泉さんは、さっそくの失言。

 中に、とりわけ重い「束」がありました。

 「なんですかコレ?」

 「あっとぉ!これ全部・・・絵はがきですよぉ!」

 100枚近くありましたね。全部、香港の絵はがき。

 「ありがたいですねぇ・・・大泉さん」
 
 「もう、お土産買う必要ないですもん・・・こんだけあれば」
 
 「あんた、ちゃんと持って帰んなさいよ。せっかく頂いたんだから」
 
 「当たり前でしょう!誰が『重い』なんて言いましょうか」
 
 「言ってんじゃねぇ」

 するとミスターが、「絵はがきの束」をトランプのように切りながら、思いついたようにこんなことを言いました。

 「明日から、香港のどこを回るんでしょうかね?」

 「まぁ、とりあえずガイドさんに、こっちの希望は出しておきましたけど」

 「どうですか?いっそのこと、こん中から1枚引いて、そこへ行きましょうか!」

 「ハハハハ!なに言ってんの」

 そうです。

 「絵はがきの旅」は、4年前の、そんな会話から生まれた企画でした。

 「いいぞ!中山!まだ行ける!」

 香港のホテルに、ミスターの声が響きました。

 決勝トーナメント進出を絶たれた日本が、悲願の1勝を目指して、ジャマイカと戦っています。

 我々4人、英語の実況が鳴り響くテレビの前に座って、それを見てました。

 「なんだよぉう!」

 最後は、ミスターの落胆した声が、部屋に響きました。

 「でも中山、よくやった!」

 あれから4年。

 「絵はがきの旅2」を放送。

 ミスターは様々な奇蹟を起こしました。

 中山も健在です。

 今度は、日本もやってくれるでしょう。

 そして4年後、ドイツ・ワールドカップ。さすがに中山はもういないでしょう。でも、サッカー熱に育まれた新しい世代の選手が、日本を強豪国のひとつにのし上げているかもしれません。

 
 しかし、我が「どうでしょう軍団」は、世代交代もなく、レギュラー固定のまま、全試合フル出場。

 
 次回、「絵はがきの旅3」。

 2006年初夏、放送予定。

 中山なきあとも、最前線でボールを追い続けるミスターの老練な技を、ご堪能ください。