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8月14日放送「原付ベトナム縦断1800キロ」第3夜

藤村 | 2002. 8/20(TUE) 13:01


 ベトナム縦断第3夜。

 あまりにも多くのことが起こりすぎて、テレビ的には、いささか「詰め込み過ぎ」の感も否めないが、それでも、実際「いろんなこと」が起きるんだからしょうがない。

 「え?」「あ?」「なに!なにッ!」言ってるうちに、ドンドン話が進んでしまったので、ここでちょっと、「第3夜」の出来事、整理しておこう。

 ハノイを出発して、およそ5時間。初日の目的地・ヴィンまで、あと130キロという場面から「第3夜」はスタート。そう、「第3夜」にして、まだ「初日」だ。

 確かに初日は、いろいろあった。

 「ハノイの雑踏」「迫り来る対向車」「10分単位で変わる気候」、そして最後に、「豪雨」。

 昼食を終えた後も、「豪雨」は収まらず、カミナリを伴って、ますますその勢いは増してきた。

 「ベトナムの雨季って、いつもこんなに降るんですか?」
 
 ニャンさんに聞くと、
 
 「いえ・・・ベトナムでもこんな雨は、ナイデスネ」
 
 「あっそうなんですか?」
 
 言われて、後部座席を振り返ると、ニャン、フン、タインのベトナム3人組が、じぃ~っと窓の外を見つめている。

 ベトナム人にも、珍しいほどの「記録的豪雨」だったらしい。

 そりゃそうだ。

 今年は、「世界的な大雨」で、特にヨーロッパと東南アジアが壊滅的な打撃を受けた。その真っ只中に、我々は突っ込んでいたのだ。

 出発前、旅行社から、

 「スコールに遭ったら、バイクの走行は不可能です。そうなったら『停滞』もあり得ます」。

 そう言われて、予備日を2日取った。

 しかし、「記録的な豪雨」でも、止まることなく走り続けた二人には、もはや「土砂崩れ」「大地震」など、具体的かつ大規模な災害が目前で起きない限り、『停滞』はあり得なくなった。

 初日は、290キロを走破して、午後6時、ヴィンに到着。

 「サイゴン・キムリエン」という、その町一番のホテル。しかし、1泊およそ4千円。物価はとにかく安いのだ。

 2日目は、ヴィンから、390キロ先のフエを目指す。
 
 全行程7日間のうち、最も長距離の移動区間である。

 タインさんは、「夜8時ごろに、到着でしょう」と言っていた。そう言われたら「じゃぁ6時に着きましょう」、変な負けん気を出すのがミスターだ。

 午前8時、ミスターを先頭に、ハイスピ-ドでヴィンの町を出発。

 まず現れたのは、「アヒル障害」である。画面では分かりにくかったが、二人の目の前、道路いっぱいにアヒルが大行進していた。そりゃ、驚く。

 次に現れたのが、「牛」だ。「Gメン」ばりの堂々の行軍。

 初日は「カブ」「自転車」「歩行者」など、主に「人的障害物」が路上に出現したが、2日目・第2ステージからは、「動物障害」も出現し始めた。

 なかなかに楽しい「ドライビング・ゲーム」である。

 そう。この「ベトナム縦断」は、まさにプレステあたりにありそうな「ゲーム」を体感しているようだった。

 様々な障害をクリアしながら、1800キロ先のゴールを目指す。タイムリミットは7日間!

 スーパーカブ・ドライビングゲーム「ホーチミンへの道」。

 このゲーム。

 難しいのは、なにも「障害」は、路上に出現する「障害物」だけに留まらない。

 プレイヤーの命綱「通信手段」までも奪う。これを奪われたプレイヤーは、後方から出現する「危険な追い越し車両」に対し、全く「無防備」になる。本来なら、ヒゲ面の支援者から「はい!車来ます。気をつけて」と、事前に危険を知らせてもらえるが、それが無くなる。

 しかし、一番大きな問題は、「次の交差点、左です」「この先のレストランに入って下さい」、そんな指示を全く受けられなくことだ。

 だって、プレイヤー自身は、「道順」を全く知らないのだ。

 難しい!というより、これでは、ゲーム進行自体が、ほとんど不可能になる。

 まぁ、それぐらい、ミスターが「トランシーバー」を落としたのは、痛かった。痛すぎた。

 確かに普段からしゃべらない出演者ではある。だからと言って、

 「特に、番組上、支障は・・・」

 んなことでは済まされない大問題なのだ。

 「ラスト・ラン」。

 ホーチミンに着く直前、ミスターに語り掛けたい。

 「ミスター・・・今、なにを考えてますか?」

 ミスターは、なんと答えるだろうか。

 我々3人に、そしてテレビの前のみんなに、どんな言葉を残すのだろうか。

 「どっかに売ってないのかな?」、タインさんに聞いたところ、「ベトナムでは、トランシーバーは売っていない」と言われた。もう「八方塞がり」である。

 しかし、なんとかしなければいけない。

 そして、後日。我々は、「ウルトラC」技を繰り出して、この危機を脱することになる。

 さて、この日。もうひとつの事件が起きた。

 大泉さんのカブのカギが、走行中に抜けて、無くなったと言うのである。

 「走行中にカギが無くなる」

 普通、こんなことあり得るだろうか?

 「カギが抜けたらエンジンが、止まるんじゃないの?」

 いや。「エンジンが掛かったままの状態」で「抜け落ちた」から、そのまま走り続けたのだ。

 あの時、大泉さんは、

 「あぁ、終わった・・・」と思ったらしい。

 そりゃそうだ。カギがなけりゃ、ガソリンタンクを開けることもできないし、なにより、もうエンジンを掛けられない。

 「なんてことだ・・・」そんな脱力感と、「自分の不注意でこんなことに・・・」そんな罪悪感で、大泉さんは、呆然と立ち尽くしていた。

 そこに、ベトナム人マジシャンが現れた。

 「大丈夫デスヨ。ミスターのカギを使えば、大丈夫レスヨ」

 最初、なにを言ってるのか分からなかった。

 しかし、実際、そのマジシャンは、我々の目の前で、ミスターのバイクからカギを抜き取り、大泉さんのエンジンを掛けて見せた。

 「カギは、どちらも、使えますヨ。」

 んなバカな。

 にわかには、信じられない事態だった。いくら同じ車種とは言え、カギまで同じじゃ、その主目的である「防犯目的」が、何ら果たせないじゃないか。

 困惑する我々の前に、今度は、ベトナム政府公安官のタイン氏が現れて、こう言った。

 「イージー、イージー!オンリー5ミニッツ」

 「5・・・ミニッツ?」

 「イエース」

 カギなんか無くしたって、どうってことない。んなもの5分で作れる。

 彼は、そう言ったのだ。

 ベトナムを走るカブは、かなり年季の入ったものが多い。従って、カギ穴も「摩擦」でゆるくなってしまうらしい。だから、たいがいどんなカギも、入ってしまうし、走行中落ちることもままあるという。

 そのため町のあちこちに、カブのカギを作ってくれる店があると。

 従って「防犯」のためには、バイクには、自転車のような「車輪ロック」がついている。確かに、二人のカブにも、頑丈なロックがついていた。

 「ベトナムじゃ、カギを無くしたって、走れるんだね。」

 「すごいな。ベトナムは。」

 私は、妙に感心してしまった。

 この国は、やはり「カブ天国」。バックアップ態勢が、万全なのだ。

 翌朝、タインさんがニコニコしながら、カギを持ってきた。

 「5ミニッツ?」

 「イエス!5ミニッツ!」

 彼は、朝早く、近くのバイク屋へ行って、実際5分で、大泉さんのカギを作ってきたのだった。

 2日目は結局、ミスターの目標設定をも楽々クリアする午後5時40分。フエに到着した。

 「ベトナムは、カブに関して言えば、日本より、よっぽど走りやすい」

 390キロをいとも簡単に走り抜けた我々は、そう確信した。

 「こうなれば、1日400キロ以上の走行も不可能ではない。なんなら1日早くホーチミンに着けるかも」

 そんなことも思った。

 しかしこれは、ベトナムさんが巧妙に仕組んだ、心理的な「ワナ」であることを、我々はその時、全く気づかなかった。

 この「油断」が、後日「とんでもないしっぺ返し」となって、二人に襲い掛かることになる。

 さて、フエの宿は、「フォーンザン・ホテル」という、これまたフエ一番の老舗ホテルだった。

 「このホテルには、宮廷料理の体験ディナーがあるんですよね?」

 私は、ガイドブックに書かれていた記事を示して、ニャンさんに聞いた。

 「あぁ・・・ありますけど、高いデスネ」

 「ニャンさん、お金は、大丈夫ですよ。予約してくれますか?」

 「あぁ・・・でも、高いデスネ」

 「お金は、大丈夫なの!ニャンさん!」

 どうも、歯切れが悪い。そこで、

 「どうですか?フンさんも、タインさんも、ごいっしょに」

 矛先をベトナム政府に向けると、それまでニコニコしていたフンさんが、

 「いや!私たちはいいです!どうぞ!みなさんで」

 やけに慌てた様子で、キッパリ断ってきた。

 「そうですか。じゃ、ニャンさん、予約お願いしますね」

 「でも・・・高い・・・デスヨ」

 「いいって!」

 私に言われたニャンは、フンさんを実に恨めしそうに見ていた。当のフンさんは、顔をそむけて、ケラケラ笑っていた。

 (なんで、そんなに嫌がるんだ?)

 その理由は、後でようやくわかった。

 「宮廷料理」。一度は体験してみるべきである。しかし、二度と体験しないであろう食事である。

 ひとり40ドル(約5千円)。フエの「フォーンザン・ホテル」でいつでもやっている。

 ちなみに、王様が歌った「恋人よ」。

 その後、王様は、ベトナム人奏者達を特訓し、最後には「演奏付き」で、ちゃんと(?)歌い切った。

 放送ではカットしたが、何年後かのDVD発売の折りには、日の目を見ることになろう。

 さぁ、「ベトナム縦断」は、いよいよ「3日目」に突入。

 フエから、150キロ先のホイアンを目指します。距離は短いが、山あり、大都市ありの起伏にとんだコース。

 そしていよいよ、カブにつきものの「積み荷」が、満を持しての登場となります。

 「第4夜」。私は好きです。お見逃し無く!