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水曜天幕團「蟹頭十郎太」DVDの全容

藤村 | 2003/12/05(Fri) 19:38:35

 おぉぅ!書いてるぞぉ!書きまくってるぞぉ!蟹頭DVDの中身を公開だ!

 読めこのやろう!長いぞこのやろう!

 まずはDVDの中身のお話をする前に、「水曜天幕團とはなんぞや?」「かにあたまとはなんぞや?」その基本的なトコを説明しておこう。

 2002年10月。「水曜どうでしょう」は6年に及んだ放送に一旦ピリオドを打った。
 それは、これまでの放送を改めてマスターテープから編集し直し、未公開部分を多く盛り込んだ「どうでしょう完全版」を作り上げ、DVD化することが大きな目的のひとつであった。

 と同時に、「どうでしょう」という番組以外にも「なんか作ってみたい」そんな欲求が抑えきれなくなっていた時期でもあった。時間が欲しい。1年単位でなにかを作り出す時間が欲しい。そして、こういう欲求を抑えず発散していくことこそ「一生どうでしょうをしていく」その原動力となる得る。そう考えた。

 そこで我々が手を出したのが「お芝居」だ。

 折りしも我がHTB35チャンネルは、今年開局35周年。「お祭りだから」という社の浮かれた雰囲気に乗じて、放送するわけでもないのに「チームナックスと芝居やりたいんですけど」と言ったら「よし。やれ」ということになった。それも全社上げての記念行事となった。

 実におめでたい会社である。

 「というわけでナックスさんとお芝居をやることになりました。よろしいですか?」

 事務所の社長である鈴井貴之氏に言ったところ、彼はこんなことを言った。

 「なら、テント芝居とかいいんじゃないですかね・・・」

 さすがである。目の付け所がいい。どうでしょうの企画もそうだが、あの人の発想は我々を乗り気にさせる。一般の劇場ではなく、テントでやる。いいじゃないか、いいじゃないか。

 だが、どうでしょうもそうだが、我々が乗り気になればなるほど、それはミスターの考えていたものの本質を踏み外し、度を越したものへと変貌していく。

 ミスターが「テント芝居」と口走った後、やがてHTB正面玄関前の駐車場が、全面使用禁止となった。

 そこに重機が乗り込んで来て、巨大なテントを建て始めた。

 “テント芝居”という言葉の響きからくる「アングラな」「アウトローな」雰囲気は微塵もなく、「テント」というより「国際見本市」のような実にあっけらかんとしたテントである。

 いや、これはもはや「テント」ではなく、駐車場のアスファルトをブチ抜いて基礎を打ち込み、札幌市に建築申請を提出した立派な「建築物」であった。

 「いや、スゴイな・・・」

 この時点で明らかに「度を越した」と自覚した。

 「テント芝居」の域をハミ出し、それは立派な「劇場」だった。

 客席は、一番後方の人もフラストレーションなく観られるようにひな壇のような傾斜配置がされている。照明機材も一般の劇場並みか、それ以上。おかげで天井の鉄筋が重さでひん曲がりそうになったほどだ。それもこれもすべてこの公演の、それぞれのシーンのためだけに吊るされた照明。音響にしても、ある1シーンのためだけに、客席の下にわざわざ重低音を響かせるスピーカーが仕込まれている。

 実に贅沢な芝居小屋だ。

 ただあくまでも「テント」。周囲を覆うものは、テント生地一枚。この事実は変わらない。

 だから寒い。猛烈に寒い。

 「うーむ・・・これは思いのほか冷えますなぁ」
 「そうですねぇ」

 そして外を走る車の音がばんばん聞こえる。

 「案外うるさいんですね」
 「そうですねぇ・・・」
 「救急車とか通ったらもう、アウトでしょうね」
 「キツイでしょうね」

 「・・・なんとかなりませんかねぇ」
 
 「だったら劇場でやれ」というハナシである。

 結局この小屋は「テント芝居の欠点を惜し気もなく取り入れた立派な劇場」といった不思議なポテンシャルを持った空間となった。

 この空間で「水曜どうでしょう」のD陣と、今や札幌では他の追随を許さない人気劇団に成長した「チーム・ナックス」が組んで芝居公演を打つ。

 普段のナックスさんは、リーダー森崎君が作・演出を手がけている。それを我々D陣がやる。従って「チーム・ナックス」の公演とはかなり毛色の違うものになるだろう。それで新たな劇団名を考えた。それが「水曜天幕團」。

 水曜どうでしょう・テント軍団・・・まぁ、そういう意味だ。

 出し物は時代劇。

 嬉野先生の原作である。「鷲頭(わしず)十郎太」というお侍が、呪われた姫様を助けるお話だ。
 タイトルは姫様の名を取って「神州桜姫」。

 ここに多少アレンジを加えた。

 主人公の名は「鷲頭」(わしず)じゃなくて「蟹頭」(かにあたま)にしよう。それこそカニみてぇなすんごい頭をした侍の話だ。タラバガニみてぇなヅラを被せてさぁ。笑っちゃうなぁ。タイトルもこいつの名前を取って「蟹頭十郎太」にしよう。

 それで決まった。

 嬉野先生が書いた感動的なお話は、主人公に巨大なヅラをのっけたおかげで、実に摩訶不思議なお芝居へと変貌していった。

 しかし、見てもらえればわかるが、この奇妙なヅラ姿が初めて登場するシーンでは思わず爆笑するが、いつの間にかそんなに気にならなくなり、そのうちヘンテコなヅラを被っていることを忘れ、その後あろうことか巨大ヅラをのっけた男の姿に号泣し、そして最後には、カニ頭ヅラを「カッコイイ!」と思ってしまうのだ。

 ストーリーは「水曜天幕團」のページを見ていただくことにして、では本題のDVDの中身についてお話していこう。

 行きますよ。

 DVDをプレイヤーに入れると、まず「オープニング・ムービー」が流れます。

 今回のお芝居はまず、「どうでしょう」という「テレビ番組」が、テレビを離れ「芝居を打つ」ということに「最大の意味」がある。

 芝居を観る諸君は、いつもテレビを見ている部屋を出て、ある者は飛行機に乗り、ある者は列車に乗り、そして夕闇せまる札幌・南平岸駅に降り立つ。
 駅を出ると躍るような足取りで坂をえっちらおっちらと登り、HTBに建てられた芝居小屋を目指す。そこには、同じ思いでやって来た者たちが何百人と集まっている。
 そして、それを迎える大泉洋、チームナックスの面々、他の出演陣、多くのスタッフ、そして我々D陣が緊張の面持ちで本番の時を待っている。

 この行為自体が、こたえられない「大イベント」なのだ。

 オープニング・ムービーはここに重点を置き、実際に会場に足を運べなかった皆さんにも、芝居が始まる前の、この「幸せな興奮」を味わってもらえるよう心掛けてVTRを作った。

 HTBに向かって歩く者たちの後姿。天幕小屋の前で行列する幸せな顔。本番前、緊張を隠せない大泉洋の素顔。それらを次々と映し出し、やがてカメラはゆっくりと天幕小屋の中へと入って行く。

 いいねぇ。いいですよ、このオープニングは。

 そしてオープニング・ムービーが終ると、満員の観客席が映し出される。芝居が始まる前の、どこかソワソワした会場内の映像。

 この映像がそのまま「メインメニュー画面」となっている。

 DVDを観てるみなさんも、まずはこの会場全体を見渡し、あの時、あそこにいた500人の人達といっしょに観客席に座って、芝居が始まる前の幸せな時間を共有していただこうという趣向である。

 いいねぇ。いいですよ!メニュー画面もまた。

 さぁ、心の準備が出来たら、いよいよ「本編を見る」のボタンを押して下さい。

 客席が静まり、カンカンカンカン・・・拍子木が鳴って、いよいよ「水曜天幕團・蟹頭十郎太」の幕開けです!

 いやぁ!見たい!見たいですねぇ!

 見れるんですよぉ。それが来週見れるんですよぉ!

 この幕開けのシーンから、大泉洋が登場するまでのシーンを中心に来週からホームページ上で「ダイジェスト版」として動画配信いたします。

 オープニングの緊張感と、大泉洋が登場した時の割れんばかりの拍手、これはDVDを買わない皆さんにも是非、味わってほしかった。芝居の中身は見てもらえずとも、この「雰囲気」だけは分かち合っておきたい。これだけでも見てもらえれば、この半年間の苦労もお互いに報われる。これはね、偽らざる正直な気持ちでございます。だからわざわざ映像配信までするんです。決して「買えこのやろう」という宣伝行為じゃないんですよ。

 ただ、DVDをすでに予約した方は、これ見るの我慢した方がいいかもな。

 慌てて見なくても、DVDのオープニングはダイジェスト版よりもっと!たっくさん!会場内の映像が入ってて、もっと!シビレますから。

 さて本編。実際の公演は夜7時に開演し、途中15分間の休憩を挟んで「第1幕」「第2幕」の2部構成になっておりました。終了は9時50分ごろ。およそ3時間の公演でしたが、DVDではもちろん休憩はありませんので、本編自体は約2時間半。

 このDVDの編集には、結局丸1ヶ月かかりました。6台のカメラで撮影した映像を、それぞれどこでどう使うのが効果的か、かなり試行錯誤した結果です。

 やはり「芝居を生で観る」のと「映像で見る」のとでは、雲泥の差があります。

 「役者が歩く」という行為ひとつとっても、舞台では「間」がもちますが、映像では時にまどろっこしく感じられる。「いやぁここは3歩ぐらいでサっと移動してほしい」映像を見ながらそんな思いに駆られることが多々ありました。「セリフの間」にしてもそう。舞台と映像では、受け手の視聴態勢が全く違うんです。

 この違いをなんとかしたい。

 だから、DVD版ではすべてのシーンを「映像感覚」で編集し直してます。つまり「舞台感覚の間」をカットしてる。「5歩で歩いてるところを3歩にしたい」そう思ったら、「2歩分の動きをカット」しちゃってるわけです。「んなことできるんか?」と思われるかもしれませんが、簡単に出来ます。ただそれは、よっぽど注意しないと気付きません。そういう編集をあちこちに施しております。でもDVD見る時はそんなこと気にせずに見て下さいよ。

 でもやっぱりね、こういう動きひとつとってもね、「芝居」と「映像」の世界は、思った以上に違うんです。

 そういえば「エンディング」に関する考え方なんてのも「芝居公演」と「テレビ」じゃ違いましたね。

 ぼくはね、今回の公演のためにエンディングVTRを作ってたんです。映画みたいな感覚でね、芝居が終ったら舞台上にスクリーンを登場させ、エンディング・ロールを流す。カッコいいやつ作ったんですよ。スクリーンだって一工夫凝らしましてね、それまで舞台に上がる「花道」だった板が、ぐぅーっと立ち上がって紙芝居みたいにパタパタと開き、それが白いスクリーンになる。そんな仕掛けもわざわざ作ってもらったんです。

 でもね、舞台監督をしてくれた山野さんが言ったんですよ。「観客は、役者が去った後の舞台に向かって拍手をして、余韻を楽しみたい。そこにVTRを流すのはちょっと違うかもしれない」とね。テレビ屋のぼくにしたら、そんなこと想像できなかったわけですよ。「真っ暗」になった舞台に向かって拍手をし、「その余韻を楽しむ」という感覚がね。

 でもね、あくまでも舞台は、生身の人間が演じ、生身の人間がそれを目の前で見る。役者が去って真っ暗になった舞台であっても、ついさっきまでその場に役者が立っていた。そこに向かって、客が拍手を送る。それが真っ暗なカラの舞台であっても、いや、だからこそ客はそこに向かって拍手を送る。

 「なるほどそうか」と。それであっさりVTRはお蔵入り。そして苦労して作ってもらったスクリーンの仕掛けもまた、お蔵入り。これは本当に悪いことをしました。

 しかし、そのエンディングVTRも「DVD版」となれば話は別。バシっと入れた方がキマルんですね。でも、あの時会場にいたみなさんの「拍手」ってのがまた素晴らしくてね。真っ暗になった舞台に鳴り響く拍手。やがて舞台が再び明るくなり、割れんばかりの拍手の中、役者陣がズラッと並ぶカーテンコール。これもまたいいものでね。だからこれら会場の様子も盛り込んだエンディングVTRを、DVD版のために再度作り直しました。それもかなり長いものを。

 このエンディングVTRがまたねぇ、いいんですよぉ。

 ねぇ。だんだん見たくなってきたでしょう。でもねぇ、無理して買わなくていいんですよ。

 動画配信のダイジェスト版でエンディング映像も一部、流しますからねー。

 ただあくまでも「一部」。DVD版はもっと長いですよぉー。一応、言っときますけど。

 まぁこのようにね、とにかく「芝居」と「映像」は異質なものなのです。

 この「違い」は、当初ノーテンキに「芝居をやりたい。やらせろ」と言った我々D陣を、そりゃぁもう苦しめました。デブが8キロ痩せるほどに悩みました。この悩みは、本番直前にピークを迎えましたね。
 それまで1ヶ月をかけて稽古してきたこの芝居を、本番の2日前になって「ラスト部分を大幅に変える大手術」をしてしまったんです。2日前ですよ。いや正確に言えば本番前日になってました。午前2時ごろです。10月9日金曜日の午前2時。10日が初日ですから、その前日。その未明に我々は台本の大幅変更を決定したんです。

 この日は、関係者を招いての公開リハーサル(ゲネプロ)が午前11時から予定されておりましてね。それなのに深夜から朝にかけて徹夜で台本を書き直し、それを役者に伝えたのが午前8時ごろ。そこから変更部分の稽古を始めたんです。11時からゲネプロをやるというのに、だ。

 この緊急事態。役者達の反応はどうであったか。大泉洋はその時、我々に対しなにを思ったのか。

 ここらへんの息詰まるような舞台裏の葛藤はですね、ここには書きませんよ。

 それはねぇ、蟹頭DVDの「特典映像」に赤裸々に記録されておるわけでございますねぇ。

 「メイキングVTR」ですよ。

 なんでしょうかねぇ、大泉洋の真剣な表情というのは、なかなか映像で公開されるようなもんじゃないですよ。私と大泉洋の笑いのない真剣な会話というのは、最初で最後でしょうねぇ。

 今回のメイキングは、嬉野先生が全て編集しましてね。だからかなりドキュメントタッチなんですねぇ。笑いよりも緊迫感みたいなね。舞台裏での「衣装の早替え」の様子なんてのも、緊迫感がありましたねぇ。

 でもまぁ、コレなんていうのは30分ほどのVTRで、そんなにバカみたいに笑えるもんじゃないし、ただもう興味深いという意味のおもしろさがじわっとにじみ出て、そして最後に出演者たちの飾らない言葉でホッとするみたいなね、そんなたわいのないVTRですよ。だからね、「ダイジェスト版」なんかじゃ、一切見せませんよ。

 見られるのは「蟹頭DVD」だけ。

 今ならまだ全国のローソンにて予約受付中!と。こう言っておきましょうか。

 さ、「特典映像」にはね、他にも道内で放送された「蟹頭十郎太チケット発売告知」のCMなんてのも収録されております。本州勢は見たことないですよね。道内の諸君、カッコいいですよね、アレ。でも道内の諸君も、もう見れないよね。見れるのは「蟹頭DVD」だけ。そう言っておきましょうか。

 さらにね、「稽古風景」などの記録写真が「70枚も!」収蔵されております。「蟹頭DVD」にはね、収蔵されております。もうぶさいくなナックスたちの写真が満載!ファンにはたまんないんじゃないかな。

 そしてもちろん!「副音声解説」も付いておりますよ。

 今回は、脚本家の嬉野雅道先生、演出家の藤村大先生、そして主演のよういずみおうさんをお招きいたしましてね、興味深い制作ウラ話や役者の悪口、罵詈雑言、そして今回は役者よういずみの「芝居論」なんかが熱く展開されております。それがたっぷり2時間半。

 それが聞けるのは「蟹頭DVD」だけ。

 ローソンでの予約受付は、来年1月14日まで承っておりますよ。念のため。

 そして万が一予約をされた方にはですねぇ、「予約特典」として「大入り袋」ならぬ「大泉袋」がもれなく付いてまいります。まぁたいしたものじゃございませんよ。
 「大入り袋」って言ったら普通は100円玉かなんかコロっと入ってるだけの単なる縁起物ですよ。あれとおんなじ。でもウチは実際にお金を入れるわけにもいかないんで、グッズ担当のヒゲ男がヘンテコな物を作ってきましたよ。神州の国にちなんで「神州通宝」なんていう金ピカのお金をね、作ってきました。パッと見、金色の紙に包まれたチョコレートみたいです。「これ食えるのか?」と思って金紙をペリペリ剥がすと(剥がれるんですね、このお金は)、中には真っ白な物体。実はこれ「圧縮タオル」なんですね。この「神州通宝」は、水に入れるとハンドタオルになるんです。で、「なにが大泉袋か?」っていうと、まぁ主に「大入り袋」との引っ掛けですね。そして、このタオルになんか秘密があるんですね。たいしたことじゃないですよ。開けたらわかりますけどね。

 というわけでございまして、長々と書いてきましたが、あくまでも「買え!」とは言っておりません。

 ただ!

 サラリーマン諸氏におかれましては、ボーナス支給日も近付き、日頃重税に悩むどうでしょう一家にも、束の間の金銭的余裕も生まれる時期でございましょう。
 また健全なる青少年諸君におかれましては、サンタさんよりクリスマスプレゼント、ご両親、祖父母様よりお年玉等、臨時収入を得るハッピーな時期が目前に迫ってまいりました。

 「それをこっちに寄越せ」とは申しません。

 ただ!「親戚のガキにお年玉くれてやるぐらいなら蟹頭買え!」そう申し上げる次第でございます。


 では、蟹頭DVD「ダイジェスト版」をお楽しみに!