2007年、年明け1月17日から9週にわたって放送した2006年新作は、「ヨーロッパ20カ国完全制覇・完結編」ということになりました。
97年「ヨーロッパ21カ国完全制覇」、99年「ヨーロッパ・リベンジ」に続く第3弾で、シリーズの完結編ということであります。
なぜ、この企画にしたか?
さらに、あっさり「21」を「20」に減らしちゃってますけど、それでも「完結編」とは如何なものか?
まず、このあたりからお話を始めましょう。
第一には、
「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」
「そうですねぇ」
「でも、キツそうだなぁ」
「でも、まぁ・・・いいじゃないの」
ということであります。
4人だけで長期間、海外を旅する。
これは、キツいことなのです。
体力の問題ではありません。4人だけの逃げ場のない空間。閉塞感。そしてなにより、海外という不安。
旅を始めた当初は、これらの不安よりも、期待感が上回っておりました。「海外だよ!」という単純な高揚感。
97年の「ヨーロッパ21カ国」は、まさにこの高揚感が旅全体を包んでいました。
しかし時を経て、そんな期待よりも、不安と閉塞感が強くなってしまうこともある。
それが、99年の「ヨーロッパ・リベンジ」です。
海外の経験値をあげた中で、北欧という刺激の少ない土地をただひたすらに走り続ける。初日に「ドイツで野宿」というアクシデントがあったものの、その後は特段なにも起こらず、淡々と車の中で過ごす毎日に、我々は耐え難い閉塞感に襲われました。
「早く帰りたい」。旅を終えたとき、「もう二度と海外企画はやらない」、全員が強くそう思いました。
その後も、ユーコンやベトナムなどには行きましたが、しかし、この「ヨーロッパ・リベンジ」を境に、「海外企画に大きな違いが生じた」ことを、皆さんはお気づきでしょうか。
「ヨーロッパ・リベンジ」以前の旅。
97年「オーストラリア縦断」「韓国」「ヨーロッパ21カ国」
98年「マレーシアジャングル」「アラスカ」
99年「アメリカ横断」
「ヨーロッパ・リベンジ」以降の旅。
01年「コスタリカ」「カナダ・ユーコン」
02年「ベトナム」
04年「ジャングル・リベンジ」
わかりますか?
前半は、アラスカのジムとナップさんを除き、基本的に4人だけで旅をしています。 後半は、すべて現地のガイドさんなり4人以外の誰かしらと旅をしています。
「ヨーロッパ・リベンジ」で感じた「4人だけの旅の不安と閉塞感」。それが、その後の海外企画に大きな影響を与えているのです。
「おもしろさ」という点では、それぞれに良いところがあって、番組的には別に変わってはいないのですが、皆さんの知らないところで、我々には「ヨーロッパ・リベンジ」の影響が、その後も厳然とあったのです。
「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」
「でも、キツそうだなぁ」
「でも、まぁ・・・いいじゃないの」
06年「ヨーロッパ20カ国完全制覇・完結編」。
4人で再び1台のレンタカーに乗り込み、ヨーロッパをただひたすらに走る。
これは、7年という歳月を経て、ようやく「ヨーロッパ・リベンジの呪縛」から開放される、そういう意味を持った企画なのです。
ですから、まぁ、車では行けない、位置的にもしんどい「アイルランド」は未達ではありますが、でも我々にとっては、やはり、ヨーロッパの旅の「完結編」なのであります。
「企画発表があっさりだ」「まだ、なにかあるのではないか?」
そう思われた方が多かったようであります。
わかります。
でも、新鮮味であるとか、驚きであるとか、常に追い求めるのは無理がある。無理をすれば、あちこちにほころびが出てくる。それよりもこれからまだまだ長い道のり。その10年目という節目に、「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」「また、いやになって帰ってくるかもしんないけど」、そんな、ゆっくりとした前進、それも「まぁ・・・いいじゃないの」と思ったのであります。
ただ、そんな意味ばかりじゃ、旅への衝動は生まれてこない。
実は、「イタリーに行ってみたくなった」というのが、正直一番大きい。ある人から、「イタリアはいい」「フィレンツェはいい」「どこで食ってもメシが美味い」と聞いたからであります。さらに一昨年、嬉野先生と行った九州の旅で、ある旅館のご主人にワインをご馳走になった。そのワインが実に美味く、基本的に酒が飲めない我々がワインの美味さに目覚め、痛飲してしまった。
「先生、こりゃぁ本場のワインを飲んでみたいですな」
「しっかりしたやつ、飲んでみたいですな」
う先生は、とにかく「しっかりしたやつ」がお好みで、それしか言わない。というか、それしか表現方法を知らない。
そんなわけで、イタリア行きには何の文句もなく、我々の「ヨーロッパの呪縛」は、あっさり解けてしまったのであります。
06年夏「ヨーロッパ20カ国完全制覇」。
では次回から、そのウラ話を少しづつ執筆してまいりましょう。