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2006年「新作」解説

藤村 | 2007/03/12(Mon) 18:25:28



 2007年、年明け1月17日から9週にわたって放送した2006年新作は、「ヨーロッパ20カ国完全制覇・完結編」ということになりました。

 97年「ヨーロッパ21カ国完全制覇」、99年「ヨーロッパ・リベンジ」に続く第3弾で、シリーズの完結編ということであります。

 なぜ、この企画にしたか?

 さらに、あっさり「21」を「20」に減らしちゃってますけど、それでも「完結編」とは如何なものか?

 まず、このあたりからお話を始めましょう。

 第一には、

 「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」
 「そうですねぇ」
 「でも、キツそうだなぁ」
 「でも、まぁ・・・いいじゃないの」

 ということであります。

 4人だけで長期間、海外を旅する。

 これは、キツいことなのです。

 体力の問題ではありません。4人だけの逃げ場のない空間。閉塞感。そしてなにより、海外という不安。

 旅を始めた当初は、これらの不安よりも、期待感が上回っておりました。「海外だよ!」という単純な高揚感。

 97年の「ヨーロッパ21カ国」は、まさにこの高揚感が旅全体を包んでいました。

 しかし時を経て、そんな期待よりも、不安と閉塞感が強くなってしまうこともある。

 それが、99年の「ヨーロッパ・リベンジ」です。

 海外の経験値をあげた中で、北欧という刺激の少ない土地をただひたすらに走り続ける。初日に「ドイツで野宿」というアクシデントがあったものの、その後は特段なにも起こらず、淡々と車の中で過ごす毎日に、我々は耐え難い閉塞感に襲われました。

 「早く帰りたい」。旅を終えたとき、「もう二度と海外企画はやらない」、全員が強くそう思いました。

 その後も、ユーコンやベトナムなどには行きましたが、しかし、この「ヨーロッパ・リベンジ」を境に、「海外企画に大きな違いが生じた」ことを、皆さんはお気づきでしょうか。

 「ヨーロッパ・リベンジ」以前の旅。

 97年「オーストラリア縦断」「韓国」「ヨーロッパ21カ国」
 98年「マレーシアジャングル」「アラスカ」
 99年「アメリカ横断」

 「ヨーロッパ・リベンジ」以降の旅。

 01年「コスタリカ」「カナダ・ユーコン」
 02年「ベトナム」
 04年「ジャングル・リベンジ」

 わかりますか?

 前半は、アラスカのジムとナップさんを除き、基本的に4人だけで旅をしています。 後半は、すべて現地のガイドさんなり4人以外の誰かしらと旅をしています。

 「ヨーロッパ・リベンジ」で感じた「4人だけの旅の不安と閉塞感」。それが、その後の海外企画に大きな影響を与えているのです。

 「おもしろさ」という点では、それぞれに良いところがあって、番組的には別に変わってはいないのですが、皆さんの知らないところで、我々には「ヨーロッパ・リベンジ」の影響が、その後も厳然とあったのです。

 「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」
 「でも、キツそうだなぁ」
 「でも、まぁ・・・いいじゃないの」

 06年「ヨーロッパ20カ国完全制覇・完結編」。

 4人で再び1台のレンタカーに乗り込み、ヨーロッパをただひたすらに走る。

 これは、7年という歳月を経て、ようやく「ヨーロッパ・リベンジの呪縛」から開放される、そういう意味を持った企画なのです。

 ですから、まぁ、車では行けない、位置的にもしんどい「アイルランド」は未達ではありますが、でも我々にとっては、やはり、ヨーロッパの旅の「完結編」なのであります。

 「企画発表があっさりだ」「まだ、なにかあるのではないか?」

 そう思われた方が多かったようであります。

 わかります。

 でも、新鮮味であるとか、驚きであるとか、常に追い求めるのは無理がある。無理をすれば、あちこちにほころびが出てくる。それよりもこれからまだまだ長い道のり。その10年目という節目に、「久しぶりに4人だけで海外をみっちり旅してみようじゃないの」「また、いやになって帰ってくるかもしんないけど」、そんな、ゆっくりとした前進、それも「まぁ・・・いいじゃないの」と思ったのであります。

 ただ、そんな意味ばかりじゃ、旅への衝動は生まれてこない。

 実は、「イタリーに行ってみたくなった」というのが、正直一番大きい。ある人から、「イタリアはいい」「フィレンツェはいい」「どこで食ってもメシが美味い」と聞いたからであります。さらに一昨年、嬉野先生と行った九州の旅で、ある旅館のご主人にワインをご馳走になった。そのワインが実に美味く、基本的に酒が飲めない我々がワインの美味さに目覚め、痛飲してしまった。

 「先生、こりゃぁ本場のワインを飲んでみたいですな」
 「しっかりしたやつ、飲んでみたいですな」

 う先生は、とにかく「しっかりしたやつ」がお好みで、それしか言わない。というか、それしか表現方法を知らない。

 そんなわけで、イタリア行きには何の文句もなく、我々の「ヨーロッパの呪縛」は、あっさり解けてしまったのであります。

 06年夏「ヨーロッパ20カ国完全制覇」。

 では次回から、そのウラ話を少しづつ執筆してまいりましょう。