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2月7日放送 「リヤカーで喜界島一周」その1

藤村  | 2001. 2/ 8(THU) 22:57

 昨夜をもちまして、「どうでしょう完全復活」いたしました。

「一致団結!リヤカーで喜界島を一周し、文字通り輪を作ろう!」という企画。

 長ったらしいタイトルですが、我々の企画意図は、そういうことなんです。

 久しぶりのミスターとの企画会議。

 実は、復帰第1作の候補は「絵はがきの旅」でした。

「あれ、結構おもしろいですよねぇ」ミスターもそんなこと言ってました。

 でも、私はふと思ったのです。

「9ヶ月ぶりの旅。視聴者のみなさまもお待ちかねでしょうが、その前に、我々にとって大事なことがあるんじゃないでしょうか?」

 そうです。あの「台本」は、そのまんま「企画会議」で話されたことなのです。

 今回の企画は、なぜ「歩く」ことにしたのか?なぜ「リヤカー」を引っ張るのか?そこんところの説明が、実は重要なんです。だって、単に「歩く」っつったらこれ以上地味な企画ないですもの。

 だから、「台本」にして、きっちり説明させていただきました。

そして、昨夜の放送。

 見ていて、大泉さんが、「だんだん緊迫してくる様子」がわかったと思います。
 
 だって、こっちのふたりが「台本どおり進行」して行くから、口出しできない。でも、その話の中身は、「他ならぬ自分の身にふりかかること」。なのに勝手に進むふたりの話を、黙って聞いているしかないという、あまりに不条理な世界。

 ひとしきり話を終えた男が、「さぁ・・・なにか質問があれば・・・」と言ったって

「・・・質問かい?うーんと・・・そうだね・・・」

「無ければ」

「いや!待ってくれ!待ってくれ!勝手に行かないでくれ!」

 そりゃ、そうなりますよ。

 しまいにゃ勝手に「大泉くんが一生懸命引っ張るリヤカーがある!」などと言い放つ始末。

「拉致」が「武力行使」による身柄の拘束とすれば、「台本による勝手な進行」は、言わば「経済封鎖的な包囲網」とでも言いましょうか。じりじりと追い込みをかけ、逃げ場を与えないで身柄を拘束する実に巧妙な戦略であると自負しているわけです。

 
 さて、昨日の放送で、自分が編集しながら笑ったのは、「大泉さんの顔」がくり抜かれた「企画発表第1部・終」というテロップ。

「うはははは!勝手に終っちゃったよ!うはははは!驚いてるよ!大泉さん!いやぁ素晴らしいお顔をなさるなぁ・・・」

 実はあれ、「スマスマ」のコント「マー坊」のエンドが、あんな感じに仲居くんの顔をくり抜いていたのを、編集してる時にふと思いついちゃったので、やってみたら実にいい位置に大泉さんの顔があってピッタリだったので・・・えー・・・パクりました。

 そして、本編に勝るとも劣らない「前枠・後枠」のミスターの健在ぶり。

 いくら大泉洋と言えど、あの人の「動き」には勝てません。

 あの見事な躊躇のない落ちっぷり。

 あのネタを書きながら、私の脳裏には、ミスターが遠くから大きく手を振り「ただいまぁー!」と言うやいなや、もんどりうって穴に落ちていく姿が、ハッキリと浮かんでいました。

 撮影当日。

 ミスターは、台本を一読すると、私に一言「わかりました。」とだけ言い、小松の用意したヅラを丁寧にかぶりました。

 そして本番。

 彼は、お土産物がどっさり入っているであろうと思われるふたつの紙袋を、必要以上に天空に放り投げ、開いた両手を高々と上げて私の視界から消えていきました。

 彼は、私の思い描いていた「落ちの王道」を見事に具現化してくれたのです。

 さらに後枠。

 私の注文は、駆け寄る妻に突き飛ばされて、同じく穴に落ちる夫。

「でも、ミスターあれだね、正面から突き飛ばされるとさぁ、そのまんま後ろ向きで落ちちゃうよねぇ・・・それは、ちょっと危ないかもしれないなぁ。」

「穴、深いんですか?」

「1.5mはあるかなぁ・・・。」

「そんなにあるんですか!」

「あるよ。張り切って掘ったもの。」

「そうですか・・・。でも、まぁ大丈夫ですよ。突き飛ばされた瞬間に、こう・・・ひねりを入れて1回転して正面から、穴に落ちますから」

「なるほど!体をひねって動きを派手にしつつ、体勢を整えて落ちると」

「そうです。」

「さすがだ!ミスター!」

 
 そして、本番。

 大泉さんのセリフ終わりでミスターが登場する。

「ただいまぁー!」

 言いながら、ミスターは、発砲スチロールでカモフラージュされた1.5mの穴の前にやってくる。

「イーヤー!」

 ムンクさんを思わせる奇声とともに大泉さんが駆け寄る。

 ミスターは、その姿を視界にしっかり捉えながらも、「こう・・・ひねりを入れて1回転」という例の作戦を実行するため、足場をかためようとした。

 しかし、まさにその瞬間!

 足元の雪が思いがけず崩れ落ち、彼の上体は意に反して、後方へと大きく反りかえった。

「あぁぁっ!」

 常に冷静な彼が、笑い声とも泣き声ともとれるような発声で、驚嘆をあらわした。

 それもそのはず、「台本通り」夫を突き飛ばそうと、眼前に大泉さんが迫っていた。

「こう・・・ひねりを入れて1回転」どころか、後方へ大きくバランスを崩していた彼の体は、大泉さんの体当たりで、さらにはずみをつけられて、無防備な体勢のまま勢いよく後方へふっとんだ。

 彼は、「落ちの王道」どころか「まんま1.5mの穴に落ちる男」となって、私の視界から消えた。

 ありがとう!ミスター!またいいものを見せていただきました。

 ぜひ、みなさんにも「珠玉の後枠」をスローで堪能してみることをお勧めします。

 さて、すっかり長くなりました。次週から、「リヤカーで喜界島一周」がスタートします。

 地味だと思うでしょ?

 ところが、この「リヤカー」なるもの、実は「ものすごく危険な暴れん坊」だったのです。

「なんでよ?荷物載せて、引くやつでしょ?なにが危険なのよ。」

「見ればわかる。」

「またか・・・。」