知床・観光船沈没事故から2年 全国に広がる波紋
小型船業者の「危機」 独自調査で明らかに
北海道・知床沖で乗客乗員26人を乗せた観光船が沈没した事故。20人が死亡、6人が行方不明のまま2年が経った。
十勝地方に住む男性は、今なお行方がわからない7歳の息子と、母親の帰りを待ち続けている。しかし、今年2月、苦渋の決断を下した。息子が法的に亡くなったものとする「認定死亡」の手続きをしたのだ。観光船を運航していた「知床遊覧船」と、桂田精一社長に損害賠償を求める集団提訴に加わるには、「遺族」になる必要がある。癒えることのない悲しみ。法廷の場で直接、桂田社長に言いたいことがある。
海上保安庁は桂田社長を業務上過失致死容疑で立件する方針で、捜査は終盤へ。HTBが入手した知床遊覧船の経営計画書には、「安全第一」の言葉が掲げられていた。そして、「社長が先頭に立って汗をかいて未来を創る」という桂田社長の直筆メッセージも添えられている。ただ、桂田社長は、事故直後の会見以降、公の場に姿を見せることもなく、事故について語ることはない。
-
十勝地方の男性 追悼式には参加しなかった
(今年4月斜里町ウトロ) -
経営計画書には首をかしげたくなる文言も
影響は、当事者以外にも広がっている。小型船舶の検査を行う国の代行機関「JCI(日本小型船舶検査機構)」は、事故の3日前の検査で、船の前方のハッチの不具合を見過ごした。ここから海水が船の中に入り込んだことが、事故の直接的な原因とされている。その後、小型船の安全と信頼を守るため、検査は厳格化された。しかし、番組が独自に実施した全国の事業者アンケートでは、検査への対応が重い負担としてのしかかり、運営が圧迫されている実態が明らかに。観光だけでなく、地元住民の命を守るための生活航路の存続までも危惧されている。
未曽有の事故から2年。今も、波紋は広がり続けている。
-
JCIの検査は事故を受け厳格化された
-
全国の旅客船事業者へのアンケート調査
-
事故の影は道外の生活航路にも...
スタッフ
- ナレーター
- 森さやか(HTBアナウンサー)
- ディレクター
- 須藤真之介
- チーフディレクター
- 山上暢
- プロデューサー
- 古川匡