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過去の放送

2008年6月21日放送

第60話「西別川清流物語3~明日の命を支える川」

釧路管内標茶町を流れる清流、西別川はアイヌ語で「豊漁の川」を意味するそうです。命の恵み豊かな清流にはその昔幻の魚と呼ばれるイトウの姿もたくさん見られたと言います。
道東に桜の便りが届くのは、5月も半ばを過ぎる頃。薄紅の空気が町に漂う季節になると、小さな命が旅立ちの時を迎えます。今年西別川に放流されたシロザケの稚魚は2500万匹。体長6センチほどの稚魚たちは川の豊かな恵みに支えられて大海原を目指します。
根室海峡に出るまでの旅はおよそ10日間。3年から5年後には徳川将軍に献上されたという立派な「西別鮭」となってふるさとの川に帰って来るのです。命育む清流、西別川。
牧草地の中を縫うように流れる清流。それは恵み豊かな命の川です。


2008年6月14日放送

第59話「西別川清流物語2~生命を育む豊かな森」

シマフクロウは、「コタン・コロ・カムイ」(村の守り神)と呼ばれ、世界最大級のフクロウで、羽を広げると180cmにもなります。最も絶滅が心配されている国の天然記念物で、西別川にも生息していましたが、流域の森林伐採などによる川の水量減少、汚染等のために生息地を失い、姿を消し始めていたのです。虹別コロカムイの会では、「誰もが食べるために頑張ってきた。そのために自然に迷惑をかけたが、こわしたものは、俺らの手で戻してやろう」と、農家も漁師もみんな一緒にステージに上がり、森が育つことを願って毎年苗木を植えています。自然界の一部である自分たちも、実は自然によって守られているのだと知った「虹別コロカムイの会」の皆さんは、次世代に引き継ぐ遺産づくりを毎年続けています。


2008年6月7日放送

第58話「西別川清流物語1~流域を育む「宝の水」」

摩周湖の伏流水を水源とする西別川は、虹別の湧水池から、毎分100トンもの湧水があふれる出ています。清流でしか育たないと言われるバイカモが小さな白い花をつけ、ゆっくりとその姿を流れにまかせています。徳川将軍への献上品として珍重された「西別鮭」の稚魚は、今も、源流部の虹別サケ・マスふ化場から放流され、地域の重要な産業のひとつとなっています。また、流域の森はシマフクロウの生息地ともなっており、西別川は日本に残された最後の清流とも言えるのです。


2008年5月31日放送

第57話「神々を語る人5/文化伝承への誇り」

白糠の浜辺に立つ私の耳に波の音に重なるようにして心地よいリズムが響いてきました。今によみがえるアイヌの叙事詩「サコロベ」です。
時を越えて受け継がれていく文化。文字を持たなかったアイヌ民族にとって、引き継ぐ者と引き継がれる者の間を繋ぐのは先人への感謝と民族の誇りなのです。
今ここに「サコロペ」という英雄叙事詩がよみがえるのは、それを記述した人がいたからでした。貫塩喜蔵氏はその文化伝承の功労者なのです。


2008年5月24日放送

第56話「神々を語る人(4)~自然が育んだ美しい文化」

大自然の象徴であるマリモを通してアイヌの人々が神々に祈りを捧げる「マリモ祭り」。 阿寒湖畔の町で私はその伝統の祭りに酔いしれています。 そこで出会ったフチに、昔から伝わる子守唄歌を歌ってくれました。 奪われた歴史の痛みが言葉と戦慄に乗って人々の胸を打ちます。 直に伝統を受け継いできた年長者が少なくなることはもう一度文化を奪われるようなものです。文化の継承は民族としてのアイデンティティーを遺していくこと。美しい自然が育んだ美しいアイヌ文化は北の大地の誇りなのです。


2008年5月17日放送

第55話「神々を語る人(3)~命を賛美するアイヌ文化」

雄阿寒岳に沈んでいく夕陽を見ながら大自然の営みを実感しています。“すべての命は神からの贈り物” アイヌの語り部の言葉です。 目に見えるすべてのものに、目には見えない心を感じ、神に感謝を捧げる人々。 彼らとの出会いが、忘れてはいけないたくさんのことを思い出させてくれました。 アイヌの心を誇りとして育ったというその人が、民族の文化を象徴する場所へと案内してくれました。その場所には、もう何世紀も前から続く儀式「イナウ」が今も息づいていました。「イナウ」は恵みをもたらす神への感謝のしるしです。 アイヌの文化には、今こそ必要なたくさんの宝物が詰まっていました。


2008年5月10日放送

第54話「神々を語る人(2)~逞しく美しいアイヌ文化」

阿寒に、大自然の神秘を神々の声として尊び、敬ってきた人々がいました。勇壮な姿でそびえる山、可憐な野花や朝露の一滴。大自然に生きるすべての命に神が宿るとその長老は言います。長老は、最初の人類が海から陸に上がる伝説を聞かせてくれました。そしてその様子を舞ってくれました。阿寒湖畔にあるアイヌの里でゆったりと流れていく時間を感じています。時代を超えて受け継がれていくアイヌの文化は熱い魂が支える逞しく美しい美の世界です。


2008年5月3日放送

第53話 「神々と語る人(1)~エカシと大地」

阿寒のエカシ(長老)、秋辺今吉さん(85)は、神々と人間の物語を静かに、そしてたくましく語ってくれます。カムイユカラの中には、地球と人類の誕生の物語があります。阿寒のユーカラ座は、この物語の劇を毎晩演じています。ユーカラ座は、フランスや台湾などでも公演し、昔から変わらないアイヌ民族の自然観を今に伝え、各国でアイヌ文化や精神性が高く評価されています。
秋辺エカシはこう語ります。「夜は星ばかり見ている。宇宙が大好きだ。宇宙と地球と人間のことを考えると、人間が地球を破壊しなければいいが、と思う。」環境問題が各国でさけばれる今、アイヌ民族の昔から変わらない「精神性」は今も豊かに息づいているのです。


2008年4月26日放送

第52話 「流氷原に輝く雄姿/砕氷型巡視船「そうや」」

船さえ凍る厳寒の海。流氷の中を進む「そうや」では、緊急時に備えて、船上の点検整備に余念がありません。緊張感を絶やすことなく続く厳しい訓練は予期せぬ事態への早急な対応を可能にするためです。
この夜、流氷が密接した海域に入った「そうや」は一晩中海の監視を続けます。そこに漁船から支援を求める一報が入りました。流氷域を抜けるまでの先導を請う無線に応えて巡視船「そうや」は、現場へと向かいます。厚い流氷に行く手を阻まれた漁船にとって砕氷船である「そうや」は北の海にとってなくてはならない存在なのです。その雄姿は純白の流氷原の中で神々しい輝きを放っています。


2008年4月19日放送

第51話 「消えゆく流氷/未来の海への警鐘」

厳しい冬の海に出て流氷観測を続ける巡視船「そうや」。この船で流氷観測を続ける研究者は豊饒の海に異変が起こっていると言います。その訳を聞きに北海道大学、低温科学研究所を訪ねました。50年の間に水温が0.8度も上昇しているという箇所が存在しました。
海水温の上昇は流氷の面積減少に直結しています。その事実は、未来の海への警鐘です。
北の海の豊かな恵みを支える流氷。オホーツクの海からその流氷が消える日が来ないよう
今、私たちにできることを考えなくてはいけません。