―2016年放送―
2016年11月01日
11月1日(火)放送「お誕生日会」(2015/06/01 (月)掲載)
長谷川真理(はせがわ・まり 63歳・会社員)=登別市
去年の誕生日のことだ。高校時代からの友人が地下鉄、JR、タクシーを乗り継ぎ、札幌からわが家を訪れてくれた。途中混んでいると大変だからと、生クリームたっぷりのデコレーションケーキではなく、丸くて平らな厚さ5センチほどのチーズケーキを持ってきてくれた。生クリームがちょっと苦手な私には何よりだった。
「カラフルでかわいいろうそくがなかったんで、うちの神棚から新しいのを持って来たから」と友人が言う。「それならうちの仏壇で使っているのと同じだから、持ってこなくてもよかったのに」と私が返す。
友人は白色のろうそく2本をぽんぽんとケーキに立て、慣れた手つきで火をともした。そして「還暦でひと回りだから、真理はめでたく2歳ということでろうそくは2本」と笑う。私も「そうだね。このケーキに62本ものろうそくじゃ、まるで火事だよね」と答えて笑った。
いよいよオバサンによる、オバサンのためのお誕生日会もクライマックスだ。友人が例の歌を歌い終わり、「さあ、真理。ろうそくの火を消して」と私を促した。
私は手をろうそくに近づけ、手のひらをひらひらさせて火を消した。それを見て友人が「えっ?」。気づいた私は「あっ!」。そして2人は顔を見合わせ、おなかがねじれるほど笑った。それにしても習慣って恐ろしい。