テントですな。最終夜はなんと言っても。
私のツボはいくつかありました。
「キミはあれじゃないか、山田君で寝ればいいじゃないか」
「山田君で寝りゃあいいじゃないかってどういうことだよ」
「山田君の上で寝ればいいじゃないか」
「ネコか!おれは」
大泉さんから予想もつかない言葉が出て、「なに言ってんだこいつ」と思っていると、「リヤカーの上で寝ろ」と言う。瞬間、農家の庭先に置いてあるリヤカーの上で気持ち良さそうに寝てるネコの姿と、山田君の上で、私が窮屈そうにまるまって「これもいいかも」なんて言いながら寝ようとしてる姿が浮かんだんですね。
そして、テントの中。
「まだまだ語り尽くせないことが、あるんじゃないかな」
「まだまだ藤村さんの、大学時代の恋の話を、聞かなきゃいけないかな」
キャンプといえば、「恋の話」。思えば、誰の身にも覚えがある「ほろにがい想い出」。しかし、こと「どうでしょう」さんに限って言えば「恋の話」なんて、思いもよらない話題。さらに「藤村さんの」となれば、想像もつかない異次元の話。その「藤村さん」が、焚き火の赤い炎に照らされて延々6時間「自分の恋について」熱弁をふるう姿と、「別に聞きたくねぇ」という3人の迷惑顔が浮かびますね。
誰しもが経験のある「キャンプの郷愁」と「いやでも、藤村Dの恋の話はどうだ・・・」という微妙なバランスが心地良いセリフですね。
「大学時代の」というあたりが、現実味を帯びていて、なおよろし。
「そうじゃないと、タレントのおふたり死んじゃうもの」
「もちろんだよ」
この間髪入れずに発せられた「もちろんだよ」の言いっぷりが、素晴らしい。
文字であらわすなら「も」の前に少しタメがある「んもちろんだよ」という表現になりましょうか。
「ん」の中には、それまで黙って私の話を聞いていた大泉さんの憤慨ぶりが込められています。
ちなみに、毛布も帯も、ちゃんと事情をお話ししてお返しいたしましたよ。喜界島の方は、対応も実におおらかです。
そして消灯。
ほんのりテントを照らすランタンの灯火。
そこに放たれた大泉さんの毒矢。
「オレの隣なんか、デブだぞ」
一刀両断ですね。このひとことで、デブは簡単に斬られます。
だからと言って、言い返すのもおとなげない。
「ん~ふふふ~ん」
私の押し殺した声に、沸点を押さえようとする自助努力がうかがわれますねぇ・・・。
デブと言われて・・・ねぇ、言い返すのもねぇ、あれですもんねぇ・・・。
って黙って聞いてると思うか!
デブのみなさーん!思いっきり殴りつけてやりましたよぉー!
いい音しましたねー!「生音」ですよぉー!聞こえましたかぁー!みなさんにあの音を、お届けしましたよぉー!
そして、
「輪を書く必要があんのかい?一緒に歩ければいいんでしょ?」
「それ、ミスターに言いなさいよ」
「・・・」
「死んでんじゃねぇか」
「うはははは!」
「ん?」
「起きてるかい?」
「死んでくれたら、死んでくれたほうがいいよ」
「なんてこと言うんだよ!」
「広くなるだろ」
すごい会話ですね。ここだけ聞いたら、「なんて教育上よろしくない番組だ!」ということになりますね。
でも、当然、冗談ですね。
・・・と、思うでしょ。
あの後、まだカメラは回ってて、そのうちミスターが本当に寝たんですね。その時、ぼくは大泉くんにこう言いましたねぇ。
「おい・・・外に出しちゃえよ・・・」
「なに言ってんだキミ!」
「出せよ」
「キミねぇ、こんな狭いテントの中でそんなことしたら、さすがに起きるぞ。」
あまりに狭くて、半分本気だったんですね。
一夜明けて。
「そしてもう・・・ギトギトじゃないかぁ、我々4人とも・・・」
「・・・嬉野くんが一番ギトギトしてないかぁ」
「嬉野くんなんかもうギトギトだよぉ」
「髪の毛なんか、てっかテカだぞぉ」
素晴らしいですねぇ。
嬉野くんの姿は決して見えないのですが、ギトギトのてっかテカでカメラを回しているお姿が、容易に想像できます。
「てっかテカ」。
ひらがなとカタカナが混在する書体が、いっそう彼の「黒びかり感」を際立たせています。
このあとの会話はカットされましたが、嬉野くんはこう言っていましたねぇ。
「なんだよぉ・・・おれだってがんばってさぁ・・・藤村くんが、暑苦しいって顔でおれのこと見てっからさぁ、必死にさぁ、場所あけてやってたんだぞぉ・・・そんなことも知らねぇでさぁ・・・寝れなかったんだぁおれだって・・・」
どうもすいませんでした。デブでヒゲのみなさーん!気をつけましょうねー!我々は普通の顔してても「暑苦しそう」に見えますよー!
そして、最終日。
あっという間にゴールに着いちゃいましたね。展開が早かったですねぇ。ちょっと物足りませんでしたね。
本当に、VTRあんまし回さなかったんですね。
「雨の中を歩く」というのは、楽しくないんです。全然。
だから、そんなところを延々お見せして、「うわぁ・・・たいへんそうだ・・・洋ちゃん、かわいそう・・・」などと言われてしまうのは、「どうでしょう」さんにとって本意ではないんですね。
ただ、もし2~3回、あの「せっかちな編集でゴールさせちゃった」シーンを見返す機会があれば、なんとなく「旅の終わりにふさわしい本当にいいセリフ」が、わかっていただけるかなぁとも思います。
私が好きなのは、
バス亭で雨宿りしながら、やっとメシを食ったふたりの
「ん~おいしい!」
「ほんとかよ!・・・でもね、おいしい。ほんとにおいしいよこれ・・・」
疲れ果てて、リヤカーに乗った大泉さんへの
「いい旅でしょ」
「いい旅だねぇ・・・」
このふたつですね。さらっと編集しましたけど。
あと、言っときますけど、
「ミスター、今、僕の目に涙が・・・」
あんなのウソですからね。だまされちゃいけませんよ。
しかし、「復帰第1作」としては、ふさわしく、心地良い4週だったのではないでしょうか。
では、またいつの日か、どこかの島で、山田君とお会いしましょう。