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番組審議会だより
北海道テレビ放送では、番組審議会委員10名の方による放送番組審議会を設け、毎月1回(8月と12月を除く)審議会を開催して、放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
番組審議会でのご意見は,2ヶ月に一度第4日曜午前5:05から放送の「あなたとHTB」でもご紹介していますのでどうぞご覧ください。
第492回北海道テレビ放送番組審議会概要
日時
2017年3月23日(木)
15:00~16:40
審議番組
「報道ステーション」3/9(木)放送分
出席委員
平本健太 | 委員長 |
作間豪昭 | 副委員長 |
古郡宏章 | 委員 |
遠藤香織 | 委員 |
喜多洋子 | 委員 |
鳥居マグロンヌ | 委員 |
深江園子 | 委員 |
斎藤 歩 | 委員 |
稲井良介 | 委員 |
会社側出席者
代表取締役社長 | 樋泉 実 |
常務取締役 | 國本昌秀 |
取締役 | 森山二朗 |
報道情報局長 | 東 直樹 |
編成局長 | 福屋 渉 |
番組担当チーフプロデューサー | 秦 聖浩(テレビ朝日報道局ニュースセンター) |
番組審議会事務局長 | 斎藤 龍 |
【会社報告】
- 3月11日、「今、私たちにできること~3.11とともに歩む」開催
- テレメンタリー「野生のいのち 死の連鎖」が、第58回科学技術映像祭自然・くらし部門文部科学大臣賞受賞
- onちゃん、北海道大学に特別学生として入学決定
- HTBの海外発信が今年で20周年
【審議番組についての委員意見要旨】
<評価点>
●東日本大震災からほぼ6年が経過するタイミング、震災その後、とりわけ放射能で汚染された飯舘村に焦点を当てた良質なドキュメンタリーのようだった。
●特集だけではなく、番組の最初と最後に中継したことで、この日の強い印象が残り、このテーマへの重視の度合いが伝わった。
●暗闇に浮かぶ真っ黒な袋に包まれた除染廃棄物の山の映像から始まったニュース番組は、遠ざかり、また、遠ざけてしまっている現実を突きつけてくれた。
●村に戻りたい、戻らない、判断がつかない人々、そうした分断をもたらした原因の一つは、国が定めた避難指示解除の基準にあるといったあたりから、この特集は俄然おもしろくなった。
●この土地に避難指示解除を出すことが正しいはずはないという番組のつくり手の静かな憤りが通底しているように感じる。
●年間20ミリシーベルトの被曝量について、フランスに赴き、ICRPの副委員長に直接インタビューしていた。信頼に足る専門家の証言を引き出したことは、今回の特集の中でも特筆すべき点である。
●何を信じていいかがわからないという住民の不安、長期目標としては1ミリシーベルトを目指すと言いながら、その達成時期を示すことさえできない政府の破綻した論理などがよく示されていた。
●飯舘村の避難解除の問題を真正面から捉え、事実を深く捉えていたと思う。
●国策の予定調和的な避難勧告の撤回や汚染地域除染対策についての問題は山ほどあり、現に住んでいる人々の生の声、問題点を正確に伝えることは必要不可欠だ。
●番組で取材されている長谷川さんや遠藤さん一家など心境がよく伝わり、胸に響いた。
●子どもは戻ってくるべきではないときっぱり言った長谷川さんの言葉は、まだまだ解決していないということを語っていた。不安を抱えながら子育てしている方たちにとっても力強い言葉だった。
●昨年の番組改編におけるキャスター交代には賛成の立場であり、歴代のような完成された高度な芸を持つキャスターではなく、自局アナウンサーの富川さんの起用にはとても期待している。
●富川キャスターは、穏やかで、バランス感覚あふれる語り口で現場レポートが特にすぐれていて、質問の的確さ、事実を冷静に伝える部分とインタビュイーの実感や本音を引き出す共感力を兼ね備えており、好感が持てる。
●避難者へのインタビューは、とかくありがちな誘導的、情緒的なものではなく、避難者の言葉を引き出しており好感が持てた。
●ダウン症児への理解を促すシリーズで、富川キャスターのインタビュー姿勢が非常にオープンマインデッドで、ダウン症の方たちにどう接していくのか、テレビで見る人にとってよいモデルだ。
●キャスターの持ち味である現場のインタビューという意味ですばらしい取材視点を持たれ、以前の派手さはないが、堅実な印象がある。
●富川キャスターが飯舘村の長谷川さんをご自宅に訪ね、話を聞く場面で、暗闇の中、古くて立派な民家の一室だけに明かりがともり2人がいる。なぜかとても心にしみるシーンだった。
●特集を見てとても暗い気持ちになった。そうであるがゆえに、WBC連勝、モーグル堀島行真のダブル金メダル、バルセロナの歴史的逆転勝利というスポーツニュースはわずかな救いだった。
<要望・改善点>
◆汚染土が袋詰めにされて積み上げられた光景や、がらんとした牛舎の跡の映像が続き、正直既視感がある。あの大災害がもたらした現実、そこから酌み取るべき教訓を紹介するには、もう少し違った切り口があったのではないか。
◆二重基準をつくってまでも無理やり避難指示を解除する国のやり方が悪という構図だが、ただ国のやり方が悪いというだけでなく、なぜ国はこのような方法を選んでいるのかを掘り下げてほしかった。
◆国策における被曝量の説明内容が意味不明。メッセージも客観的に見ると不適切で、構成がちぐはぐ。特に、「国家被曝量/福島県被曝量制限のダブルスタンダードではないでしょうかという結語は不適切と感じた。
◆「放射線量=悪」とレッテルを張るだけでなく、冷静に判断できる物差しを示した上で報道しなければ、むやみに不安をかき立てているだけになり、それがかえって被災地の復興の妨げにもなる危険性もあるのではないか。
◆視聴者に現地福島の状況を正しく理解してもらう上での情報提供の仕方にバランスに欠ける部分があったのではないか。住民の避難に責任を分担する国や自治体の考え方や判断がほとんど提示されなかった。
◆構成についていえば、避難指示解除を目前に控えた福島県飯舘村と3年前に解除された南相馬市、その二つの現場が直面する課題を特集の冒頭で明確に視聴者に伝えてほしかった。
◆復興庁が行った飯舘村の避難者への意向調査の結果をそのまま報じたことは非常に問題。この調査は、選択肢が非常に誘導的だった。アンケートの実施主体が帰還政策をとる復興庁らによるものであるということを十分慎重に考慮すべき。
◆富川キャスターには報道の正確性、番組の信頼性向上を目指していただくと同時に、一つ一つのニュースを理解したい、共感したいと願っている番組視聴者の思いに、この先しっかり応えていただきたい。
◆私学森友学園の籠池氏のニュースに関し、異常な教育者像を見せつける感じの恣意性が見られたが、問題の本質はそこではないように思う。
◆事件報道に関して、法律用語ではない「容疑者」という呼称はやめ、刑事訴訟法上の用語である「被疑者」とすべき。「疑いを容れる者」という呼称で報じ続けることは、それが冤罪だと発覚したときには冤罪の発生にマスコミが消極的に荷担していたということを意味するのではないか。
<提言>
★時に、番組づくりの方向性に適合しない事実や意見も適切公平に報じてこそ、報道あるいは番組への信頼性が増すことになると思う。仮にその結果が混乱や混沌とした状況を伝えるまとまりのない番組になったとしても、それが現地の実情であれば、それは誠実なレポートになるのではないか。
★報道の価値は、政治権力ではなく、最終的には国民が決めるものなのだということを信じて、力強く、粘り強く、繰り返し事実を報じ続けていただきたい。強いエールを送りたい。
★特に、放射線の問題は軽視されつつあり、多くの場合健康への影響が数年かかって出始めるという話も聞く。3.11は地震と津波だけではないことを国民や政府に忘れさせないためにも、原発事故とその影響についての取材をぜひ続けてほしい。
※次回の放送番組審議会は4月28(金)開催予定です。