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番組審議会だより
北海道テレビ放送では、番組審議会委員10名の方による放送番組審議会を設け、毎月1回(8月と12月を除く)審議会を開催して、放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
番組審議会でのご意見は,2ヶ月に一度第4日曜午前5:40から放送の「あなたとHTB」でもご紹介していますのでどうぞご覧ください。
第537回北海道テレビ放送番組審議会概要
日時
2021年9月22日(木)15:00~17:00

審議対象番組
出席委員
岡田美弥子 | 委員長 |
斎藤 歩 | 副委員長 |
貝澤珠美 | 委員(レポート参加) |
気賀沢祐介 | 委員 |
穴澤龍治 | 委員 |
森平和歌子 | 委員 |
桜木紫乃 | 委員 |
及川華恵 | 委員 |
鍋島芳弘 | 委員(新任) |
会社側出席者
代表取締役社長 | 寺内達郎 |
常務取締役 | 森山二朗 |
報道情報局長 | 伊藤伸太郎 |
編成局長 | 橋本秀利 |
番組担当プロデューサー | 戸島龍太郎 |
番組担当ディレクター | 平尾由佳子 |
番組審議会事務局長 | 斎藤 龍 |
番組審議会次期事務局長 | 渡辺 学 |
番組審議会事務局 | 佐藤浩章 |
【審議対象番組についての委員意見要旨】
≪評価点≫
●ドキュメンタリータッチがメインでありながら、バラエティの要素もあり、しかも全体が一つの物語になっている。その物語もサクセスストーリーで、しかも視聴者はその結果が分かっているので安心して見ることが出来た。
●最初は番組の意図がよくわからず、何だろうと思いながら見はじめた。だんだん、そのうちガッツリ共感して号泣してしまった。苦労、苦難から成功への道を、故郷札幌を舞台に描いていたので、札幌住民にはゆっくりした時間を感じられたのではないか。
●今回の前編である2011年の番組を流した上で、2021年春の帰省という構成が良かったと思う。10年前から長谷川さんに密着していたこと、今回10年前と同じスタッフで制作していることが、番組全体のアットホームな雰囲気、温かい雰囲気につながっていると感じた。
●10年ぶりに前回と同じスタッフが集まり、番組を作ったというのは、地元局の蓄積のなせる技だし、新千歳空港で出迎えたスタッフの「お帰りなさい」「売れてるねー」という家族のような身近さが、見ている側の距離も詰めていく効果があったと思う。
●ナビゲーターとして室岡アナウンサーとオクラホマの2人が、後半にはゲストとして長谷川さんの母親が登場する。このあたりが普通のドキュメンタリーとは違うところで、番組を楽しくしていた。
●同じ芸人としてオクラホマを対比させることで、いかに苦労の道のりを長谷川さんが歩んできたのかが伝わりやすかった。母親だけの視点だとちょっとズルいなと思うが、相方の視点、先輩の視点、同級生の視点などを取り入れることでメリハリをつけ、笑いと感動を上手く取り入れながら、約1時間という放送時間があっという間に過ぎた。
●これは、長谷川さんのドキュメンタリーでありながら、母と息子、どちらかというと、まごう事なき「北海道の母」の姿を映し出す番組だった。母親のキャラクターは圧巻。芸人さんとしては笑いの内側にある悲しみを暴露することが、あまり仕事にプラスになるとは思えないが、こればかりは地元でなくては出来ないエンターテインメントだったと思う。
●母親の「人柄が土台」「人柄がよければ大して面白くない話でも笑ってくれる」という話や、長谷川さんが「やめる時期を逃しただけ」「流されてばかり」「自分の実力が分かってくると目標や夢が下がってくる」と言いつつ懸命に努力する姿は、芸能やスポーツばかりではなく、多くの視聴者に向けた元気が出るメッセージになったと思う。
●何よりも感動したのは、駅で見送るお母様が発車直前におにぎりを渡すシーン。新札幌駅のホームで会話をしている時に渡せたはずだが、発車ギリギリで、しかもおにぎりを入れたレジ袋がハンドバッグにひっかかってうまく渡せないシーンはドラマを見ているようだった。
●電車で食べたおにぎりから長い糸が引いて、ものすごくイカンものを見てしまったのではないかと思ったら、納豆おにぎり。そして涙。「やってくれるなあ」という気持ちに。
●同級生との再会、初舞台の会場、当時の芸人仲間などが次々と登場して思い出を披露する。「北の国から」のVHSテープの話は、長い時の流れを感じさせるのに十分な小道具だった。
●母親のお店のお客さんが「思い出しただけで笑っちゃう」という言葉が彼らにとってどんなに嬉しい言葉だっただろうかと心に響いた。
●あまりお笑いに興味はなかったが、今では応援団の一員としてとして「錦鯉」のお二人が出演する番組に気をつけるようになった。視聴者の多くも、自分を育て応援してくれている人達を思いだし、また新たな気持ちで仕事等に向き合う機会となったのではないかと思う。
●コロナで帰省できない今だからこそ、自分達に重ね合わせて故郷に想いをはせながら見られる今回のような番組は、時代に求められていると思った。
≪要望点 改善点≫
▲もしドキュメンタリーであったなら、10年前に放送した場面の再構成部分と、今年新たに取材した部分とのバランスが悪すぎる気がした。今回の取材で新たに発見できたことが少なすぎて、取材して今回新たに驚いたり発見できたことがあまりなかった気がする。そもそもそういう構成になっていなかった。
▲お笑いに不案内な人にとっては、「M-1ファイナリスト」の価値がいま一つ分からない。番組を通してお笑いの世界の厳しさを垣間見られたが、20年も売れなかった人が「なぜ突然売れたのか」という「謎」もよく分からなかった。
▲売れなくても、生活が苦しくても、長谷川さんが芸人を長く続けてきたことは十分に描かれていたが、一番知りたいブレークの理由が、人柄の良さだけでは物足りない気がする。仮に人柄の良さがブレークの原因だったとしたら、なぜ10年前でなくて今なのかを描いてほしかった。
▲過去映像へと画面が移り、「2011年、長谷川雅紀にまだ『歯があるころ』」と聞こえ、聞き間違いかと思い、そこだけ何度も聞き返した。「錦鯉」の顔と名前が一致しない視聴者として、あのナレーションは少し不親切かもしれない。
▲ゴールデン帯に放送すべき番組として結実していないのではないかという批判的な論評に至った。私は、制作スタッフが知っているほど彼のことを知らない。
▲ウルッとくるシーンが結構あったと思うが、直ぐにギャグで笑いの方に持って行かれた。お笑い芸人さんの番組だから仕方ないかな?と思いながらも、もう少しウルッときたまま余韻が欲しかった。
▲2011年、長谷川さんが「自分の実力が分かってくると目標や夢が下がってくる」と言っていた。10年後、その言葉を振り返ってどう思うのか、あきらめずに今に至ったことを振り返りどう思うか、今の長谷川さんの気持ちを聞きたいと思った。
▲相方の渡辺さんへの言葉が、半ば照れながらつっかかり、つっかかり話していて、「言わされた感」を感じた。渡辺さんも照れていたが、見ている私も照れてしまった。
▲最後に、長谷川さんが札幌への思いを語る部分は良かったが、ナレーションの「ふるさとはいつだって、私たちを待っている」の締めは平凡すぎる。もう少し何とかならなかったのか。
≪提言≫
★「錦鯉」がこれからも成功し続けるかどうかは判らないが、その結果にかかわらず続編を期待したい。今度は長谷川さんの母親を主人公にした番組を制作しても良いかもしれない。いずれにしても、これからの「錦鯉」の活躍に注目していきたい。
★番組が、私自身の気持ちや行動へ与えた影響を振り返り、あらためてテレビ放送の影響力の大きさを実感した。引き続きこのような良い番組を制作して社会へ良質なメッセージを発信することを強く期待する。
次回の放送番組審議会は10月21日(木)開催予定です。