now onair

NEXT

―2014年放送―

2014年9月30日
「あおぞら公園」 土肥友子=札幌市東区

画像

小雨模様の日曜日の朝、
父は、私をはじめ女ばかりの4人の子供たちに訳は告げず、
畑に隣接している空き地の雑草を刈るように命じた。
「何も雨の日に」と思ったが、父の命令は絶対で、私たちはカッパを着て背丈を越える雑草を刈った。

 あくる日、学校から帰ると、父が「畑に行ってみろ」と一言。
刈り残しはなかったはずと不思議に思いながら行ってみると、
そこにはシラカバの木でできたブランコが立っていた。

 学校までは3キロの道のり。
隣の家までは自転車で行くような寂しい土地で、
子供たちに少しでも楽しい暮らしを、と願う父の思いがあふれた、
すべてが手作りのものだった。

鎖は荒縄、腰掛けはまきをカンナで削った、世界でたった一つのブランコ。
数日後には、切り株に板を渡したシーソーも加わった。
雑草が生い茂っていた5坪ほどの空き地を、子供たちは「あおぞら公園」と名付け、
学校から帰ると、毎日暗くなるまでのほとんどを、ここで過ごしたものだ。

 あとで母から聞いて分かったことだが、
父が雨の日に草刈りを命じたのは、雨が土を軟らかくし、草が抜けやすいからだった。
東京オリンピックが開催された昭和39年の夏のことである。

 今年は、心豊かに生きることを、身をもって教えてくれた父の十七回忌。
娘たちは、今も時折、心の中の「あおぞら公園」で遊んでいる。   〆