「国は上から目線ですよ」アイヌ遺骨の返還求め、国を初提訴「静内の土に戻したい」ウポポイ集約の279体
2026年 5月 8日 19:23 掲載
新ひだか町のアイヌ民族の団体が白老町にある「ウポポイ」に集約された遺骨の返還を求め、きょう(8日)国を提訴しました。 これまで大学や自治体を訴えた裁判はありますが、ウポポイの遺骨を返還するよう国を訴えたのは今回が初めてです。
立田祥久記者)
「箱に入ったアイヌ民族の遺骨が北海道アイヌ協会の理事長に手渡されました」。
今月5日、イギリスのロンドン自然史博物館は1866年から1911年にかけて収蔵したアイヌ民族の遺骨7体を北海道アイヌ協会に返還しました。
ロンドン博物館)
「博物館の中には人骨がいくつかあるが、現代では受け入れがたい方法で入手されたものがあると認識しています。 そのことを北海道アイヌ協会に対して認めていかないといけない」。
遺骨はきょう(8日)北海道に到着しました。
北海道アイヌ協会 大川勝理事長)
「長い年月を異国の地で過ごされた先人の御霊にはいくらばかりか想像するだけで胸の詰まる思いがいたします」。
遺骨はそのまま白老町の民族共生象徴空間ウポポイにある慰霊施設に納められ、先祖供養の儀式が行われました。
慰霊施設には、人類学などの研究目的で墓地から掘り起こされ、北大など全国12の大学や博物館などに保管されていたおよそ1600体の遺骨が集約されています。 新たにイギリスからの遺骨も加わりました。
千葉雄太記者)
「雨が激しく降るなか、民族衣装に身を包んだアイヌ民族の団体が札幌地裁へと入っていきます」。
一方、新ひだか町のアイヌ民族の団体が慰霊施設およそ1600体のうち279体は新ひだか町の墓地から持ち出されたものだとして遺骨の返還を求め国を訴えました。
シベチャリアイヌトライブ 高月勉会長)
「静内から持ち出された遺骨、279体をすみやかに私たちコタンに静内の土に戻してやりたい」。
ウポポイの慰霊施設は遺族や持ち去られた地域のアイヌの団体に、遺骨を返すまでの仮の保管場所という位置づけです。 遺骨を引き取る場合、国が定めたガイドラインに沿って申請し、国が求める条件を満たせば返還されます。 なぜ申請はせず裁判という形で遺骨の返還を求めたのでしょうか。
シベチャリアイヌトライブが活動している日高の新ひだか町・静内。
団体は2019年に設立され、新ひだか町などに住むアイヌ43人が所属しています。
先月下旬、台湾のアミ族が新ひだか町を訪れました。 およそ120年前、日本の統治時代に旧日本軍によって強制移住させられた先住民族です。 アミ族も民族の文化と土地の権利を取り戻す活動を続けています。
シベチャリアイヌトライブ・山下孝夫さん )
「(墓地から)ハマサイとかもみんな持っていかれた。 あとエムシ、刀も副葬品はほとんど持っていかれた」。
案内したのは明治から昭和にかけて研究者らによって遺骨が掘り起こされたアイヌ民族の墓地の跡です。
アミ族の通訳)
「なぜここに東大の研究者が墓があると分かった?」
市川守弘 弁護士)
「すごい調べてます。 事前にどこにアイヌの墓地があるか調べながら、東大は2年間で約200体の遺骨を北海道内から持っていっている」。
アミ族の通訳)
「アイヌの人はお墓をどこに立てる?」。
シベチャリアイヌトライブ・山下孝夫さん)
「小高いところに墓地を立てる。 水害とかないように、小高いところから自分のコタンを見下ろせるような場所。 ここから見える範囲がこの辺の亡くなった人たちの生活区域」。
シベチャリアイヌトライブ 神谷広道副会長)
「ああいう箱の中(ウポポイの慰霊施設)では眠れないと思う。 やっぱり土の中に埋葬された遺骨はやっぱり土の中に返すのがゆっくり俺は休めると思うよ」。
アイヌ民族は肉体は土にかえるという死生観があり、遺体は土葬されます。 ここにあった墓地からは58体の遺骨が持ち去られたことがわかっています。
ウポポイの慰霊施設ではこれまでに恵庭と小樽のアイヌの集団がガイドラインに沿って返還を申請し、28体が引き取られています。
シベチャリアイヌトライブは、申請ではなく裁判で訴えました。
市川守弘弁護士)
「慰霊方法は各地のアイヌ集団が自分たちで決めるべきこと。 それを国が審査する。 これもアイヌの権利をそもそも認めていないから国の都合のいいような体裁をとれば返しますよという制度になっている」。
シベチャリアイヌトライブ 神谷広道副会長)
「私たちは返してくれと言っても国は上から目線で返してやるよという形ですよ、国は。 私たちは望まないです。 裁判で勝ち取ります。 国の指針に則ってかえってもらうことは腹立たしいです」。
今回の提訴を受けて国は「訴状が届いておらずコメントを差し控えたい」としています。 国内の大学の研究者が、時には夜中に墓を盗掘するなどこぞって遺骨や副葬品を収集したのは、人権を侵害し、人の尊厳を踏みにじる行為でした。 そして今も不信感は消えていません。 国には原告の主張を丁寧に聞き、誠実に向き合う姿勢が求められます。
※シベチャリアイヌトライブ 高月勉会長の「高」は正しくは「はしごだか」


















