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執念のデータ完全復元 沈没前の新たな動画と家族が受け取った「最後のメッセージ」知床沖観光船沈没事故

2022年に北海道の知床沖で観光船とともに沈み、2年4か月後に見つかった乗客のカメラ。奇跡のデータ復元です。

《技術者の執念⋯1年半かけカメラのデータが復元》

また新たに息子の〝生きた証し〟が蘇ったといいます。

■優さんの父親「以前お願いしていた会社でもうそれで終了だと思っていたので、さらに復元できたというのを聞いた時は、もうびっくりで。本当に私たちのために、そこまで力を尽くしていただいたというのは、もう本当に感謝の気持ちしかないですね」

父親はこの日、息子が撮影した写真を、データを復元したメーカーに受け取りに行きました。鉄道など乗り物が好きで誰にでも優しい性格だったという優さん。2022年4月、千葉県の自宅から1人で北海道へ旅行に出かけ、知床で観光船「カズワン」に乗り込みました。

事故から2年以上がたった2024年8月。知床半島の先端で行方不明者を捜索していたボランティアが、砂浜に打ち上げられていた優さんのデジタルカメラを見つけました。

■優さんの母親
「このストラップだ。これ優のだね。冷たかっただろうね。きっとこういう感じで絶対離さなかったと思うんです。最後まで離さなかったんじゃないかなと」

両親は息子が最後に撮影したものを見たいと、専門業者にSDカードのデータの復元を依頼しました。3週間ほどかけて事故当日の優さんの様子など700枚以上が復元されましたが、業者からは一部のデータは復元できなかったと告げられました。

新たに復元された写真を手に取る優さんの両親
新たに復元された写真を手に取る優さんの両親

2年以上海水に浸かって腐食が進み、SDカードは大きなダメージを受けていました。しかし復元できないデータが残ったと聞いた国内のカメラメーカーが動きました。
「家族のために思い出を蘇らせたい」
SDカードのメーカーなど国内外の4つの企業、総勢50人のプロジェクトチームが作られ、およそ1年半をかけ残りのデータ全てを取り出すことに成功しました。

■優さんの父親「これ乗客の人でしょ?ずらーと向こうまで並んでいる」
■優さんの母親「後ろから撮っていますね」

新たに復元した写真は10枚。動画は10本。新たにカズワンの船内から撮影された動画も復元しました。

■優さんの父親
「これほどまでに朽ち果てたものを解析して復元してくれたという私たち家族に対する思いと、あと技術力の高さというのにもう感服ですね」

「三角波っぽい・・・」復元された写真を見た元従業員は
「三角波っぽい・・・」復元された写真を見た元従業員は

《捉えられたあの日の海 重大な波の変化も》

私たちは復元された写真に映っていた男性を訪ねて知床に向かいました。事故当日、カズワンの出航を手伝った運航会社「知床遊覧船」の元従業員です。甲板員など10年以上務め、知床の海を熟知しています。

■元従業員「Qこれは事故当日?」「そうですね。これが私だからね」「これはプユニ岬。出航して5分後ぐらい。(波は)なんともない」

午前10時ごろにウトロ漁港を出航したカズワンは、およそ5分でプユニ岬を通過します。このとき、波は穏やかでした。およそ1時間後「カシュニの滝」を通過します。ここで元従業員はそれまでの動画にはなかったある変化に気付きます。岩を打ち付ける波頭が、白くなっていました。

■元従業員「結構、波あるよ。(波は)1メートルだな」「だいぶ波が出てきているね。これでよく岬まで行ったね」「自分だったら船長に『帰るべ』というね、帰ろうとか。「(自分が)思っていたより速いスピードでもう5分、秒単位で(波の高さが)変わってきた」

午前11時すぎ。カシュニの滝。これまで運輸安全委員会が事故報告書で推定していた波の高さは0.55メートルです。しかし元従業員はこの段階で既に、運航会社が出港中止の基準と定めている1メートルの波があったと指摘しました。

■元従業員「ここで折り返せればよかったのにね。最低でもね」

正午前「KAZUⅠ」は知床半島の先端に到着しました。これは新たに復元した優さんが最後に撮影した写真です。元従業員はここでも重大な海の変化があると指摘しました。

■元従業員「少し三角波っぽくなってきた。しける時はうねりになっていく。(波は)1.5メートルあるかな」

三角波について海難事故の専門家も危険な状態だと話します。

■神戸大学大学院海事科学研究科 若林伸和教授
「複雑な複数の方向から来ているような時に、三角形にピッとこう海面が盛り上がるというのが三角波ですね。三角波が立ってきたら、小型船舶の場合はちょっと危ないからやめとこうというのが一般的な判断なので、知床岬の先端まで行ってしまったこと自体が、もうかなり厳しい状況に追い込んだという感じだとは思いますね」

カズワンが消息を絶ってからおよそ4時間後。沈没現場のカシュニの滝付近の映像です。しけは、時間を追うごとに激しさを増していきました。

優さんに手を合わせ報告する母親
優さんに手を合わせ報告する母親

《まるで記録を残すために撮影したような沈没前の動画》

復元したデータの中に驚くべき動画も残されていました。優さんは高波の中、まるで記録を残すようにカズワンの様子を撮影していたのです。

■優さんの家族「わ、結構、荒れていませんか」「だからみんな船内にいる。これは証拠になる。すごい」「キャーキャー、泣き声が聞こえる。あぁ優はこういうのを撮っていたんだ。よくやったよ。…ものが散乱している」

最後に荒れ狂う知床の海を走った観光船「カズワン」。その後連絡が取れなくなり、船は沈没しました。

■優さんの父親「揺れてる様子とかを分かるように撮ってくれてたっていうのは、何か後に役に立つんじゃないかなという思いで撮ってたのかなと、今にして思うとそう思いますね」
■優さんの母親「よくやったよ優。残してくれたね、ありがとう」「今回の動画も写真も諦めない、僕も一緒に戦ってるって、裁判でも使ってよね、そういう息子の思いが技術者の方にも何らかの形で伝わったんじゃないかなって、息子が伝えてくれたんじゃないかな」

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