“盲ろう夫婦”新たな挑戦 「通訳介助員」なしではどこへも行けない… 介助員不足の深刻な課題に向き合う
2026年 7月16日 21:15 掲載
北海道・旭川市に住む「盲ろう」の夫婦。目と耳両方に障害がある彼らにとって、欠かせない存在が「通訳介助員」ですが、大きな課題も見えてきました。
旭川市で暮らす澤田優さん(43)。目はほとんど見えず、かすかに光を感じる程度。補聴器をつけていますが、会話を聞き取ることはできません。
優さんの妻、朋子さん(44)。結婚を機に愛媛から移り住み、4年目を迎えました。左耳は補聴器をつければ聞こえますが、目は全く見えません。
優さん「食べる?」
朋子さん「うん」。
夫婦2人で食卓を囲むのが日課です。
優さん「きょう天気いいみたい」。
朋子さん(触手話で答える)
優さんの両親とともに暮らす2人。家の中では、ほとんどの家事を夫婦だけでこなしますが、外に出るときはサポートが必要です。
優さんの父
「毎日、朝早いですね」。
優さんの母
「私が入院してから、お父さんに2人を送ってもらうようになった。お父さんがやれるって言うから、続けてやってもらっている」。
優さんの父
「(2人の送迎が)難しいとなったら、うーん…。娘(優さんの姉)は協力してくれるって話はしていたけどね。なかなか、その時になってみないと分からないね」。
あん摩マッサージ指圧師の資格を持ち、旭川市内の治療院で働く優さんと朋子さん。今は、75歳の父・実さんが職場への送迎をしています。
優さん「行ってきます」。
優さんの母「行ってらっしゃい。頑張ってね」。
年老いた両親に、いつまでも頼ることはできません。夫婦2人だけで、自立して暮らしていくにはどうしたらいいのか。かぎとなるのは、盲ろう者を支える「通訳介助員」の存在。自ら課題に向き合う、夫婦の新たな挑戦です。
目と耳の両方に障害がある澤田さん夫婦。この日、自宅がある旭川から札幌にやってきました。バス停で待っていたのは、札幌市が派遣した通訳介助員の2人。
利用時間の上限はありますが、無料で介助を受けられます。盲ろう者の目となり耳となり、会話や周りの状況を伝えます。
優さんの通訳介助員「次の信号で渡ろう」。
朋子さんの通訳介助員「いま青なんだけど、ちょっとここ短いから、次の信号まで待ちます」。
優さんの通訳介助員(手のひら書き)「赤」。
澤田優さん「信号?」
優さんの通訳介助員「うん」。
訪れたのは、とある研修会。道内各地からおよそ20人の通訳介助員が集まっていました。講師として、盲ろう者5人が招かれました。澤田さん夫婦にとっては、初めての経験です。
澤田優さん
「澤田優です。弱視難聴です。コミュニケーション方法は、主に手のひら書きです。よろしくお願いします」。
盲ろう者のコミュニケーション方法は、一人一人違います。
こちらの女性は、視野が狭く見えづらいため、手を小さく動かす「接近手話」。
こちらの女性は、目がほとんど見えず、手を触れ合って伝える「触手話」でやりとりします。
澤田優さん
「誰かが発言している時は、発言している人の名前を書いてから発言内容を書いてほしい」。
年に1度の研修会。通訳介助員にとっては、様々なコミュニケーションの方法を盲ろう者から直接学べる貴重な機会です。
通訳介助員・佐藤由佳里さん(札幌)
「実践をしないと技術は落ちてしまう。その中で介助をすると、すごく不安になってしまって、それが盲ろう者にも伝わってしまうので、毎年開いていただける現任研修には参加したいなと思って参加しています」。
通訳介助員・和田大樹さん(旭川)
「盲ろう者通訳介助員の情報がまだまだ足りないので、市町村が協力して盲ろう者通訳介助員っていう仕事を知ってもらいたい」。
道内には、およそ900人の盲ろう者がいるとされていますが、通訳介助員の制度を利用している人は、わずか29人。自ら情報を得ることが難しい盲ろう者に、どうやって必要な情報を届けるのかも課題となっています。
チームに分かれて、ゲームで対戦する実践研修も。机の上に置かれたおわんにお手玉を投げ入れて、その数を競います。
通訳介助員
「今テーブルの前を通っています。机の角を手で触ってください。これ(お手玉)を前のほうにポンと投げて。移動しますね、距離をみてください」。
(お手玉を投げる優さん)
澤田優さん「どうだった?オーバー?手前?」
通訳介助員(手のひら書き)「手前」。
ゲームが始まると、対戦者同士の様子や盛り上がる雰囲気など、伝えたい内容は尽きません。
優さんの対戦者の通訳介助員
「『外れろ』って言ってます」。
優さんの対戦相手が、通訳介助員に手話で伝えた内容を、介助員が声にかえ、それを聞いた優さんの介助員が手のひら書きで伝えます。
(笑う優さん)
見学しているチームでも、介助員がゲームの進行状況を盲ろう者に伝え続けていました。
札幌盲ろう者福祉協会・高津潤子さん
「それぞれ同じスピードで情報を受信することは難しいと、今回の場面でも分かったと思います。どうしても場面によっては要約をして、中身をきちんと伝えないといけないということもありますので、そこはケースバイケースで通訳介助員の皆さんには頑張ってもらいたいと思います」。
出かけたいときに、出かけたい場所へ。澤田さん夫婦も情報発信を続けています。
澤田朋子さん
「私たち盲ろう者にとってなくてはならない存在。特に旭川は通訳介助員が少ないほうなので、今後若い人たちにも、通訳介助員は大変だっていう部分だけじゃなくて、楽しんでいただいて、少しでも興味をもって一緒に活動していただきたい」。
澤田優さん
「色々反省点や課題があって、いい研修会だったと思います。実際に通訳介助をするときにも、今回の研修を生かしてレベルアップしてほしいと願っています」。



















