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10月10日放送 「ユーコン川160キロ」第3夜

藤村 | 2001.10/11(THU) 22:27


 いよいよ「ユーコンの流れ」へと、漕ぎ出しました。

 大泉さんが言ったように「ディズニーランドのカリブの海賊」みたいな感じで、ずわーっと風景が現れてくるのである。

 それは、それは・・・美しく、そして静寂の世界なのである。

 「好きな人間」にとっては、それは自信を持ってお勧めできる場所である。

 「いいですよ!ユーコンは!」

 しかし、「いっこも興味のない人間」にとっては、

 「オレ・・・なにしてんだろ?」

 と、根本的な疑問が絶対にぬぐえない場所である。

 そんな中、唯一ふたりが興味を抱いたのが「釣り」であった。

 まぁ、彼らからすれば、

 「それぐらいしかねぇだろ!馬鹿野郎」

 ということだろうが、特にミスターは熱中していた。

 湖でも、ピートが「釣れません」っつってるのに、びゅんびゅんと竿を振っていた。

 大泉さんが「袋洗い」してる時も、びしびしとルアーを投げ込んでいた。

 ユーコンには、「パイク」という大型のカワカマスの一種、そして「グレイリング」という背びれが大きなマスの一種が棲んでいる。

 「釣りバカ」のみなさんは、ご存知でしょう?「パイク」はルアーで大物釣りが楽しめるし、「グレイリング」はドライフライがおもしろい。

 「釣りバカ」は、みなこう思う。

 「ユーコンで釣りかぁ!いいなぁ!バッかみたいに釣れるでしょう、ねぇ?入れ食いでしょう?ねぇ!デッカいやつが!いいなぁ・・・」

 「釣りバカ」の思考回路は、「海外で釣り」=「デッカイのが入れ食い!」なのだ。

 だって、私がそうなのだ。

 大泉さんが「袋ヒリヒリ」してた川岸には、「い~い感じ」の小さな流れがあった。

 私はうひゃうひゃ言いながら毛バリを流してみた。

 しかしだ・・・。おかしなことに、いっこもアタリがない。

 「ユーコンは、バッかみたいに釣れるから!」

 ふたりにそう言った手前、引っ込みがつかず、

 「でもまぁ今はね、時間が悪い。釣りはね、時間。」

 内心焦りながらも、「釣り天狗」を気取って、余裕しゃくしゃくあっさり竿を置いた。

 「ミスター!いくらやってもムダだぜ!釣りはね、時間!」

 そう言い残してその場を去った私は、大泉さんのでん部に「使い過ぎはデンジャー」って書いてある虫除けスプレーを噴射して喜んでいたが、それでもミスターは、粘り強くルアーを投げつづけていた。

 そして、キャンプ地。

 ミスターは、またしてもルアーを投げつづけていた。最初のうちは、私も嬉野くんも、「釣れる瞬間を逃すまい!」と、ミスターに付き合っていたが、どうも釣れない。

 そこで「フライでやってみれば?」と、半ば諦め気味に、ど素人のミスターに投げ方だけ教えて、無責任にその場を去った。

 すると10分くらいで、ミスターから奇声が上がった。

 「釣ったー!」

 あのおっさんの喜びようったら、こっちが嬉しくなるぐらいだった。

 ミスター執念の勝利である。

 しかし、「釣れる」とわかったらもうミスターに用はない。

 料理が一段落したところで、

 「ここは釣れるぞぉ~、おいミスター竿返せ!」

 そうして、大泉さんと連れ立って川岸に下りた。

 すると、跳ねてる!跳ねてる!グレイリングが!

 「今、ビチャって跳ねたとこに毛バリ投げてごらん」

 「どうやって?」

 「いいからテキトーに、竿振ってなんとか毛バリ流せ」

 「そんなんで釣れんのか?」

 「いいから流せバカ」

 「よしっ・・・こうか!」

 「おお!上手い!上手い!いいとこだ」

 「来んのか?」

 「見てろ!バカ!来るぞ・・・来るぞ・・・」

 ビチャッ!

 「来たぁーっ!」

 「うわっ!スゲェ!毛バリに一発で食いついた!」

 「うははは!簡単に来たなぁ」

 ものの数分で、フライ初心者の大泉さんも3匹釣った。

 「カナダいいとこ!」

 釣りに関しては、ミスターも大泉さんも気に入ったようである。

 しかし、まだユーコンの主「パイクさん」を釣っていない。

 次週、「鈴井貴之 世界を釣る!~カナダ・パイク編~」で、ミスターが大物パイクに挑む!

 
 さて、今回は、VTRに流れなかった部分を、話しておこう。

 嬉野くんの話だ。

 ユーコンで猛蚊に集中的に襲われたのは、ミスターと、そして嬉野くんだ。

 大泉さんも、まぁ「猛蚊の犠牲者」と言えなくもないが、あれは自業自得だ。

 「蚊はカメラに寄ってくる」というのは、ある意味正しかった。

 嬉野くんのやられようといったら、実はミスターの比ではなっかたのだ。

 人相が変わっちゃったのである。

 彼は、割と人の良さそうな顔立ちをしているが、昨夜放送したキャンプ地では、明らかに「15ラウンド判定負け」みたいな顔になっていた。

 普通なら、爆笑とともにVTRの中心的な話題になるはずだが、その形相があまりに「凄み」を効かせているので、恐くて笑えない。

 「グレイリング飯」をおみまいされた後、さぁテントに入りましょうかという時に、私が、

 「嬉野くんが入ってくると、蚊もたくさん付いてきそうだなぁ・・・」

 あくまでも軽い気持ちでジョークを言い放つと、彼は、腫れ上がった両目でギロリとぼくを睨みつけ、

 「あぁ?じゃぁ、オレは外で寝ろってことかぁ?」

 なんつって、我々を震え上がらせたのである。

 「い・・・いや・・・そんなつもりじゃ」

 「藤村くん!言いすぎだぞ。いくらか金銭を包まないと、彼、帰ってくれないぞ」

 大泉さんも精一杯のジョークで応えようとするが、目の前のお方は、「今日のところは10万で手を打とう」なんて本当に言い出しそうだから、あまり笑えない。

 
 「さっ・・・もう寝ましょうか!嬉野さん」

 「おう」

 「陸に上がったら、なるべくぼくがカメラ回しますから」

 「おう」

 「おやすみなさい・・・」

 「おう」

 どぎついオレンジ色のジャージを着込んだコワモテのお兄さんの横で、ぼくは、いつもより体を縮めて、寝袋にくるまったのである。

 「でも、なんで嬉野くんばっかそんなに刺されるんだろ・・・オレなんか、まだ2ヶ所ぐらいしか刺されてないけどな・・・」

 「なんだい?刺されるのはオレに責任があるって言いたいのかい?」

 「えっ!いやいや・・・」

 「・・・きっとヤツらは、弱い人間から襲ってくるんだよ・・・」

 「あぁ・・・」

 「キミ、長生きするよ」

 「そうかな・・・」

 「良かったね」

 「あぁ・・・」

 そうしてユーコン2日目の夜は、更けていったのである。

 ・・・でも、みんな見たいでしょ?蚊に刺されるだけで、人間どれほどスゴイ顔になるものなのか。

 多分「ユーコン最終回」に、それは、見れるかもしれない・・・。