さてさて、今回の「深夜バスだけの旅」。
モノが「深夜バス」だけに、昼間は基本的にやることがない。
気の利いたディレクターなら、
「やることないったってあなた、せっかくタレントさん押さえて、こんな遠くまで来てんだから、多少はVTR回しましょうよ、ねっ!もったいないし!」
なんてな事を申すのでしょうが、こっちは
「やることねぇんだから、ねぇんだっ!」
「いいのかい?」
「いいよ」
といたってシンプルな考えで、事にあたってるもんだから、本当に昼間はフリータイムだったのだ。
じゃ、ヒマを持て余した男4人、いったい何をしていたか?
2日目。
「オーロラ号」で函館に到着した後、すぐ横の朝市で「生イカの踊り丼」とかいうものすごいビジュアルのどんぶりを食い、湯の川温泉で朝風呂に浸かって、安田さんと別れ、フェリーで青森へ。
寝不足の時は、列車より断然フェリーの方が良い。
ぐっすり眠って気合いも充分な大泉さん。
「深夜に会おう!プシューッ!」という意味不明なアクションは、本編とは一切関係ありませんが、「深みが出る」という、わかったようなわからないような嬉野くんのご意見で、予告編にも登場しました。
さて、青森では、孤軍奮闘のドライバーさんには、健康ランドで睡眠を取ってもらい、我々4人は、「想い出の地・酸ヶ湯温泉」までドライブ。
そう、まったくもってプライベートな4人旅という風情で、記念写真を撮ったり、まんじゅうを食ったり。
紅葉が真っ盛りでございました。綺麗でしたなぁ。
酸ヶ湯温泉の千人風呂に入りたかったけれど、ものすごく混んでいたので、もう少し奥へ入った一軒宿の温泉で湯をもらいました。
この時期、ユーコンの編集が超多忙で、ぼくも嬉野くんも少々疲れておりまして、
「いやぁ、ロケに出ると、体が休まるなぁ・・・」
などと、本末転倒な安らぎを得ていたのでした。
翌日。東京での話。
東京駅前での収録を終えて、「まずは朝メシでも食いましょう」と、ある高級ホテルへ向かいました。
狙いは、「ホテルの朝食バイキング」。
ホテルのランチ・ビュッフェとか、ケーキ・バイキングってのは、雑誌にもよく出てますね。
私も当然「食べ放題」の言葉に弱く、それも「ホテルの」とつくと、もういてもたってもいられない性分です。
しかし、意外にみなさまの話題に上らないのが、「ホテルの朝食バイキング」。
そこらへん抜け目のない「じゃらん」さんあたりでも、朝食バイキングの特集が組まれたことは、ないんじゃないでしょうか。
そりゃそうだろう。
泊まってるならまだしも、朝っぱらから気合充分、夜も明けきれぬうちから自宅を出発し、ホテル到着午前8時で「うおおぉ!食うぞぉッ!」って張り切る大馬鹿野郎が、世に何人いるというのか。
そんな珍しい人種を相手に特集など組もうものなら、その時点で「旅行・グルメ情報誌」から、「一部マニア向け専門誌」へと出版形態を変えてしまう。
しかし、私は、その「マニアックな食べ放題」を、東京在住時代の週末の楽しみとして、何度か実行していたことがある。
驚いてはいけない。コレ、やってみるとなかなか気持ちいいのである。
早朝、車を飛ばして、新宿あたりの高級ホテルへ。陽光降り注ぐ吹き抜けのレストランで、牛乳をまず一杯。続いてりんごジュースをガブガブ。そして焼きたてのクロワッサンにバターをたっぷり塗って、ソーセージをパリパリ。それが終ると、和食コーナーへと赴き、おいしいご飯と赤だしで、漬物などつまみながら、ゆっくりとした朝を過ごす。
蝶ネクタイのボーイさんが颯爽と現れて、「コーヒーのおかわりよろしいですか?」なんて、至れり尽くせり。
やってみると、これは、決して一部大食いマニアのウラ技ではなく、贅沢な休日の過ごし方として、立派に成立するイベントである。
そう。今回それを思い出して、大泉さんに「どうですか?高級ホテルで朝食バイキングなんてのは!」「おっ!いいですなぁ」と、なったわけである。
とある高級ホテルの朝食バイキング。
ミスターは、「寝汗が気持ち悪いんで、ちょっと着替えてきます」と、トイレへ行った。
「じゃ、我々はさっそく!」と、残った連中が、それぞれ目指すバイキングコーナーへと向かったわけだ。
各人あれこれ選んで、席に戻る。
ややしばらくして、大泉さんが、ちょっと恥ずかしそうな顔をして、急ぎ足でこっちへ戻ってきた。
「おや?どうしました?」
「いや・・・スプーンどこですか?って聞かれちゃった・・・」
「は?」
すぐには、なんのことだか分からなかったが、大泉さんの服装を見るや、その事態が飲み込めた。
「ああッ!」
そうだッ!大泉さんの服装!黒のスーツに、蝶ネクタイ!
これじゃ大泉さん、どう見ても、このレストランを取り仕切る「支配人さん」である!
スプーンの在りかがわからなかった一般客が、大泉支配人に質問を浴びせかけたのだ。
「ヤバイよ!大泉さん」
「なんだよ!これじゃ、ぼくはまるで仕事サボってメシ食ってるダメ支配人じゃないか!」
「ダメダメ!それじゃ、このホテルの評判を落とすよ」
「そうかい?」
「だめだめ!」
「じゃ、ちょっと・・・」
言うと支配人は、背筋をピンと伸ばし、にこやかな笑顔をふりまきながら各テーブルを回り始めた。
「おいッ!なにやってんだ!なんでおまえが回ってんだよ!」
「いや、支配人として・・・」
「おまえ支配人じゃねぇだろ!戻って来いッ!」
「なんだよ・・・この格好で食べてていいのかよ」
「上着を脱げばいいだろ!」
「そうか・・・これでいいか?」
「蝶ネクタイも取れバカ!それじゃ、ボーイだ。」
「あ・・・」
東京のホテルでのちょっとした騒動でございました。
その後は、予約しておいたシティーホテルに入って少し仮眠を取った後、出演陣のおふたりは、買い物などに出かけ、我々D陣は、ホテルの一室にこもり、「名セリフカレンダー」の最終選考をしていたのでした。