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「サンタさん苦労する」の巻

藤村 | 2002.12/20(FRI) 14:14


 もうすぐクリスマスだ。

 子供たちは、その日が楽しみでしょうがない。

 もちろん、サンタがプレゼントを持って来てくれるからだ。

 今でも、きっちりサンタを信じている。

 クリスマスツリーには、子供たちが書いた「サンタ宛て」の手紙がぶら下がっている。

 今年は、自分はこんなにいい子だった。だから、ハリーポッターのレゴを下さい。サンタさん、寒い中たいへんですね。レゴは、大きなお城のやつです。高くてごめんなさい。

 まぁ、そんな手紙だ。

 「いつまで信じてんだろうか」
 「学校の男の子たちから、ずいぶん馬鹿にされたみたいだけど・・・」

 一番上の娘は、小学4年生。「さすがにもうそろそろ・・・」と思うのだが、いまだに信じて疑わない。

 それには、ひとつの理由がある。

 彼女は、「サンタなんていないんだよ!」そう言う男の子たちに向かって、こう言うのだ。

 「だって!ウチのお父さんは、サンタさんに会ったことがあるんだもん!」

 確かに会ったことがある。

 フィンランドで、やけに日本の地名に詳しい、巨体のサンタに会った。

 そのサンタに「プレゼントは何がいい?」って聞かれた20代後半の男は、「ハンバーグ!」と答えて、視聴者の笑いを誘った。

 「じゃぁキミは?」

 不意に同じ質問をされた四十に近い男は、思わず「ミー・トゥー(おれもハンバーグ!)」と答えて、失笑を買った。

 3年前、「ヨーロッパ・リベンジ」での出来事である。

 あの時、ロケから帰った私は、ちょっと自慢げに、子供たちにそのサンタの写真を見せた。

 「ほ~ら!これがサンタさん!」
 「うわっ!スゴイ!」
 「こんな顔してんだぞ!」
 「あっ!メガネかけてる!」
 「すごく大きい人なんだね!」

 以来、我が家の子供たちの「サンタ像」は、「メガネをかけた巨大なおっさん」として確立された。

 そして去年。クリスマスを前にしたある日のこと。

 一番上の娘が、ちょっと不思議そうな顔をして、私に質問した。

 「サンタさんって、エントツから来るんでしょ?」

 「そうだよ」

 「じゃ、ウチはあの穴から入って来るの?」

 我が家には、壁にサッカーボール大の穴が開いている。煙突に通じる穴だ。いつか薪ストーブを買いたいと思って、なかなか買えず、今は穴だけがポッカリと開いている。

 「そうだね。あの穴から」

 「小っちゃくない?」

 「あっ・・・」

 確かにそうだ。穴の直径は約30センチ。どう見たって、「巨大なメガネサンタ」が這い出て来るには無理がある。おとぎ話にもほどがあるというものだ。

 「えっとねぇ・・・」

 困った。しかし、ここはふんばらないといけない。子供たちに、サンタの写真まで見せて信用させたのは、私だ。

 せめて、自分で気づくまでは、夢を見せてあげたい。

 「ほんとうにこっから入って来るの?」

 「入ってくるよ」

 「どうやって?」

 「どうやってって・・・。じゃぁ、こうしよう。この穴に今夜から、サッカーボールを詰め込んでおこう。サンタさんが、本当にこっから入って来たら、ボールが落ちてるはずだろ?」

 「そっかぁ!」

 その日から、子供たちは毎朝、ボールが落ちてないか確認していた。

 そして、クリスマスの朝、

 「ボール!落ちてた!」

 私の寝ている布団の上で、子供たちが飛び跳ねた。

 「やっぱり来たんだ!」
 「来た!来た!」
 「ちゃんとエントツから来たんだ!」

 巨大なメガネサンタは、「魔法で小さくなれる」。子供たちは話し合いの中で、そんな結論に達したらしい。

 そして今年。

 「また、ボール入れとこうね!」

 小学4年生になった長女は、とても楽しそうに言った。


 ミスターにも一人娘がいる。

 ミスターは、「サンタ問題」に対し、もっと直接的な対応を取っているらしい。

 毎年、「自分がサンタになって、子供の前に現れる」というのだ。

 イブの夜。ミスターは、ビシッとサンタの扮装をキメて、こっそりと外へ出る。

 そして、頃合を見計らってインターホンを押す。カメラ付きのやつだから、小っちゃなモニター画面に玄関先が映る。

 「ホラ!今年も来たわよ!」

 副社がいそいそと娘を手招きして、その小さな画面を見せてあげるそうだ。

 ザラついた画面の中で、陽気なサンタが手を振り、そしてプレゼントを置いて、雪の中を去って行く。

 その間、副社は決して、娘を玄関には連れて行かない。

 ミスター夫妻は、そんな見事な連係プレーで、娘に毎年「モニター越しのサンタとの面会」を演出しているのだ。

 「なるほどねぇ・・・」

 扮装好きのミスターらしい「サンタ対策」である。

 でも、去年。

 そんなミスターサンタに事件が起きた。

 「ホラ!来たわよっ!」

 副社がいつものように手招きすると、子供は「待ってました!」とばかり、一直線に玄関に向かって走り出してしまったのだ。

 「あっ!」

 副社が追いかけた時は、もう遅かった。

 子供にしてみたら、そりゃぁ毎年ノコノコと玄関先に現れて、陽気なパフォーマンスを繰り広げるサンタに、小さな画面越しではなく、「直接会いたい」と思うのは当然のことだろう。

 で、不意を突かれたミスターサンタは、それでもあわてて雪の中を転げ回って逃げたという。

 「子供が、いつまでサンタを信じるかは、その子供がどれだけ愛されているかによる」

 少し前、新聞でこんな言葉を目にした。

 
 今年も、ミスターはサンタに挑戦するんだろうか。

 多分去年より「危険な状況」に陥ることは間違いない。

 子供を愛する気持ちは誰にも負けないんだろうけど、そう考えると、彼の行動は、ちょっと軽率だったかもしれない。

 
 ミスターサンタの健闘を祈る。

 
 ウチは、今年もボールを転がしておけばいいから楽だな・・・。