6月6日放送 「中米・コスタリカで幻の鳥を激写する!」最終夜

藤村 | 2001. 6/ 7(THU) 15:24


 現場に着いたのは、6時20分ごろだったでしょうか。

 「とりあえずここで待とう」

 セニョール・マリーノが言いました。

 前夜の食堂。

 清水くんの知り合いで、「サベグレ・ロッジ」のケツァール情報を教えてくれた錦織さんが、わざわざサンホセから駆けつけてくれた。

 「私もこのロッジの近くの森で、ケツァール見ました。ものすごく綺麗な鳥ですよ」

 実際に見た人の話というのは、興奮する。

 「そんなにキレイなんですか・・・」

 「グリーンが違うんですよ」

 「ほぉー・・・近くで見たんですか?」

 「あの・・・逃げないんです。堂々としてるというか」

 「ほぉー・・・」

 食事をしながら、ケツァールの話に花がさく。

 「それで・・・明日ガイドをしてくれる人が・・・ホラあのひとです」

 指差す向こうには、「いかにもラテン」といった口ヒゲをたくわえた男が、大きな身振りで爆笑している。

 「おぉ・・・あのおっさんか」

 「呼んできますか?」

 「是非!」

 やって来たのが、マリーノだ。やけに明るい。そりゃそうだ。かなり飲んでやがる。

 「じゃじゃじゃじゃぁ、さっそく明日のお話し聞きましょう・・・」

 あいさつもそこそこに、まずは気になる明日のケツァールの話を・・・と思っていると、おっさんは開口一番、

 「さぁ!外へ出ようじゃないか!」

 なんてことを言う。

 「外・・・?なにしに行くのよ」

 「ケツァールいるのか?」

 「いえ・・・なんか、月がきれいだから外へ出て見なさいって言ってます」

 「月?月・・・見ろってかい?」

 「さぁさぁ!みんなぁ!月がきれいだぜ!」

 マリーノは、ビール片手に、食堂にいる全員に呼びかけている。

 「おいおい・・・なんだい?なんだい?」

 マリーノは、我々の背中を押して、ドアの所までやって来る。すると、はたと立ち止まり、なにやら清水くんに話かけ、そののちひとりで大爆笑してやがる。

 「なんだ?なんだ?おっさん、今なんつったの?」

 「いや、なんか冗談を・・・」

 「なんだって?」

 「キミたちは月を見るチケットを持ってるかい?だって・・・」

 「なーに言ってやがんだ!おっさん!くだらねぇこと言ってねぇで、早くケツァールの話聞かせろ!」

 アメリカ文化圏特有の「んなもんで笑えねぇって」ジョークを浴びせかけられた我々は、しかし、10分ほど外で月を眺めるハメになってしまった。

 「なんだよ・・・さしてきれいな月でもねぇじゃんか」

 「藤村くん・・・彼は、明日の話をしたくないんじゃないか?」

 「・・・なるほど」

 我々に、大きな不安がよぎる。

 「これは、ますますおっさんにキチッと話を聞かないといけませんなぁ・・・」

 やがて、無意味な月見も終わり、全員食堂へと戻る。

 「よーし!おっさん・・・」

 我々は、やや臨戦体制で、いきなり核心の質問をぶつける。

 「明日、ケツァールは見れるんですかって、セニョールに聞いてみて下さい」

 4人が固唾を飲んで見守る中、錦織さんは、流暢なスペイン語で話を始める。「彼らは、日本からケツァールを撮るために来てるんです!」みたいなことを熱弁しているようだ。

 すると・・・

 「100%見れます!と言っています!」

 「おぉー!ホントですかぁ!」

 我々の予想とは裏腹に、セニョールは自信満々。カメラに向かってキッパリと言い放つ。そのあとはもう、全員とガッチリ握手だ。

 「オー!セニョール!ベリーグー!」

 おっさん呼ばわりしてたくせに、もう見ちゃったような喜びようだ。

 やがて、セニョールはカメラ目線で「アディオス!」かなんか言い残して去って行った。

 「おぉぅ。かっこいいじゃないかぁ、マリーノォ」

 「すごいねぇ、自信たっぷりだったねぇ・・・」

 
 「で、明日はどこのポイントに行くって言ってました?やっぱ、山の上まで歩くんですか?」

 ひとしきり落ち着いたところで、錦織さんに聞いてみる。

 「なんか、車で近くの農場へ行くと言ってました」

 「農場・・・?」

 「えぇ、プライベートな農場の敷地内にポイントがあるそうです」

 「ほぉー・・・どなたかの私有地に・・・」

 すると大泉さんが、ハタと気づいたような口ぶりで言い放つ。 
 

 「・・・飼ってんじゃないだろうね」

 
 「アハハハ!いやいや、そんなことはないでしょうけど・・・」

 「オレやだよ。農場主がケツァールを肩にのっけて、グッドモーニング!なんつって出てきたら」

 「いや大丈夫ですよ」

 「そうですかぁ?どうもヒゲはえてるヤツは信用できねぇんだよなぁ・・・」

 

 6時20分。

 「とりあえずここで待とう」

 口ひげのマリーノは、昨夜とはうってかわって真剣な表情で、静かに言った。

 「カメラ、セッティングするか」

 我々もどこかヒソヒソ声になって、レンズを取り出す。

 やがて、マリーノは今来た道を引き返し、注意深くあたりを見回しながら、角を曲がって行った。

 「マリーノ、探しに行った・・・」

 みんな、マリーノが消えた方向をじっと見ている。

 妙な緊張感。

 「もしかしたらケツァールが現れる」という状況ではない。
 
 「たぶん、ケツァールは現れる」

 それが、1分後なのか、30分後なのか、その瞬間を待ち構えている緊張感だ。

 誰もしゃべらない。じっと見ている。

 5分たったか、たたないか・・・。

 「あっ。戻ってきた・・・」

 マリーノが、双眼鏡片手に姿を現した。

 その動きをじっと見る。表情は、変わっていない。

 「いないか・・・」

 するとマリーノは指を1本上げる。

 「1匹いるってか!」

 次の瞬間だ。全員の目が一点に集中した。

 
 なにかヒラヒラと飛んでくるものが、あった。

 ほんとに、ヒラヒラと、鳥なんだけど蝶々みたいな。

 「あっ!あっ!」

 すごい色。緑が見える。赤が見える。一番めだつのは白。そいつが、ヒラヒラと。

 「あぁぁ!あぁぁ・・・」

 なにを言っていいんだかわかんない。

 「止まった!」

 ようやく出た言葉だ。

 「あれは、火の鳥だ・・・」

 ほんとうに、実物のケツァールは、なんだろう、やっぱり「火の鳥」だ。ピカピカじゃないけど、光は確かに出ていたような気がする。

 しかし、手塚先生の描く「火の鳥」は、顔が人間みたいな、あの手塚タッチの顔つきをしている。

 「あれは、まぁ漫画だから。」

 そう思っていたけれども、びっくりした。ほんとうに「あんな顔」してんだ。あれは「鳥の顔」じゃない。あんなに「表情」がある鳥はいない。

 ケツァールは、古代マヤ文明で「神の鳥」として崇められたというが、それは「キレイな羽色」のせいではなく、たぶん「あの顔」のせいだと思う。勝手な想像だけれど、古代の人々も「あのかわいい顔」にやられたんだと思う。

 「やるなぁマリーノ・・・」

 その時・・・「神の鳥」を目の前にして私は、ふと不謹慎な考えが浮かんでしまった。

 「あいつ・・・カゴから放したんじゃねぇの」

 「!・・・」

 「いっしょに来たもん・・・マリーノと・・・」

 
 なんて、悲しい男たちなのでしょうか。なんで、素直に喜べないのでしょうか。

 しかし・・・それもいたしかたあるまい。

 なにせ、はじめてのことでしたから。うまくいったのは。

 農場から戻る車中で、こんな会話がありました。

 「いやぁ、視聴者しらけちゃってんじゃないの?」

 「そうかぁ?」

 「あいつら、本当に見てやんの。そんなことおれたちゃ期待してねぇんだ!なんつってさぁ。いいからミスター飛ばせよ!って言ってるよ」

 「うるせぇって」

 「どうでしょうも変わったなぁ。昔のどうでしょうは良かったなぁなんつってさぁ」

 「なに言ってやがんだよ」

 悲しい男たちです。「成功」すると逆に不安になってしまう。

 しかし、あくまでも事実は事実。今回は、どうでしょうさん、ケツァールを見てしまいました。ご褒美として、ありがたく受け取っておきます。


 さて、「コスタリカ・大ケツァール展」は、人知れず開催され、あっという間に終了しました。

 はじめっから開催するつもりはございませんでした。

 私は、どうしても「ニュース映像」を作りたかったんです。

 期待していた方には、申し訳ありませんが、「大ケツァール展」を見た者として言っておきます。

 「ケツァールの写真は、たしかに素晴らしい!でも、あの写真展は、つまんないです」

 
 せいぜい「ポストカード」でお楽しみください。

 そして!そして!来週からは「超大型新企画」の登場です。

 来週は当然企画発表から始まりますが、言っておきます。

 「来週の企画発表を見ないと、2001年後半のどうでしょうには、ついてこれません」

 「超大型」の意味するところは、いくつもの要素があります。

 来週、ぜひご覧ください!

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