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この小さな島には、およそ300種の植物が咲きます。その大半が高山植物です。
絶滅の危機にあるレブンアツモリソウなど、この島だけの固有の花々が、人々の暮らしの中に咲きます。花の小宇宙とレブンアツモリソウを巡る物語に光を当てます。

写真:花の浮島・礼文島
花の浮島・礼文島
 「レプンシリ」アイヌ語の“沖の島”が語源です。利尻と礼文の間はわずか8キロ。姉妹のような島ですが、島の誕生は礼文の方が遥かに古く、植生にも大きな違いがあります。高山植物は利尻では山の頂上付近にしか見られませんが、礼文島では海抜ゼロメートルから咲いています。その数約300種。寒地系の希少種レブンアツモリソウは、サハリンなどの北方がルーツと考えられています。 独特の花弁からは、遥か遠く氷河期の香りがしのばれます。

杣田 美野里(そまた みのり)
 1955年東京都八王子市生まれ。礼文島在住の植物写真家・エッセイスト。平成4年、夫とともに花の浮島・礼文の高山植物の花々に導かれ移住する。以来島の隅々まで歩き、野の花々をはじめ島の人々の暮らしを写真集、エッセイなどに発表する一方、ボランティアで花の保護活動に力を入れている。

写真:レブンアツモリソウ
レブンアツモリソウ
 杣田さんの一番の気がかりは、島のシンボルで絶滅の危機にある希少固有種のレブンアツモリソウだといいます。礼文にだけ咲き、淡黄色の丸い袋状の可憐な花を咲かせるラン科の花です。開発で数を減らしたことが花の希少価値をさらに高めたために盗掘が相次ぎ、いま絶滅の危機にさらされているのです。
 現在レブンアツモリソウは、自生地の保護区で厳重に管理されています。「昔のように原野に復活させ、野生の誇りを取り戻したい。また花を愛する文化も育てたい。」杣田さんは、レブンアツモリソウが咲く時期には盗掘防止のために、監視員のいない朝と夕方ボランティアでパトロール活動を続けています。

 礼文に咲く高山植物は、シベリアのツンドラ地帯がルーツとされています。氷河期、大陸とつながっていた頃に南下してきた北方寒地植物です。サハリンにはレブンアツモリソウはないのでしょうか?2001年6月、杣田さんは礼文の北80キロの近さにあるサハリン州に渡りました。サハリンに咲く北方寒地植物との花の系譜、繋がりを求めて・・・。

 残念ながらレブンアツモリソウには出会えませんでしたが、赤い花をつけたアツモリソウがそこここに咲いていました。「感動です。昔の礼文の原風景を見た気がします」と杣田さん。赤いアツモリソウも、礼文では幻の花となりつつあるのです。サハリンに出向いたことにより、花の浮島・礼文の貴重性を一層感じたといいます。杣田さんのレブンアツモリソウ復活という夢はさらに広がります。

写真:チシマフウロウ
チシマフウロウ
 
写真:エゾスカシユリ
エゾスカシユリ
写真:ハクサンイチゲ
ハクサンイナゲ
写真:レブンキンバイ
レブンキンバイ

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