2011年04月08日(金)
夢と現実と、生きる。
「涙も声も出なかった」と、少年は言った。
落ち着いた口調でぽつりとあの日のことを語ってくれた。
2011年3月11日。東日本大震災。
津波で全壊した自分の家
通っていた学校
ついさっきまで当たり前にあったものが、ない。
まるで夢のような現実を目の当たりにして、
少年は涙も声も出なかったという。
そんな辛い状況の中でも、夢をおいかける気持ちは失わなかった。
少年は、この春、故郷・岩手県陸前高田市から、
一人江別の高校に入学した。
なぜ、故郷を離れて北海道に来たのか。
それは、父と一緒に地元・岩手で酪農をやるという
ずーっと抱き続けてきた夢を現実にするため。
そのために酪農を学べる学科に入学した。
夢を語る声は周りの喧騒にかきけされそうなくらい小さかったけれど、
真っすぐで力強い目をしていた。
その横で、少年と離れるお母さんは、
「私たちも大変な状況だけど、子どもから逆に元気をもらいました」
と、涙をこらえて、瞬きせずに少年を見ていた。
まだ余震が続く中、
大切な家族
学校の仲間
みんなの応援を背中にしょって、
少年は、新たな一歩を踏み出している。
なんだか、眩しい。
がんばって。
がんばって。
これは、取材で出会った高校生の、″リアル″な物語。