2015年07月07日(火)
紡
小津安二郎監督の映画「麦秋」を、久々に見返しました。
麦秋、という言葉の季語は、秋ではなく夏。
麦の収穫期、ちょうど今くらいの時期を指す言葉です。
そんな初夏の陽気の中、展開していく物語 ―
モノクロで、物語に起伏があるわけではなく、
セリフも間も、ゆったり、たっぷり。
どこか、人間の"孤独感" "虚無感"のようなものが渦巻いています。
学生時代は、その単調さを、
正直、あまり理解できませんでした。
でも、今、改めて観てみると、
日常の風景が、何とも美しく、愛おしく感じられたんです。
ちゃぶ台を囲んでの家族団らん。
ご飯のおかわりをお茶碗一杯によそって食べ、
食後に、急須でお茶を入れる、その仕草。
着物を着た20代の娘さんが、
畳の部屋で、洗濯物をたたむ、その佇まい。
ふすまをそっとあけて、ひそひそ話をする、そのはにかんだ表情。
何げないシーンが、体いっぱいに染み入ってくるかのようでした。
あぁ、日本人で良かった、と。
「丁寧に日々の生活を紡ぐことの積み重ね、それが人生なのだ」
大げさかもしれないけれど、こんな風に感じたんです。
そこで、影響されやすいわたしは、
いつもより"きちんと"暮らすことを心がけてみました。
といっても、特別なことはなにもしません。
天気の良い日に、布団を時間をかけて干してみたり、
それから、自炊の回数も増やしました。
オムライス
お肉&野菜蒸し
トマトカレー
残った食材で野菜炒め
ワンプレートの簡単料理ばかりで、
これっぽっちも "和" でないのは、ご愛嬌 ^^;
自己満足かもしれませんが、
やっぱり、ほんの少し手間ひまかけてご飯をつくるだけでも
気持ちがすーっとしていくのが分かります。
それに、きれいごとではなく、
ひとつひとつのことを噛みしめてみると、
自然と、周りへの感謝の気持ちも生まれやすくなる気がするんです。
ついつい時間に追われる生活をしがちですが、
少しばかり歩をゆるめてみることも大事なのかな、と
今は、しみじみ感じています。