2018年11月02日(金)
凪
" お点前、頂戴いたします "
そよ風の音が輪郭をもってはっきり聞こえるほど
静寂に包まれた、とある喫茶店にて。
掛け軸にも・・・・・・
同じく、柿の絵が。
季節の豊かさを感じますね。
茶道の世界では、このように
掛け軸に描かれた絵や文字で
亭主のおもてなしの心を表わします。
代表的なのは "日日是好日(にちにちこれこうじつ) "
色んな解釈があると思いますが、
良い日も悪い日も、今が大事、
だから、その日その日をちゃんと暮らすという、
人間としての本質的に大切なことを
表現しているように、私は思います。
この言葉がタイトルの映画を、観てきました。
ポスターも、掛け軸みたいです。
黒木華さん演じる主人公が
将来への一抹の不安を感じる中で
悩みながら、もがきながら
茶道を通して成長していく姿が描かれています。
凪のように、静かで穏やかな空気が流れていて、
こう、じっくりと、かみしめたくなるような作品です。
黒木さんに茶道を教える先生役に、樹木希林さん。
お辞儀の仕方ひとつみても、すごい。。。
丁寧な暮らしを感じるような佇まいです。
畳の上で、一見
同じことをしているようでも、
年月をかけながら
目に見えるものと、見えないものがあり、
見えてくるものもある。
ということを教えてくれます。
先日、ある映画監督と話をした時
樹木希林さんの話に及びました。
撮影現場での樹木さんの様子をこう語ります。
"本番での集中力が、とにかく凄まじかった
生き方が、すべで芝居に出ている "
樹木さんの、かっこいい生き方の中には
きっと凪のような心持ちもあって、
私はそれを、映画から感じ取ったのかもしれません。
私自身、茶道をたしなんでいた時期があり
もともと原作のエッセイが大好きでした。
会社の同期が、もう何年も前にくれたんです。
その本の著者から、お便りを頂いたことがあります。
ブルーブラックの万年筆で書いたような濃淡のある筆致
流麗な文字がしたためられていました。
ああ、こんな風に、いつか
柔らかい気持ちを人に
届けることができるような女性になりたいと
読み返す度に思います。
そう、"凪" みたいに。