now onair

NEXT

めぐみ横丁

2019年02月15日(金)

vermeer11_R.jpg
                 牛乳を注ぐ女 (※絵葉書より)

使い込まれた台所には、窓から柔らかな光が入り、
家事をする女性が、すーっと一筋、ミルクを注ぎ込んでいます。
"光の魔術師" と呼ばれるオランダ出身の画家、
ヨハネス・フェルメールの作品です。

先日、国内の美術館でホンモノを観て、思わず息を飲みました。
こ、神々しい。何たる磁力......!
圧倒されました。吸い込まれました。
言うなれば、描かれているのは
牛乳を使ってミルク粥をつくる、という
ただそれだけの場面なんですが、
これほどまでにも魅惑的な絵になるなんて。
しばらく茫然と立ち尽くしてしまいました。

ひときわ美しい青の色彩は
" フェルメールブルー" と言われていて、
とてつもなく高価だったという原料の"ラピスラズリ"を
これでもか!というくらいふんだんに使っているそうです。

画家が経済的にひっ迫しても
なお使い続けたこの"青"が印象的な作品といえば、
コレ、ではないでしょうか。
フェルメールの"名刺がわり"といえるような一枚。

vermeer22_R.jpg
                真珠の耳飾りの少女 (※絵葉書より)

青いターバンを巻いたこの少女に一目会いたい!と、 
2012年夏に来日した際も、 大勢の人が集まりました。
炎天下の中、大行列。会場に入るまで屋外で2時間近く (!)
さらにこの絵の前で15分ほど待って、いよいよご対面です。

絵の中の少女と目があった時、ドキっとしました。
なんだか、観てはいけない表情を見てしまった気がして。
かと思えば、逆に、潤んだまなざしで
こちらの心を見透かされている気持ちにもなるという 
不思議な感覚になりました。

あまりにも混雑していて
わずかな時間しか対話できなかったけれど、
あの少女の、こわく的な輝きは、鮮烈に記憶されています。

フェルメールの絵画は、35点しか現存していないそうです。
モチーフには、手紙を書いたり、楽器を奏でている女性。
日常の一コマが鮮やかに切り取られています。

普段の何気ない瞬間こそ、美しい。 
数少ない作品を通して
そんなことを伝えたかったのかもしれませんね。