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めぐみ横丁

2019年04月18日(木)


アナウンサーの仕事は
"本の装丁みたいだな" 
って、わたしは思います。

本屋さんに行って、手にとった本を
眺め、手にし、パラパラっとめくっただけで
主役である"物語"を読んでみたい!という
想いに駆られること、ありませんか?

本のデザインも、表紙も、紙質も、
文字のフォントも、行間も、余白も、
目次の書き方も、ぜ~んぶ大事。
奇をてらう必要はないけれど
何かひっかかる、というような。
読み終わってからも、
"この本らしさ"が滲んでいるな"と
強く思わせる、本の装丁。

アナウンサーの仕事で
"物語"にあたるのが、"情報" 。
ジャンルは問わず、
伝えたい"情報"に興味を持ってもらえるよう
正確に、そして、
時には彩りや笑い添えて、伝える。
人の想いを、言葉などで、表現する。

こういった役割が "本の装丁" に通底するな~と。

なぜ、突然、こんな話をしたかって?
物語もさることながら、ステキな装丁の本を手にしたから。

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             吉田修一さん著『国宝 上 青春篇』 

そこはかとなく、重厚感が漂っていますよね。
表紙は、少しザラザラっとした質感です。

主人公は、2人の歌舞伎役者。
友人でもあり、ライバルでもある。
挫折、絶望、裏切り、歓喜―
運命や環境に翻弄されながらも、 
成長し、芸の"高み"を目指していく物語で、
2人の人生が、濃密に、描かれています。 

実際に作者の吉田さんが
数年間、歌舞伎の舞台裏に潜入、
役者さんの息づかいを間近に感じながら書いた作品で、
劇場の描写など細部まで表現が緻密です。

この本を手にし、ほどなくして心が動きました。
早く読んでみたい!と。
で、実際読んでみると、
登場人物の心のうねりや、ほとばしる情熱、
気高さ、少しばかりねじれた感情 ― 
こういった主人公の内面や、物語の世界観が
表紙を含めて、全体の"装丁"でも表現されているんだな、と
すごく感じたんです。( 気になった方はお手にとってご確認を ^^)

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                しおりの紐の色も、赤。 

『国宝』の装丁みたいな、
丁寧で、魅力的で、彩りある仕事の仕方をしていきたい。
こう強く思った、アナウンサー生活13年目の春。