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めぐみ横丁

2020年06月18日(木)

悩 

ど、どうしよう・・・
落語の高座にあがることが決まるたびに 
頭を悩ませるのが、演目をどうするか。 
できうる限りの想像をしながら選んでいきます。
季節感は? 客層は? トリを務める師匠への流れは大丈夫?
自分の声や雰囲気に合う噺なのか? etc. 

7月の第4回HTB寄席では、 
私、南平亭恵朝、冒険します。攻めます。
披露するのは、古典落語『死神』です。
えっ、ホントに!?と思ったアナタは、きっと落語がお好きですね。
噺家さんによっては1時間にもなる大ネタ。
さらには "笑い" がとりわけ少ない怪談噺です。 
色んな師匠方の『死神』を聴き込んで、私は30分ほどにしようと、
そぎ落としたり、表現をアレンジするなどして、仕立てていきます。 
著作権がなく、懐の深い"落語"だからできることです。

 

HTB寄席1_R.jpg

あれは数年前の夏の日の夜 ―
札幌で、柳家喬太郎 (やなぎや・きょうたろう) 師匠の
『死神』を聴いてぶるぶるっと震えあがり、その凄みを全身で体感。
とてつもなくスゴイものを観てしまったと、しばらく放心状態に。 

ハードルがものすごく高いのは分かっているけれど 
身の程知らずなことも重々承知しているけれど  
"いつかこの噺を高座でかけてみたい"という気持ちが  
むくむっく芽生え、いつしかどんどん膨れ上がっていったんです。  

その後、何かに導かれるかのように
『死神』の作者・初代三遊亭圓朝(えんちょう) 師匠の
お墓参りをし、所有していたという幽霊画を長いこと眺め、
物語の質感や背景を思いめぐらせました。

 

HTB寄席2_R.jpg

去年の暮れ、第4回HTB寄席への出演の話をもらった時 
私が挑んで良い演目なのかどうか、ダメ元で
トリを務める小圓鏡 (こえんきょう) 師匠に相談したところ、
"やりたいと心が動くものをやった方が良い"と
強く背中を押してくださいました。


その言葉に感謝しながら稽古を始めましたが、
少しずつ自分の中に落とし込み 
わずかに光がさしてきたと感じた矢先、
世の中が激変しました。

やめようかどうか、ものすごく悩みました。
『死神』を高座でかけることを。 
命に関わる感染症が蔓延する中で重厚感のあるこの噺をやることは
プロではない私にはできないと思ったんです。 
本当に素晴らしい噺だし、フィクションだし、
良いのではないか?と自分の胸に幾度となく問いかけました。
じゃあ違う演目を探さなきゃ、と、
候補をいくつか考えたりもしました。

眠れないくらい悩んで、色んな方に相談した結果。
『死神』を披露することに、決めました。 


噺の捉え方や表現方法を大きく変えて。
登場する"死神"の描写を、重々しくなく 
あえてライトに、さらりと演じることにしました。
まだ模索段階ではあるんですけどね。  

色んなご意見があるかもしれませんが、
やります。死神。
高くて難しいハードルを、超えねば。 
あとは、ただ稽古あるのみです。 

HTB寄席3_R.jpg

でっ、頭がぷしゅしゅしゅ~って
煮詰まったら、読書でちょっくら休憩。


今読んでいるこちらの本は、三島由紀夫著『夏子の冒険』 

第4回HTB寄席が行われる "函館" が舞台です。
ライトな文体で読みやすいですよ^^