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番組審議会だより


 北海道テレビ放送では、番組審議会委員10名の方による放送番組審議会を設け、毎月1回(8月と12月を除く)審議会を開催して、放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
番組審議会でのご意見は,番組モニターの方のご意見とともに、2ヶ月に一度第4日曜午前5:05から放送の「あなたとHTB」でもご紹介していますのでどうぞご覧ください。

第485回北海道テレビ放送番組審議会概要

日時

2016年6月30日(木)
15:00~17:00

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審議テーマ

テレメンタリー2016「ママの悲鳴 少子化対策〝逆行〟制度」

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出席委員
平本健太 委員長
作間豪昭 副委員長
渡辺淳也 委員
福津京子 委員
高橋留智亜 委員
森田良平 委員
古郡宏章 委員
遠藤香織 委員
喜多洋子 委員
鳥居マグロンヌ 委員(レポート参加)
会社側出席者
代表取締役社長 樋泉 実
常務取締役 國本昌秀
取締役 森山二朗
役員待遇コンテンツ事業室長 川筋雅文
報道情報局長 東 直樹
編成局長 福屋 渉
CSR広報室長 岡 仁子
番組担当ディレクター 皆方 等
番組審議会事務局長 斎藤 龍

【会社報告】

  • 役員人事について
  • 第53回ギャラクシー賞報道活動部門優秀賞受賞
  • HTBオンデマンド 加入者5万人突破
  • 情報カメラのライブ映像を台湾の観光情報サイトに配信
  • 「巷のonちゃん」放送開始

【審議対象番組についての委員意見要旨】

<評価点>

●社会や政治の問題を究明し、改善策につながるというジャーナリズムのあり方は大変重要であり、報道の影響力は大きい。テレビ局として粘り強く少子化対策の問題点や矛盾点を追及し、影響力を良い方向に発揮しており、大変満足度の高い作品。

●父親として、また子供を預けて働く社員を抱える経営者として興味深く拝見した。保育料の増額に直面して困惑する母親たち、そしてその家族に寄り添った丁寧な取材が光る。また、その一方で行政の後手に回った対応も浮き彫りにしており、制作者の問題意識の強さがよく現れていた。

●抗議文を渡す母親たちの表情をとらえた場面を無音で流すことで、切実な思いがより強く伝わった。秋元市長の発言を時系列で細かく刻み、市が対応を変化させてゆくさまを非常にわかりやすく表現していた。西野アナの厳しい表情から発せられる質問も鋭く切り込んでゆく印象が際立った。

●少子化対策は優先度の高い政策であるはずであるが、子育て支援の新制度によって、逆に保育料負担が増すケースが発生していること、必要な支援がなされていないこと、それどころか逆に負担が増していることなど、制作者側の問題意識はとても分かりやすく、視聴者の共感を得たと思う。

●家族に密着して、多子世帯の生活のたいへんさが細やかに描かれている。同時に大家族ならではの楽しさなども余すところなく伝わってきた。この家族と報道側との信頼関係も画面から感じられ、幅広い世代に訴える力があった。

●市長定例会見でのやり取りや市当局者への質問、会見を重ねるごとに変化していく回答などはドラマチックな構成で、取材側の意気込みとテーマ追求への粘り強い取組みが遺憾なく映し出されて迫力があった。行政側の戸惑いや困惑までが伝わってくるようで、改めてテレビは画面、画像の説得力がものをいうメディアであることに強い印象を受けた。

●新しい保育制度がいかに場当たり的で名ばかりのものかがよくわかり、憤りを感じた。子ども達と向き合い節約に努め丁寧に子育てしている鎌田さんの暮らしぶりを見た後、涙を流しながら抗議文を読み上げるシーンに共感し涙した。

●おかしいと感じたことは、声に上げることの大切さを感じると同時に、市民の声を受けて記者会見で鋭く切り込んでくれるメディアの力もないと切実な声もなかなか公にならない、行政に向き合ってもらえないということも改めて痛感した。

●幅広い年代が知るべき内容ながら、特に少子高齢化を憂う団塊の世代以上の方に一緒に見て、考えてほしいと感じたので、放送時間が土曜日の早朝というのもよかった。

●追跡取材により、行政を動かしたという実績、キャスト、スタッフ、関係者の情熱は本当にすばらしく、見る者を圧倒させた。かなり踏みいった取材内容はその撮影される側の本気さと撮影する側の熱意の表れであろう。そこが顕著に番組の秀でた点である。

●札幌市や内閣府を取材されたアナウンサーの方たちが、「具体的にお答えください」と迫るシーン、また突っ込んだ質問もされており、とても心強いと感じた。

●札幌市長のコメントが、対応を考えていないから、調査する必要がある、そして、保育料を還付しますと10月から11月の短期間に変化していく様子は報道番組としてメディアのよい影響力を感じ、大変すばらしいと思った。

●問題提起型のドキュメンタリーとして,非常にいい番組だった。見ている最中も,見終わってからも,「本当にこの実態は変えなければならない」という怒りに似た強い思いに駈られ、社会の不条理を見た思いがした。

●鎌田一家の日常の微笑ましい光景が多く挿入されていた。子どもが笑っているだけで、画面もそれを見ている視聴者の気持ちは明るくなる。行政への問題提起型のドキュメンタリーが時折持つ重苦しさ、行政を厳しく糾弾していく番組の持つスリリングさとはまたひと味異なった雰囲気がこの番組に視聴者の共感を呼び込み見やすくしていた。

●鎌田さんを初め、制度の変更によって期せずして保育料が値上がりになってしまった家庭の悲鳴が痛切に響く。子どもが3人以上いる家庭では保育料が値上げになっている一方で、1人だけの家庭では逆に値下げになるなど、計算方法がわかりづらく、不公平な点も不可思議だ。何より、これらの制度変更が子ども・子育て支援新制度のすくすくジャパン!として行われているらしいことにシニカルな怒りが湧いてきた。

<要望・改善点>

●取材対象を鎌田さんに絞り、加えて、この政策にメリットは全くないのか、自治体差額負担はどれほどなのかについて触れた方がよかったのではないか。

●厚生労働省が発表した2015年の北海道の合計特殊出生率1.29など、少子化に関するデータをもっと盛り込んでいれば、ここまで国や自治体の本腰が入っていない現状に対する違和感がさらに増したのではないか。

●直接的に困っている家庭の声はもちろんだが、子どもを預けて働こうとしている母親たちを雇用する側の声が取材してほしかった。保育園が増えたにもかかわらず、待機児童問題が解消されないのは、これから生産労働人口が減少していく中で労働力を確保するために雇用する人材の幅を企業が広げたからにほかならない。この問題は、働く母親だけの問題ではなく、企業の人材確保の問題でもある。

●この問題の発生原因についてわかりにくい部分が残った。制度としてどう評価されるか、行政の過失なのか、あるいは、制度の運用に係る解釈の違いなのか、図解またはナレーションで解説が必要だった。

●終盤、制度的には問題ないとする国の担当者のコメントが画像なしで紹介されたが、正式回答なのか、個人的な感想なのか、判然としない。エンディングとしてその解釈を視聴者に委ねた形のように思われるが、少々後味の悪い印象が残った。

●全国20の政令指定都市の中で対策を立てていなかったのはおよそ半数であり、その中に札幌が入っているのはなぜか。対策を立てていたほかの都市と札幌はどこがどう違っていたのか。札幌ならではの問題があるのなら、そこにも切り込んでほしいと感じた。

●多子世帯というマイナーなところに焦点を当て過ぎて、世の中の一部の人が保育料の平均値や仕組みを知らない中で正確に問題を把握できるのかという点が気になった。もっと困っているような世帯、保育料金免除の世帯もあり、料金改定にどれだけ共感できるかのポイントとして、多子世帯だけに不公平が理解できないのでは危惧する。

 

●保育料の値上げに見舞われた家庭の家計の苦しさ細かく伝わってくるが、なぜ保育料が上がったのか、国の制度の見直しの内容は何なのか、何を根拠に算定されているのか、この問題の根幹にかかわる説明が圧倒的に不足している。

●3人以上は全て2人分で計算されることになったといった丸めた説明ではなく、経過措置として残っていた年少扶養控除と保育料との関係、子ども手当との関係にも触れる必要があった。問題を十分説明した上でないと、制度変更した国に責任があるのか、具体的に保育料の軽減措置などを適用する立場の札幌市に問題があるのか、その判断基準が明確に持てない。

●制度や札幌市の対応を追及するのは、報道としてとても得意な分野であろうが、子どもを社会で育てるという認識を広めるという啓発的なところとの両輪であってほしかった。根本的な問題は提起できていない。

●子ども・子育て新制度の学習会ではこの問題は予想され、対応策を考えてほしいという提言書を子育て支援団体が提出していた。お母さんたちだけでなく、そんな子育て支援団体のコメントもあればよかった。

●少子化問題とは何なのかという問題の根幹に触れていないことが残念。大切なことを視聴者に説明しないまま、そして、子育て支援の新制度の目的や内容を説明しないまま、保育料が値上がりしてしまっている多子世帯があったという問題点だけをクローズアップしてしまっている。もっとも大切な問題提起が欠落している。

●30分番組としては、ママたちの姿を報道することで、視聴者一人一人に勇気を持って行動しようと人々に訴える番組にするか、マスコミ報道ならではの力を発揮し、国や行政をとことん追及するかのどちらかに焦点を当てたほうがよかったのではないか。

●そもそもの責任の所在はどこにあるのかについてはほとんど説明がなされていない。子育てにかかわっていない視聴者は、今回の保育料金値上げの切実さを感じることはできても、自分の問題としてこの事態を捉えたくとも、そのための情報や材料が絶対的に不足しているため、考えること、判断することが困難だった。

●父親のほうはどう考えているのかという視点があってもよかった。今回のような取り上げ方だと、子育ては専らママがするものというように見えてしまうおそれがある。

<提言>

●このような身近な問題に関する問題提起型報道は、市民が政治を考える契機になる。このような報道を積み重ねによって、市民の政治に対する意識の高まりに貢献するのも報道機関の重要な役割。また、今回の番組は、不十分ながらも、市民の声が政治を変え得るという成功例を市民に提示したという意味でも意義深い。今後も、ドキュメンタリーとして、また「イチオシ!」のような情報番組の中でも繰り返し積み重ねられ、家庭にも届けられることを一市民として期待している。

※次回の放送番組審議会は7月28日(木)開催予定です。