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HTB 北海道テレビ放送 会社案内

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番組審議会だより


 北海道テレビ放送では、番組審議会委員10名の方による放送番組審議会を設け、毎月1回(8月と12月を除く)審議会を開催して、放送番組の内容をはじめ、放送に関する全般的な問題についてご意見を伺い、番組制作の参考にさせていただいております。
番組審議会でのご意見は,番組モニターの方のご意見とともに、2ヶ月に一度第4日曜午前5:05から放送の「あなたとHTB」でもご紹介していますのでどうぞご覧ください。

第488回北海道テレビ放送番組審議会概要

日時

2016年10月27日(木)
15:00~16:40

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審議番組

テレメンタリー2016「野生のいのち 死の連鎖」

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出席委員
平本健太 委員長
作間豪昭 副委員長
森田良平 委員
古郡宏章 委員
遠藤香織 委員
喜多洋子 委員
鳥居マグロンヌ 委員
深江園子 委員
斎藤 歩 委員
会社側出席者
代表取締役社長 樋泉 実
常務取締役 國本昌秀
取締役 森山二朗
役員待遇コンテンツ事業室長 川筋雅文
報道情報局長 東 直樹
編成局長 福屋 渉
CSR広報室長 岡 仁子
番組担当プロデューサー 渡辺 学
番組担当ディレクター 雑崎 徹
番組審議会事務局長 斎藤 龍

【会社報告】

  • 深江園子様、斎藤 歩様に委員委嘱
  • 日本シリーズの中継について
  • HTBノンフィクション「おはよう。いただきます。さようなら。~弁華別小最後の一年~」
    2016年北日本制作者フォーラムinあおもり、北海道地区優秀賞受賞
  • SMG上海メディアグループとの連携強化
  • 国内放送局初、イクボス宣言

【審議番組についての委員意見要旨】

<評価点>

●タイトルは、番組の中身をうまく表現している。映像も美しく、列車と並走するエゾシカの大群やよちよち歩きのタンチョウのひな、オオワシやオジロワシの雄々しい姿など、テレビの強みが存分に生かされていた。

●非常にしっかりした構成の番組。鉄分のサプリを使った実験も非常に興味深いものだった。まるで立証しようとする事案に向けて、精査に証拠を積み上げていく司法手続の流れを見ているかのような鮮やかさを感じた。

●番組のネタに新規性があり、こんなところによく着眼できたなという点もすばらしく、理系女子、動物好きの心をとてもくすぐるものだった。特に、シカ肉に引き寄せられ、鷲まで列車に引かれ、死の連鎖をするというテーマ性、現場での検証の仕方など、見応え十分。

●テーマの性格上、動物のさまざまな死が映し出されるが、過度な演出や効果がなかったこともあって、作品からは不思議と悲惨、無惨という感じは受けなかった。生き物の生死を扱った作品としては、独自のカラーの個性的な仕上がりのよい作品だった。

●鉄道周辺におけるウミワシの死の原因を突きとめるべく取材をした結果、エゾシカが鉄分を補うために線路をなめることまで突きとめ、単純な原因ではないこと、多様で複雑な生態系や食物連鎖、人間の生活と自然生物の交差点における問題、それらのロジックを実にわかり易く展開していた。

●冒頭、保護されたワシが七転八倒する姿がいきなり衝撃的で、番組にぐっと引き込まれた。また、車窓から見えるエゾシカの数の多さに、ここまでエゾシカがふえているのかと新鮮な驚きを感じた。

●シカ誘引用の鉄タブレットを開発した資材会社の談話が印象的で、オオワシの事故とこの事実の二つを知っただけでも見てよかったと感じ、誰かに話したくなる内容だった。

●特に記憶に残った映像は、知床の観光船上のカメラの放列がワシを追って一斉に動く、一種壮観なさまを下方から映した珍しい場面。そして、道東の雪の原野を疾走するおびただしいシカの群れの映像は圧倒的な躍動感と迫力にあふれた日本離れしたシーンだった。

●ナレーションやBGMの落ちついたトーンも番組とうまくマッチしていて、全体として大変クオリティーの高い番組だった。

●若い髙橋ひかるさんのナレーションがもっと問題を身近に感じようという番組のメッセージにとっては効果的だった。

●オープニング「どうしてなんでしょう?」という問いかけの直後に、意匠が施された「野生のいのち 死の連鎖」というタイトルロゴが示され、ごく自然に、テーマに興味を引きつけられた。

●今回はタイトルのデザインが特に凝っている。「生きる」と「死ぬ」の字が目立ち、きれいだけではなく、番組の内容に合ったデザインだった。

<要望・改善点>

◆運び込まれたオオワシの死骸のうち、幾つかのきれいな個体は鉛中毒によって死んだ個体だったのではないか。もしそうだとすると、鉛中毒のことにほとんど触れずに死亡原因を列車との衝突だけで紹介するのは、不十分と感じた。

◆オオワシの事故死急増が事実であっても、野生動物が鉄分を求めることやオオワシが魚も動物も食べることがふえているかどうかはわからず、行動自体は異常とは言えない。その検証をおきざりにして話題が展開していきはしないかが気になった。

◆客観的なデータの比較がないため、急にウミワシの事故がふえたのかという数値のサイズがわからなかった。

◆企業がつくった人工的なサプリメントで、動物にとって副作用がないのだろうかと心配になった。そして、線路がない昔は、どんなもので、鉄分を摂取していたのかなと知りたくなった。

◆鉄分のサプリメントを森に置くことで、エゾシカが線路に出なくなるという一つの解決策はあるものの、そのことで次のアンバランスな連鎖を生む心配が生じた。

◆そもそもなぜシカがこれほど鉄分を欲しがるのかの科学的、動物学的な観点からの説明は欲しかった。

◆鉄分を含んだサプリメントが北海道で導入されていないのであれば、その理由がまだ有効性の検証段階だからなのか、コストの問題なのか、そのあたりの説明も簡単でいいからほしいところ。

◆オオワシが溺れている場面で、助けている漁師の方にアナウンサーが聞いている場面が唐突だった。誰が「良かったですね」と言っているのか分らなかった。

◆魚食性のワシが山のほうに行ったのは、むしろその後の映像で紹介される流氷の少なさにあるのではないか。そうすると、風蓮湖の氷下漁と雑魚を分け与えている漁師の姿は、この問題の原因との関係ではミスリードにならないかという点が気になった。

◆番組最後の「私たちにできることがきっとあるはずです」とのナレーションには、強い違和感がある。何か問題を視聴者に丸投げされてしまったような印象を受けた。少しでも具体的に私たちにできることが語られるべきであった。

<提言>

☆今後も取材者の驚きと探求心、そして、それを視聴者に伝えようという熱意に裏打ちされたドキュメンタリーを期待する。

☆本来、野生動物を保護するという観点では、エゾシカ、ワシ、ツル、そこに区別はないはずである。こうした視点が明示的に入ると、番組全体の説得力が増し、格調もぐっと高まるように思う。

※次回の放送番組審議会は11月24日(木)開催予定です。