―2014年放送―

2014年9月16日
「夫が残してくれたパン」 相馬吟子(48歳・会社員)=札幌市

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この日も仕事帰り、夕食の介助(かいじょ)のために、夫の入院する病院に寄りました。
スプーンなどが入ったかごの中に、バターロールが1個あるのを見つけ、
「食べ残したの? 私が食べてもいい?」と、夫に断って食べ始めました。
すると夫は、小さな、か細い、でも私にハッキリ聞こえる声で
「残しておいたんだ」と言いました。
え、私のために、と、本当にびっくりしました。

 夫は、若年性の進行性核上性麻痺(しんこうせい・かくじょうせい・まひ)
という病気で入院して、1年になります。
私は仕事と子育てをしながら、毎日、夫の病院に通っています。
 年明けから、だんだん調子を落とした夫は、食べられる量が少なくなりました。
食欲が出るかと思い、病院に頼んで、入院前と同じ、朝はパン食にしてもらいました。
うれしいことに、先月ぐらいから調子を取り戻し、会話もいくらかできるようになり、
食べられるようになってきた直後のできごとでした。
 その数日前、やはりパンが1個ありました。
袋にマジックで「あとでたべる」と看護師さんの字で書いてあったのですが、
もうすぐ夕食が出るので、夫に断り、私が食べました。
夫はきっと、それを見て、私はいつもおなかがすいていると考え、
朝食に2個出るパンのうちの1個を、取っておいてくれたのでしょう。

 夫の気持ちがうれしくて素直に「ありがとう」と口にしました。
涙が出そうになるのをこらえ、満面の笑みで。


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