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―2016年放送―

2016年10月04日
10月4日(火)放送「作文 」(2014/10/03 (金)掲載)
西窪瑞恵(にしくぼ・みずえ 当時57歳・自営業)=北広島市

10月4日(火)放送「作文 」(2014/10/03 (金)掲載) <br />西窪瑞恵(にしくぼ・みずえ 当時57歳・自営業)=北広島市

結婚式を控え新居に引っ越す娘が、不用品の詰まった段ボール箱を置いていった。やれやれと仕分けを始めて、ついでに娘の学校時代の物も思い切って整理してしまおうと作業に取りかかった。すると小学生の時の作文が出てきて、題名を見てハッとした。
「弟がいたから」。

 その頃、5歳下の脳性マヒの弟のことで同級生からの心ない言葉に、
「弟はかわいいよ!」と答えたと話してくれたことが一度だけあった。
やはり小さな心には重たかったか...。
作文にして気持ちを表に出すことで、少しは軽くなったかなと思いながら読み始めた。

 その作文で娘は、小学校が休みのたびに一緒に通った障がい児の通園施設で、園児の兄弟の赤ちゃんたちと遊んだり、自分も幼いながらにお世話させてもらえることがうれしくて、楽しくて、将来は保母さんになると決めたとある。弟がいたから夢を持つことができた、そして夢をくれた弟を大切にしたいと結んであった。

 少しイライラしながら始めた作業だったが、いつしか時が止まった。10歳の頃の娘がにっこりしてドアから顔をのぞかせた気がした。

 娘の仕事は保母さんではなく作業療法士へと変わったけれど、赤ちゃんから児童まで受け持って、みんなかわいい!と張り切って働いている。その職場で知り合った彼と結婚式を挙げる娘は、車いすの弟と手をつないでバージンロードを歩く。