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―2016年放送―

2016年10月18日
10月18日(火)放送「返信無用」(2015/08/23(日)掲載)
横山明美(よこやま・あけみ 81歳・主婦)=札幌市東区

10月18日(火)放送「返信無用」(2015/08/23(日)掲載)<br />横山明美(よこやま・あけみ 81歳・主婦)=札幌市東区

 1944年(昭和19年)、私は国民学校の5年生でした。学校や母たちの婦人会の世話で、戦地の兵隊さんへの慰問袋を作ることになり、半紙に書いた書道や、画用紙に桜の花びらを貼り遠景に山や家を描いた絵、また折り紙で鶴を数羽折り、かんざしや口紅まで付けたきれいな花嫁人形も作って入れたりしました。
 そして「私たち少国民も元気で頑張っております。兵隊さんへ」というようなことを書いた手紙も入れ、どんな人に渡るのかなと思っておりました。
 それから何カ月か過ぎて、きれいな文字でつづられたはがきが届きました。「多分この方は若い方ね」と母が話しておりましたが、軍の印や赤い判もついていました。「只今(ただいま)、南の方の国におります。明美さん、好(よ)い名前ですね。親孝行して、明るく生きて下さい。移動がありますので、『返信無用』です」とありました。
 私には返信無用の意味が分からず、父に聞きました。「お便りは欲しいけど、今の状態では、自分の所に届かないかもしれないので...」という事だと教えられ、悲しい思いをしました。
 たくさんの人が「返信無用」を戦地からもらったのかな。8月15日近くになると、あの方は無事帰ってこられたのかしらと思い出します。生きておられたら多分90歳は超した方でしょう。悲しい悲しい言葉、「返信無用」です。