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VHSに記録された思い出や歴史に「映像消失」の危機 磁気テープの2025年問題

1980年~90年代を中心に世界中で愛用されたVHS。
家族の映像などを収めた方も多いのではないでしょうか。
このVHSをはじめとする磁気テープの映像がいま消失の危機にあります。
「マグネティック・テープ・アラート」…磁気テープの2025年問題です。
ユネスコは6年前から、テープの経年劣化、再生機器が製造中止となっていることそれに伴う技術者の減少などにより、デジタル化を急がないと二度と映像と見ることができなくなる恐れがあると警告しています。

残された時間は、多くありません。

放送用の磁気テープのデジタル化を手がける、札幌市のダビングサービス会社。依頼された古いテープの中には、明らかに痛んでいるものもあるそうです。

■リレック鹿又達男会長:
「最近多いのは20年以上経っているとカビが生えて、カビによってはテープとテープがくっついちゃうことがある。そうするとテープが回らなくなる。回らなくなるのはまだいいけど、ある程度勢いで回ってるからそこから裂けちゃうことがある。裂けると縦にずーっと裂けちゃうんで結構長い時間の映像がだめになっちゃうそれはかなり注意しておかないと大変なんですね。」

デジタル化の作業ではテープの状態を入念にチェックしてからそれぞれの規格に対応した再生機器を使って映像をパソコンに取り込んでいきます。
今回は近所の住民に依頼された、幼稚園の発表会の様子が収められたVHSのデジタル化です。

■鹿又会長:
「これ私若いときに(依頼されて)撮った」
Qご自身で撮られたんですね。
「下手だなと思います。」

今回この会社にデジタル化の依頼があったことには理由があります。映像の撮影とともに生まれる著作権。許諾などがないとデジタル化を行うことはできません。今回の映像はこの会社が撮影していたので、問題なくデジタル化を行うことができました。

■鹿又会長:
「出来上がったものがどれだけ満足してくれるかなっていうのはかなりこちらの方としては心配してますけれども、後から良かったよって言ってもらったら本当に嬉しいですね。」

■鹿又会長:
「あ、どうも、出来上がりました。」

VHSのデジタル化を依頼した安藤福恵さん。VHSの2025年問題のニュースを見て急いで申し込みました。
VHSから無事、デジタル化された映像。
家族が集まって、過去の思い出とご対面です。

■姉(福恵さん):
「もう26、7年ですね。4、5歳のとき」
■妹(百世さん):
「ちょっと緊張なのと、恥ずかしさとどんな風に自分が映っているのかが分かんない」

家にビデオデッキはすでになく、長年見ることができなかった映像です。
まずは姉の福恵さんの「浦島太郎」から。

■妹:
「出てきた?」
■母:
「出てきた、後ろにいるよ」
■妹:
「姉ちゃん特に全力じゃん」
■姉:
「いやいや全力じゃない。周りも全力。でも映像きれいだよね」

続いていては妹の百世さんの「白雪姫」。

■妹:
「あっいた、あっははは」
■姉:
「ちゃんと言ってるじゃん」
■妹:
「そうなのさ。セリフを自分で覚えているとは思わなかった」
■母:
「(久しぶりに見て)懐かしいですよね。こんなんだったんだって4,5歳でこんな元気いっぱいで喋ってくれるんだなと思いましたね。」

デジタル化した映像の中には安藤さん一家が予想していなかった人も映っていました。

■姉:
「あ!これこれ!一番前にいる!」
■妹:
「本当だ!いたっ!」

6年前に他界した父親の孝一(こういち)さんが映っていたのです。

■母:
「頑張ってくれる人だったからね。意外に参加するの好きな人だったので、餅つきも出ていましたから」
■姉:
「こういうのも見つかるからやっぱりDVDにしておく方がいいなって思いました」

思い出の映像を無事にデジタル化することができた安藤さん一家。

しかし、たくさんの貴重な映像を前に、対応に苦慮している現場もあります。

北海道立図書館の北方資料室。北海道に関する様々な資料が集められていて、中にはVHSの映像資料も多数保管されています。

■北方資料室小川靖子室長:
「例えばアイヌの文化に関するものですとかいまはポピュラーになりましたけれどもYOSAKOIソーラン祭りの記録それからちょっと上の方にあるんですか北海道を舞台にしたドラマのシリーズなど幅広く収集してまいりました。」

戦前からバブル期までの北海道の貴重な映像資料。デジタル化はほとんど進んでいません。

■小川室長:
「なかなか映像関係権利等の問題もありまして、まずはそちらの調査が終わってからじゃないとデジタル化するかどうかという判断もございますので。状態についても1点1点確認しているわけではありませんので、当然劣化が始まっているものは優先度が高いかなと思います。」

著作権とテープ劣化の問題だけではありません。北方資料室に残されたVHSデッキは予備を含めて2台。
それ以外の規格のテープの再生機器もいくつかありますが、そもそもデジタル化するための機器が十分には確保されていません。

■小川室長:
「後世に引き継いでいく資料という風には認識しておりますので、それが私たちの代で失われることがないようしていきたい。」

北方資料室は今後、VHSに保存されている資料を精査してデジタル化を進めていきたいとしています。
家庭から公的機関まで幅広く普及したVHS。いま多くの思い出や歴史に、消失の危機が迫っています。

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