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「無念の想いは一生消えない」知床・観光船沈没裁判 桂田社長が法廷に 乗客家族の悲痛な思い 争点は?

12日、新千歳空港に姿を見せた知床遊覧船の桂田精一社長。

カメラマン:「あすから裁判が始まりますけれども?」
桂田社長:「・・・」

問いかけには応じませんでした。

これまで、乗客家族と正面から向き合ってこなかった桂田社長。家族と対峙する場は、法廷でした。

2022年4月23日。乗客乗員26人を乗せたまま、知床の海に沈んだ小型観光船「KAZU I」。20人の死亡が確認された一方で、6人の行方は今も分かっていません。

なぜ、事故は起きたのか。国の運輸安全委員会がまとめた調査報告書では、船前方のハッチのふたがきちんと閉まらず、海水が流れ込み、沈没に至ったと結論付けています。

「その責任は、運航会社と桂田社長にある」。乗客家族ら29人は、合わせておよそ15億円の損害賠償を求めて裁判を起こしました。

(訴状から)
「幾重にも厳重に定められている安全管理・運航管理上の義務について、ことごとく無視・軽視していた。本件事件は起こるべくして起きた事件と言わざるを得ない」。

法に基づく「運航管理者」として、安全を確保する義務があった桂田社長。原告側は、桂田社長の「出航判断」に、過失があったと主張しています。

当時、斜里町には強風波浪注意報が出され、運航基準を超える風や波が予想されていました。それにも関わらず、桂田社長は出航の中止を指示しなかったと主張しています。一方、被告側は、当日は海が荒れたら引き返す「条件付き運航」だったと説明。船長が、途中で引き返していれば、事故は「回避可能だった」と主張しています。

当時7歳の息子が行方不明・帯広市の男性(52):「今回の事件では、まだ誰も何の責任も取っていないので、やっと今回裁判が始まったなって」。

帯広市から裁判に参加する男性。当時7歳の息子は、今も行方不明のままです。原告団に加わるためには、「遺族」となる必要があり、男性は去年2月、戸籍上、息子を亡くなったものとする「認定死亡」を届け出ました。苦渋の決断の末、迎えた13日の裁判…。

帯広市の男性(52):「桂田社長に直接意見できる数少ない機会ですので、しっかりと直接意見したいですね。できれば、桂田社長自身からも話をしてほしい」。

須藤真之介記者:「桂田社長が今、札幌地裁に入っていきました」。

午後1時半に始まった第1回口頭弁論。桂田社長は、家族らに一礼をしてから着席。13日は、6人の乗客家族ら合わせて11人が意見陳述をしました。

帯広市の男性は、行方不明の当時7歳の息子を思い、こう語りました。

帯広市の男性:「船体が傾いて沈んでいく中で、言葉では言い表せないほどの恐怖を感じていたと思います。桂田社長は、乗客が感じたであろう恐怖や無念の気持ちをどう思っているのでしょうか?」

橳島優さんの家族が意見陳述
橳島優さんの家族が意見陳述

橳島優さん、当時34歳。千葉県から旅行に訪れ、事故に巻き込まれました。証言台に立った優さんの母親は、優しかった息子について語ると、桂田社長に呼び掛けました。

橳島優さんの母親:「桂田さん。息子は、船の安全を正すために、これからの人々の命を守るために生まれたのではありません。桂田さん。あなたが人命を第一に当たり前の仕事をしてくれていたらと、無念の想いは一生消えることはありません。私の大切な息子と多くの尊い命を奪い、息子が愛し大切にしてきた多くの人たちから平穏な日々と希望を奪ったことを真摯に受け止めてください」。

優さんの父親は、長年、航空会社で「運航管理者」を務めていた経験から、桂田社長の姿勢を強く非難しました。

橳島優さんの父親:「今回の船舶事故における設備や施設の不具合は、目を覆うばかりのずさんさでした。安全意識のかけらもない状態にあった被告や会社が人命を預かる商売をしていたかと思うと、怒りが込み上げてきます」。

争う姿勢を見せている、被告の桂田社長。今後の裁判の行方について、海の事故に詳しい弁護士は…。

海難事故に詳しい田川俊一弁護士:「運航管理者としては、航行の安全基準を順守する義務がある。出航を安易に許可したこと、ハッチカバーの不都合を見過ごしていたこと、これら2つについては桂田社長個人としても過失が認められるのではないかと思います。遺族感情含めて損害額の争いが争点になると思います」。

桂田社長がコメントを発表しました。(一部抜粋)

「ご遺族の皆さまの意見陳述の内容は大変重く受け止めさせていただきました。皆さまの大切なご家族に犠牲を生じさせてしまったことについて、改めてお詫び申し上げます。民事裁判においては、事故に関する私自身の記憶や認識に従って、対応していく所存です」。

改めて裁判の争点を整理します。

まず、出航を巡る判断について。原告側は事故当日基準を超える風や波が予想されていたにも関わらず、運航中止を判断しなかったことが過失にあたると主張しています。

一方、被告側は、海が荒れる前に引き返す「条件付き運航」だったと主張。船長がこの趣旨に従って適切に運航していれば、事故は回避可能だったとしています。

また、運輸安全委員会の報告書で、沈没の原因と指摘されたハッチの不具合について。原告側は事故2日前に船長は不具合を認識していたとし、船長だけでなく運航管理者でもある桂田社長は、このような状態で出航させてはならなかった。絶対的な注意義務違反だと主張しています。

これに対し被告側は、運輸安全委員会の報告書は事実認定に誤りがあると指摘。そもそもハッチに不具合は認められず、国の検査代行機関・JCIの検査でも指摘されなかったとしています。

そして、15億円という慰謝料の額について。原告側は会社の運営状況はずさんで悪質であり、慰謝料を増額する根拠となるとしています。一方、被告側は、会社の賠償責任については一部認めているものの、慰謝料増額の理由となる過失はなかったとしています。

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