水に濡れない救命いかだ 費用負担重くも「安全のため」 知床事故3年 「改良型救命いかだ」搭載義務化
2025年 4月28日 17:47 掲載
3年前に発生した知床沖の観光船沈没事故を受け、国は船への「改良型救命いかだ」の搭載を今月から義務付けました。対策が進む一方、事業者への負担も増しています。
本間壮惟記者)
「救命いかだの取り付け作業が行われています」。
先週金曜日。小樽の港で、船に設置が進められていたのは救命器具のいかだです。「改良型」と呼ばれています。
2022年4月、乗客乗員26人を乗せ知床沖で沈没した小型観光船「KAZUI」。当時の海水温はわずか4℃で、乗客らは海水につかってから10分以内に低体温症となり意識を失ったとみられています。
フェニックスサイトシーイングコーポレーション 松永芳和社長)
「これ(旧型)だと海水に体がつかってしまう。それで(こちらは)海水につからないゴムボートですよね」。
知床での事故を受けて国は安全対策を強化。乗客が水に濡れることなく船から乗り移ることができる「改良型救命いかだ」の設置が今月から義務化されました。
フェニックスサイトシーイングコーポレーション 松永芳和社長)
(Q:費用面の負担も大きいと思うが?)
「それはもう致し方ないというか諦めるしかないですよね。あとはもう企業努力でなんとかクリアしていくしかないから」。
いかだの容器などこの業者が購入したいかだはおよそ210万円。そのうち3分の2は国からの補助が出ます。しかし配送や設置にかかるおよそ160万円はすべて自己負担です。散骨をメインに観光名所「青の洞窟」のクルージングなどを手掛けていて、来月から今シーズンの営業を始めますが、乗船料金などへの価格転嫁はしない方針です。
フェニックスサイトシーイングコーポレーション 松永芳和社長)
「賄えなければ自腹をきるしかない。そこまでお客さんに負担をかけるわけにもいかないからね」。
同じ悲劇を繰り返さないために。安全への投資は3年が経ったいまも続いています。
フェニックスサイトシーイングコーポレーション 松永芳和社長)
(Q:この3年で安全に対する意識は?)「より強くなりました。他人事じゃないなというのはより実感はしました。お客さんが安心して乗っていただける。それ一点でここまで装備を備えているので。それだけです」。