同級生ら新証言「パワハラしかなかったです…」 北海道が「全否定」の「江差看護パワハラ」学生自殺問題
2025年 5月19日 18:52 掲載
■男子学生が残した手紙:
「4月からは死なないことを目標に生きていくわ」
こう記したおよそ5カ月後。彼は22歳の若さで自ら命を絶ちました。
■同級生(A):
「パワハラしかなかったです。あの学校は。」
■同級生(B):
「声が出なくなっているので。そのタイミングで。それだけのストレスの負荷がかかった。」
人北海道江差町で地域医療を担う看護師を養成してきた「道立江差高等看護学院」。彼もそこで看護師を目指す、学生の1人でした。
一緒に入学した男子学生は6人。
■同級生(B):
「他の友達も交えて夜ごはん食べたり飲み会みたいな感じで集まりすることは結構あった。」
2019年9月18日、彼は自宅のアパートで自ら命を絶ちました。
■自殺した男子学生の母親:
「うちの子は江差の学校に殺されたんだって思いが強くなって」
遺族が自殺した原因として訴えているのは、教師によるパワハラです。
2021年、道立高等看護学院で明るみになった教師による学生へのパワハラ。
第三者委員会の調査では、江差町と紋別市の学校で、11人の教師による学生への53件のパワハラが認定されました。
■北海道鈴木直道知事:
「教員によるハラスメントが確認された。
被害に遭った学生の皆様はもとより保護者、さらに地域の皆様に心からお詫び申し上げたい。」
この時、男子学生の自殺については被害の申し出がなかったとして調査は行われていませんでした。その後遺族は自殺の原因について道に調査を依頼し、改めて、第三者委員会による調査が行われました。
■第三者調査委員会須田布美子座長:
「教員からパワーハラスメントを受けたことによって死を考えるようになったと認められます。
」調査の結果、3人の教師による4件のパワハラを認定。
学校の学習環境と自殺との相当因果関係を認めました。
これを受け、道は遺族に謝罪しました。
■鈴木知事:
「ご遺族に対して深くお詫びを申し上げますとともに、お亡くなりになられた学生に対して心より哀悼の意を表します。」
遺族が安堵したのも束の間…。
■道の代理人からの文書:
「パワハラが自殺に直接結びついたとは言い切れない」
道は遺族との示談交渉の中で、パワハラによる精神的苦痛を受けたことは明らかとしながらも、自殺の賠償には応じない姿勢を見せたのです。
■自殺した男子学生の母親:
「因果関係があって亡くなったというのをちゃんとそこを含めて謝罪していたはずなんですけどね。最初の時。勝手に死んだんじゃない、あなたたち(道)のせいなんですって。その責任から逃れようとするのは違いませんかって。」
遺族にとって“手のひら返し”の対応に去年9月、遺族は約9500万円の損害賠償を求め道を提訴。その裁判で道は新たな主張を展開しました。
■道の準備書面から:「パワハラと認定した4つの事例はパワハラと評価しえない」
道は自ら設置した第三者委員会の調査を「客観的ではない」として、認定された4件のパワハラすべてを「否定」したのです。
■鈴木知事:
Q謝罪の前提が崩れることになるが謝罪自体が間違いだったという認識か?
「係争中ですから。弁護士としっかり議論をしながら対応していくという中でありますので、コメントは控えたい。」
■同級生(A):
「人殺しといて逃げんなって感じはします。パワハラは絶対にありましたね。」
道が裁判の中で「全否定」した教師による4件のパワハラ。
しかし、同級生たちは道の主張に異論を唱えています。
■同級生(C):「先生も誰かをターゲットにして、執拗に無視したりとか。理不尽な学校だったから何かあってもおかしくないなと。」
当時の学校を「異常だった」と振り返る同級生たち。
■同級生(B)「この人(先生)に嫌われたら終わりだったという風に思う学生は多かった。」
彼(自殺した男子学生)と親友だったという同級生の1人は、第三者委員会が認定した「提出が1分遅れたことでレポートを受け取らず留年させた」という事案を横で見ていたといいます。
■同級生(B):
「ギリギリ間に合ったんですよ。僕もその時、携帯の時計で確認して間に合うねって言って。」
同級生によると、時間には間に合っていたという彼の提出物。
しかし、教務室の時計は正確な時刻よりも進んでいて、レポートを受け取ってもらえず、留年が決まったと言います。
■同級生(B):
「間に合ったと思っていたのに受け取ってもらえなかったという悔しさもあって(自殺した男子学生の)声が出なくなった。それだけのストレスの負荷がかかった瞬間にいたから、それでパワハラじゃないってどうなのかなって。」
二転三転する道の主張に知事は。
■鈴木知事:
「これは現在係争中の案件なのでコメントは控えたい。」
Q道の対応は本当に適切なものなのか知事の考えを自らの言葉でお話しいただきたい
「係争中なのでコメントを控えます。」
「係争中」としてこれまでに具体的な説明を行っていない鈴木知事。
行政問題に詳しい専門家は、説明を避ける行政がはらむ機能不全を指摘します。
■札幌大学武岡明子教授:
「第三者委員会の報告書の内容が客観性がないというのであれば、どうしてそのような結論に至ったのかを(知事)自身の口で説明するべきだと思います。一連の道庁側の対応はとても不可解だし、遺族に対しても不誠実だと思う。やっぱり真摯に向き合って、対応していただきたい。」
自殺した男子学生は、自ら命を経つ5か月前、先に卒業する親友に、6枚の手紙を送っていました。
■手紙:
「4月からは死なないことを目標に生きていくわ」
■同級生(B):
「一緒にやっていれば、もしかしたら3学年も乗り切れたんじゃないかとか、もうちょっと頼ってほしかった。」
なぜ、彼は「死」を選択したのか。
学校という”密室”の中で何が起きていたのか。
第三者委員会が認定した4件のパワハラすべてを否定している道から具体的な説明はないままです。