2014年04月01日(火)
颯
めぐみ横丁では、
「もらったお題=漢字1字」 をテーマに
ゆる~~く、断続的に、コラムを10回執筆中。
今回は、第4弾、でございます。
木村カメラマンからお題を頂戴
う~ん、どうしよう、と悩みながらも、
9か月になる息子さんの名前からの1字だと、丁寧に書いてくれました。
撮られる側は恥ずかしい!と言いながらもステキな笑顔 ^^
* * *
「颯」
北国にもようやく本格的に春の兆しが見えてきた。
今年は、その速度が少し駆け足だ。
屋根から、勢いのよすぎるシャワーのように雪どけ水が流れ落ちている。
毎年今の時期になると、ある欲がムクムクと沸き起こり、私の脳内を支配する。
旅に出たい欲、である。
思うに、旅人の特権って、人間観察ではなかろうか。
普段、じろじろ人見ることは失礼ではしたない行為であるのは百も承知、
子どもの時分、母に、「そんなに周りの人をじっと見てはダメ」と叱られたこともある。
しかしながら、旅をしている人だけは、世界的に、なぜだか許されている気がする。
もちろん、人目を気にしながら、という前提はあるけれど。
昔、底冷えするイタリア・ミラノで、その人を見かけた。
ミラノと言えば、年に2回、大きなファッションショーが行われるオシャレな街だ。
街ゆくひとは、シンプルかつひとくせあるアイテムを着こなしていて、
みな、一家言があるかのごとく、
子どもたちも、おじさまも、ストールを上手に品よく巻き、首まわりを彩っている。
たぶん、自分に一番合う巻き方を研究し、熟知しているような気がする。
ブティックが立ち並ぶ街の一角にあるオープンカフェに入り、
搾りたて、粒入りオレンジジュースを飲みながら、
バターの香りがふわっと口に広がるクロワッサンほおばる。
道行く人を眺めていると、目の前を、ひときわ輝く人が通り過ぎた。
ぞわぞわっとするくらい、カッコ良い。
カツ、カツ、カツ・・・
颯爽と歩くおそらく90歳くらいの短い白髪の女性は、かくしゃくとしていて、
背筋が気持ち良いくらい伸びている。
黒っぽいストールに、黒のショートのブーツ。
赤いロングコートが、とてつもなくよく似合う。
歩くスピードが速い人が多いかの街でも、特に速かった。
どこか達観しているようなその表情は、強さと優しさを兼ね備えている。
この人は、どんな人生を歩んできたんだろう。
想像していたら、旅人たちの団体に吸い込まれるようにして、視界から消えてしまった。
この時以来、"赤いコートの似合う女性になりたい"
というのが一つの大きな目標になった。
お店で見かける度に買おうかどうか逡巡するけれど、
まだ、服に着られてしまうような気がしている。
でもいつか、とびっきり似合うようになりたい。
どのように人生の年輪を刻めば、あのお方のような身のこなしができるのだろうか。
こんなを考えながら、気分だけでも、と、ガイドブックや雑誌をめくっている。
* * *
きょうから新年度ですね。
気持ちを新たに、みなさんにとって、良いスタートがきれますように!!
今年度もよろしくお願いいたします