寮OBにはプロ野球選手も…東海大札幌高校の甲子園出場を支えてきた寮母がこの春引退
2025年 3月24日 18:03 掲載
東海大札幌高校の野球部などの生徒が暮らす学生寮の寮母が今年度限りで引退します。
甲子園出場を支えた寮母の素顔に迫ります。
井上悦子さん:
「おかえり~。勉強できた?」
札幌市南区の東海大札幌高校の学生寮で寮母を務める井上悦子さん(68)。
■井上さん:
「恥ずかしがり屋だねみんな昔の子はもっと図々しかったけど、いまの子、下見て照れてた。」
東海大札幌の学生寮「望星塾」。親元を離れて運動に打ち込む男子生徒およそ130人が暮らしています。寮生の中で一番多くを占めるのが野球部。これまでに春夏合わせて甲子園に12回の出場経験があります。
悦子さんは寮で20年間生徒たちの成長を見守ってきましたが、来週、引退します。
寮母になったきっかけは悦子さんの甥が東海大札幌の野球部に入学したことでした。夫の和久さんが「甥の成長を見守りたい」とトラック運転手をやめて、夫婦住み込みで寮の管理人になりました。
■井上さん:
「2年前にうちの主人ががんになって病気になって亡くなったので本当はやめようと思ったんだけど、このまま家にいてもうつ病になるなと思って、(生徒が)『おばさんえっつ(悦子さん)さみしいだったらおれらいるからねって』けっこう優しいこと言ってくれるので、えーと思って(続けた)、それから、子どもたちに助けられて、私は感謝してます」
子どもたちを支え、支えられてきた寮母としての日々。
しかし、去年秋ごろ突如、重い神経痛を患いました。
■井上さん:
「去年の暮れくらいにやめるわって決めた。口はなんぼでもできるけど、体がついていかないからね、恥ずかしいことに、待ちなさいって言っても追いかけられない。」
寮母として最後となった春に、東海大札幌は10年ぶりとなる甲子園出場を果たしました。
■寮長・佐藤聡夫也さん:
「おばさんが最後という形になるので優勝という最高の形で終わりたいです」
Q悦子さんはどんな存在?
「よくほかの学校は寮母さんはお母さんみたいって言うんですけど、お母さんでもなく、おばあちゃんでもなく、話しやすいというか、親しみのある近所のおばさんに近いです」
■井上さん:
「近所のおばちゃんじゃねえよお姉様と言え」
巣立っていった多くの子どもたち。その中でも思い出深い生徒がいるといいます。
■井上さん:
Qこの色紙は?
「寅威が失敗したやつ、寅威のサインをけっこう頼まれるんですよ、あの子意外と気さくで、サインほしい子いるよって言ったら来るのサイン書きに」「あの子が私のところに来て『先生に言ってくれおばさん、おれプロになりたいから言ってくれって』『自分で言えばいいしょ』って言ったら『言いづらい』って私に言わせて。」
寮のOB・ファイターズの伏見寅威選手です。
高校時代の3年間を寮で過ごしました。
■伏見寅威選手:
「第2のお母さんという感じです。初めての寮生活でしたし、慣れないことばかりでしょぼんとしているところを『あんたそんなんじゃだめだよ』って言ってくれるような、悦子さんのおかげで3年間高校野球ができた感じですね」いまでも定期的に寮を訪れています。」
■伏見寅威選手:
「昔を思い出すというか、昔に戻ったような、高校生に戻ったような、感覚になるので、だから行くんでしょうね、たまに」
Qなにか感謝の気持ちはある?
「照れくさいので言わないです、普段も悦子さんをほめることなんて中々しないのででも、いまの自分があるのは悦子さんのおかげだと思ってます。」
(3月7日)
■井上悦子さん:
「はーい、おはよー、いってらっしゃい、頑張ってねー」
寮生たちが甲子園に向けて出発する日。いつも通り、寮の出口で見送ります。
■寮生:
「がんばるわ、ありがとう1年間、2年間か」
■井上さん:
「いってらっしゃい」
生徒たちは悦子さんの思いも背負い、甲子園へ出発しました。
(3月23日)
…そして、迎えた試合の日。
先発ピッチャーは寮生でもある、矢吹太寛選手序盤からリードを広げられる展開に。
■井上さん:「矢吹頼むよー。」
■井上悦子さん(5日):
「1回戦では帰ってこないでね、いやだから1回戦負けで帰ってきたらださいからね、いじめるからね、あんたたちのこと」
1点ビハインドで迎えた9回。
代打で送られた先頭バッターは寮生の藤根龍之介選手。
■井上悦子さん:
「藤根出てきて緊張してきた」
しぶとくレフトに運びチャンスを作ります。その後、2アウトとなりもう後がない状況に。粘り強い攻撃で同点に追いつきます。
その後、逆転に成功し迎えた9回ウラ。寮生の活躍もあり、見事初戦突破を果たしました。
■井上悦子さん:
「疲れました、力入りましたね、勝ってよかったけどまずは1勝ですよね、ここからですよね、どこまでいけるかわからないけど、けがしないで頑張ってほしい。」