最近は“症状”に変化も…「だるくてやる気が出ない」それって“今どきの五月病”?どう乗り切る?対処法は
2025年 5月16日 18:54 掲載
《“症状”に変化…今どきの「五月病」とは》
今回の特オシは「五月病」です。五月病とは新入生や新入社員、人事異動など、4月に大きな環境の変化があった人がなんとか頑張って1カ月を乗り越えたものの、ゴールデンウィークでリズムを崩してしまい、連休明けに心身に不調をきたす状態のことです。昔からよく使われてきた言葉ですが、最近、その症状が変わってきたと専門家は話します。背景には「減点がないことが評価される」という、いまの時代の考え方が影響しているのではと指摘します。
【VTR】
■札幌医科大学 精神科医/公認心理師 田所重紀医師
「かつてはなんか不安でどうしようというか、『不安』が前景に立つ(=目立つ)ような人が多かった印象ですけど、最近は『やる気のなさ』とか『意欲が落ちる』とかそういう方が目立つ印象がありますね」「昭和の時代はすごい得意なことがある子どもとか、他のことがあまりできなくても、評価されたところってあると思うんです。でも今は全部がちゃんとある程度できないといけなくて。真面目な人ほど今の上手くいっていないところをなんとかして、良くしなきゃいけないというところで、意欲を落とす、モチベーションを落とすと思いますね」
田所医師によりますと、五月病で見られる心の不調は「不安感」と「やる気が出ない」の大きく2つに分けられる。かつては先行きの不安を訴える人が多かったが、今は「やる気が出ない」と訴える人が多いということです。
《やる気が出ない⇒そのまま退職へ?》
東京のメンタルクリニックを運営する社団法人「特志会」が五月病を経験したことがある人を対象に調査した結果、五月病で感じた症状では、「仕事のやる気が出ない」が最も多く、37パーセント。さらに「五月病によって仕事の退職を検討したことがあるか」という質問に対し、あると答えた人が、およそ3割でした。以前は「この会社でやっていけるかな~」という不安が主でしたが、最近の五月病では「やる気が出ない=会社を辞めよう」というところまで進んでしまう場合もあるということです。そんな変化を裏付けるように離職について利用が増えているサービスがあります。
《利用者倍増!退職代行とは》
今回、取材したのは合同労働組合「私のユニオン」が運営する「退職サポート」です。
利用者が労働組合に入ることで、組合が団体交渉権に基づいて退職の意思表示や手続きを代行しています。今月12日、実際に退職代行から会社にかけられた電話の音声です。退職代行を依頼したのは、札幌市内の介護施設で、この4月から働き始めた30代男性です。入社前に聞いていた仕事と実際の仕事が違うため、退職を決意。上司が不在のことが多く、なかなか退職を切り出せなかったことから依頼したということです。
【VTR】
■退職代行と依頼者の勤務先とのやり取り音声
「ご本人から入社時に聞いていた業務内容が実際と異なっていたために、退職したいとのことで、私どもに依頼があり、代わりに退職手続きを進めさせていただくこととなりました」「今後の出社もできない状況ですので、5月12日付の退職でお願いいたします」「退職後の必要書類を3点ご希望されておりまして、離職票、健康保険資格喪失証明書、源泉徴収票につきましては、退職後に発行でき次第、自宅へ郵送をお願いいたします」
電話相手の会社の担当者が大きく戸惑う様子はありませんでした。退職届の様式や最終の給与の支払い日などの確認をし、やり取りは7分ほどで終わりました。GW期間に「退職サポート」に寄せられた依頼件数は毎日10件ほどで、去年の同じ時期と比べて2倍以上となりました。この時期の依頼は、入社して間もない35歳以下が多いと言います。
■合同労働組合「私のユニオン」藤井直樹さん「約半分ぐらいの方はかなり精神的にも追い込まれていて、これ以上会社に行けないという状態でご連絡をいただくケースはあるのかなと。あとは退職代行をある意味上手に使いこなしている方。『転職活動と同時進行はできないので、退職の方は退職代行さんお願いします』と」「業務が自分のイメージしたものとちょっと違ってしまった。研修を受けているうちに担当業務をやっていける自信が無くなってしまったという人も。入って1カ月ぐらいで『退職をしたい』ってなかなか言い出せないので、それはかなりのストレスになると思います」
注意点もあります。労働問題に詳しい倉茂尚寛弁護士は
・有給休暇の消化、退職金などの交渉の代行は弁護士しかできず退職代行ができることは限定的。
・退職代行に依頼し、かえって手続きが長引いたケースも。
・電話や郵送、どんな形でも退職の意思は自分で伝えるのが望ましい。
・どうしても自分で伝えられない場合は、弁護士を通すのが良いのではないか。
などと指摘しています。
《五月病を深刻化させないために》
周りの人にもできることがあります。田所医師が推奨するのは、「上手くいっていない所は一旦放置して、上手くいっている所をさらに伸ばしていく」ことです。会社や学校という組織の中では上手くいっていないところを直すのは必要なことだが、不調になるリスクが高いこの時期だけは、減点主義をやめて、良い所を見つけてほめる習慣を作ってみては、という提案です。
そして本人ができることについては「上手くいっていること、好きなこと、得意なことをさらに伸ばしていく」のが基本。自分の中の「気持ち良い感覚」を大事にし、特に味覚、触覚、聴覚といった体の感覚と繋がっているとより効果的だということです。