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北方領土や原爆“ネタ”を漫才に…お笑いコンビ「アップダウン」被爆地で見せた涙 戦後80年で活動広がる

シリーズ「戦後80年・記憶をつなぐ」。今回は北方領土や原爆など、社会派の漫才で歴史を伝える北海道出身のお笑いコンビ「アップダウン」。戦後80年の今年、活動を全国に広げています。

北海道出身のお笑いコンビ「アップダウン」。竹森巧さん(47)と阿部浩貴さん(48)は今年3月、道東の羅臼町を訪れました。展望台から見えるのは、わずか25km先の国後島です。

阿部浩貴さん:「改めてしっかり見えると、近いなって感じがする」。
竹森巧さん:「あそこに住んでいたんだよ、日本人。きょうは北方領土の漫才をやる日ということで、祝福してくださっていますね」。

「どうも~、アップダウンです!」

北方領土の元島民がおよそ70人住む羅臼町で、完成したばかりの「北方領土漫才」を披露します。

阿部さん:「あっ、船が戻ってきましたよ」。
竹森さん:「汽笛を聞き逃すな」。
阿部さん:「汽笛?どういうことですか?」
竹森さん:「実は汽笛は合図になっていて、クジラが捕れていたら3回、捕れていなかったら1回鳴ることになっている」。
阿部さん:「なるほど」。
竹森さん:「ぼー」。
阿部さん:「汽笛が鳴りました」。
竹森さん:「ぼーっとしている場合じゃないから」。
阿部さん:「しゃべってたんかい、おい」。

前半は、かつての北方領土での何気ない日常をコミカルに描いた漫才。後半は、島を追われた人々が引き揚げる船の中での出来事を、朗読や演劇で伝えます。

阿部さん:「にぎり飯、わかめ、野菜のみそ汁、本当においしかったことを今でも忘れない。そして夜になると、船員たちのギター演奏による歓迎会が開かれ、もらったリンゴとカキを食べ、感涙にむせんだ」。
竹森さん:「何か歌ってほしい歌はありませんか?」
阿部さん:「故郷…、故郷!」
(竹森さん「故郷」を歌う)

阿部浩貴さん
阿部浩貴さん

羅臼町民:「分かりやすかったし、共感が得られやすいのでは」「実はあまり知識がなかったが、今回の漫才でよく知ることができたので、子どもを連れてくればよかったなと思いました」。

北方領土漫才を制作するために体験談を聞いた、元島民の男性も見に来ていました。国後島出身の伊藤宏さん、90歳です。

竹森さん:「お話を聞かせていただいて、それを形にすることができました。どうでしたか?」
伊藤さん:「本当に良かったよ。よくこんなに調べて」。

国後島出身・伊藤宏さん(90)
国後島出身・伊藤宏さん(90)

伊藤さんは、10歳の時に国後島を追われました。自宅の窓から毎日、ふるさとの島を眺めています。

伊藤さん:「元気だったら行ってみたい」。

80年前、国後島に上陸した旧ソ連兵が、家の中に突然入ってきた時のことをよく覚えています。

伊藤さん:「全然知らない兵隊たちが20人から30人鉄砲を持ってきて。家に入ってきたのは、鉄砲の先で戸を開けて。集落で集まって、逃げる人は逃げるべと。船をチャーターして、それで乗ってきた。夜中だからね、逃げてくるのは。考えるもなんもなかった。ただ恐ろしいだけで」。

芸歴29年のアップダウン。高校生の頃には、すでにお笑いコンビとして活動していました。出会いは1993年、札幌月寒高校。1年生の時のクラスメートです。

竹森さん:「アップダウンという名前の由来というか、(壁を指して)こっちかこっちに前回のテストよりも成績がアップダウンみたいな」。

学校で目立ちたかった阿部さんが、竹森さんを誘いコンビを結成しました。高校卒業と同時に吉本興業に所属。数年で、東京のバラエティー番組のレギュラーの座をつかみました。しかし…。

阿部さん:「(竹森さんは)いじられることが多くて、芸人的にはすごいおいしいポジションを若手の時はもらっていたと思う。ただ本人の中では、いじりといじめの違いみたいで、そこでちょっと心が傷つく瞬間もあった」。

竹森さん:「今だったらおいしいなと思えるけれど、その当時はもう必死すぎて、いじめられていると感じる自分もいた。だから、本当に苦痛でしょうがなかった」。

芸人を辞めようかと、悩んだこともあったという竹森さん。そんな時、鹿児島県にある特攻隊の資料館を訪れたことがきっかけで、「日本の重い歴史を伝えたい」と思うようになりました。

竹森巧さん
竹森巧さん

今度は、竹森さんが阿部さんを説得。これまでにアイヌや特攻隊、原爆などをテーマにした漫才を制作し、3年前には事務所から独立しました。

戦後80年の今年、活動は全国に広がっています。今月、2人が訪れたのは被爆地・広島にある中学校です。

阿部さん:「防空壕で身をかがめていたらドッカーン」。
竹森さん:「大爆笑」。
阿部さん:「違うよ、大爆笑のドッカーンじゃないよ」。

原爆によって校舎が全壊、教職員や生徒351人が犠牲となったこの学校で、中学生およそ600人を前に原爆を題材にした漫才を披露しました。

竹森さん:「ピカッという青白い光がして、瞬きをした瞬間、その光は爆風となって悟少年を襲いました」。

被爆者から話を聞き、1年かけて制作した「原爆体験伝承漫才」。広島で披露するのは、この日が初めてです。

阿部さん:「ここも何もなくなったという話を聞いて。目の前には皆さんがいて、80年経って今の景色があると感じながら演じると、すごい特別な公演だった」。
中学3年の女子生徒:「面白く、でもちゃんと学べる機会だった」。

6月10日、札幌で北方領土漫才の2度目の公演がありました。今後、道外でも披露する予定です。

観客の女性:「いろいろ勉強になったし、これを日本中の人に聞いてもらいたいと思う」。
観客の男性:「社会科の授業で聞くよりずっと分かりやすかった。子どもたちに、こういう形でなじんでほしい」。

竹森巧さん:「最初は『えっ、大丈夫?』という空気感が伝わってきたが、じわじわと『あー、そういう感じで笑いを使うんだ』と分かり始めてきたら、あったかい空気が漂ってきた」。

阿部浩貴さん:「面白いって笑うだけではなくて、色んな楽しみ方があるというエンターテイメントを作っていきたい」。

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