石狩市初・危険な空き家を強制的に取り壊し 上砂川町では半額を国が補助する「略式代執行」へ
2025年 7月 1日 19:17 掲載
北海道内各地で危険な空き家の放置が問題となっています。石狩市ではきょう1日に初めて、建物の取り壊しを強制的に行う「行政代執行が行われました。
外壁に張られた「危険」の文字。石狩市浜益区にある歯科医院兼住宅だった築60年の建物です。空き家となって20年ほどが経つといいます。
■大原麻潤記者:
「住宅街にある建物ですが、外壁が剥がれ、中の骨組みが見えてしまっています」
■石狩市担当者:
「それでは作業を始めてください」
午前10時、解体作業が始まりました。危険な空き家の取り壊しを自治体が強制的に行う「行政代執行」。石狩市で行われたのはこれが初めてです。市によりますと、3年前、近くに住む人から「建物の煙突が倒れた」と通報があり、市が建物の所有者を特定。解体や撤去を行うよう、指導や命令などを行ってきましたが…。
■石狩市建設部建築住宅課佐々木勇次課長:
「所有者への度重なる指導や勧告にも改善が見られず、住民の安全と地域環境の保全のためにやむを得ず行うもの。最終的にはかかった費用を所有者に請求する」
道内では空き家の数が増えています。2023年の道内の空き家の数は、5年前よりも7万2000戸増加し、52万4000戸に。総住宅数に占める空き家の割合は15.6%で、全国平均13.8%を上回っています。
一方こちらは人口およそ2300人。かつて産炭地として栄えた空知の上砂川町です。この町の中心部にも、危険な空き家が…。
■大原麻潤記者:
「トタン屋根が上から押しつぶされたように崩れ落ちています。残っている建物も壁が剥がれ落ちていて危険な状態です」
スナック兼住宅だった2階建ての建物です。5年ほど前に所有者が死亡。相続が放棄され、「所有者不存在」の建物になったといいます。役場の職員とともに住宅の裏側に行ってみると。
■上砂川町建設環境課三原浩明主事:
「このような状態で、崩壊しているような形」
2年前、雪の重みで建物が倒壊。隣の住宅に被害を与えたといいます。
■近隣住人:
「隣の人が困っていた。看板は落ちたし、上の方は崩れてひどかった」
そこで上砂川町は、所有者が特定できない空き家の取り壊しを行う「略式代執行」を初めて実施することに。費用の全額を所有者に請求する「行政代執行」と違い費用は自治体負担となりますが、その半額は国の補助金で賄うことができます。
■上砂川町建設環境課三原浩明主事:
「初めてやっているので、(時間は)かかりました。町内でも危険な特定空き家は増えつつあるので、それについて事務を進めている」
地域づくりの専門家は危険な空き家が放置され続けると、負のスパイラルに陥ると指摘します。
■北星学園大学社会福祉学部岡田直人教授:
「住民の意識にものすごい影響を与える。寂れていく地域に住み続けることに対する充実感や満足感がが低下していく。若い層にとってはなおさら出ていきたい印象になる」
岡田教授は危険な空き家にさせない取り組みが必要だと話します。
「空き家は地域住民のサロンや居場所づくりとして活用されている。誰かが使用することで、特定空き家にせずに済ませることができる」