道労働局、労働者からの申告件数がコロナ感染拡大前の水準まで増加 賃金不払いや解雇に関する相談目立つ
2025年 7月10日 17:35 掲載

北海道労働局は2日、2024年における北海道内の労働者からの申告事案(会社などが労働基準法などに違反している事実を労働者が労働基準監督署に申告すること)の概要を発表しました。申告処理件数は1690件と、去年に比べて6.4%増加し、経済活動の拡大にともない新型コロナウイルス感染拡大前の水準まで件数が戻っています。
申告内容で最も多いのは「賃金不払い」で、次いで「解雇」、「最低賃金」、「労働時間」に関するものが多くなっています。
特に近年、最低賃金が大幅に引き上げられたことで最低賃金に関する申告が大幅に増え、企業の対応の遅れが目立っています。
業種別では、「接客娯楽業」、「保健衛生業」、「建設業」、「商業」からの申告が多く、サービス業や医療・福祉関係での労働問題が目立つ結果となりました。
労働局は、今後も労働者からの相談に丁寧に対応するとともに、法令違反に対しては厳正に対処する方針です。
(申告の内訳)
*賃金不払い:1160件(前年比1.3%減)
*解雇:178件(前年比2.3%増)
*最低賃金:56件(前年比75.0%増)
*労働時間:41件(前年比2.5%増)
(業種別の件数)
*接客娯楽業:278件(前年比21.4%増)
*保健衛生業:267件(前年比1.5%減)
*建設業:261件(前年比4.8%増)
*商業:260件(前年比6.6%増)
(監督指導事例)
◇労働条件通知書未交付(社会福祉施設)
・有期雇用の労働者に対し、有期雇用契約の更新の際、労働条件通知書を作成し、交付していなかった。
(監督署の指導)
・契約更新に際し、労働条件を明示した書面を作成及び交付していなかったため、労働基準法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に対し、労働条件通知書を書面で交付した。
◇賃金不払(運送業)
・社用車で物損事故を起こした労働者に対し、同意なく賃金から車輌修理代を差し引いて、賃金の全額を支払わなかった。
(監督署の指導)
・車輌修理代を賃金の一部から一方的に相殺していたため、賃金の全額払に反するとして、労働基準法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に一方的に控除していた分の賃金を支払った。
◇賃金不払(小売業)
・退勤打刻時間が終業時間後30分未満であることを理由に、終業時刻後の残務処理等に対する賃金を支払わなかった。
(監督署の指導)
・終業時間後も業務として実施されていたが、1日当たり30分未満であることを理由に、当該業務に要する時間に対する賃金が支払われていなかったため、労働基準法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に残務処理等を行っていた時間の賃金を支払った。(本事案では、法定労働時間を超える所定外労働はなかった。)
◇割増賃金不払(旅館業)
・固定残業手当を超える時間外労働を行ったにもかかわらず、固定残業手当以外の割増賃金を支払わなかった。
(監督署の指導)
・実際の時間外労働時間に基づき計算した割増賃金と固定残業手当との差額が支払われていなかったため、労働基準法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に不足する割増賃金を支払った。
◇解雇予告手当不払(自動車整備業)
・解雇に当たり、予告期間が30日に満たず、また、予告期間に満たない日数分の解雇予告手当の支払いもせずに労働者を解雇した。
(監督署の指導)
・解雇が少なくとも30日前の予告をもって通知されておらず、また、必要な解雇予告手当の支払もなく労働者を解雇したことが認められたため、労働基準法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に予告期間の30日に満たない日数分の解雇予告手当を支払った。
◇最低賃金不払(美容業)
・賃金の一部が歩合給制の労働者に対し、北海道最低賃金を下回る賃金額で賃金を支払っていた。
(監督署の指導)
・基本給と、総労働時間数から換算して支払われた歩合給との合算が北海道最低賃金を下回る賃金額であったことから、最低賃金法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に対し、不払となっていた北海道最低賃金額との差額の賃金を支払った。
◇健康診断の未実施(クリーニング業)
労働者に対し、1年以内ごとに1回行うべき定期健康診断を実施していなかった。
(監督署の指導)
・1年以内ごとに1回行うべき定期健康診断の未実施が認められたため、労働安全衛生法違反を是正勧告した。
(会社の対応)
・会社は、労働者に対し、定期健康診断を実施した。