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知床沖観光船沈没事故から3年 乗客家族ら洋上慰霊に 祈りの旅をめぐる捜索ボランティアと乗客家族の絆

事故から3年。
祈りの声が響く中、多くの遺体や遺留品が見つかった海岸で家族が初めて花を手向けました。
2022年4月。北海道知床沖で乗客乗員26人を乗せた小型観光船「KAZUⅠ」が深さおよそ120メートルの海の底に沈んだ事故。
これまでに20人の死亡が確認されていますがいまも6人は見つかっていません。

■優さんの父親:
「4月の北海道なんて寒くて海はとてつもなく冷たい。あれだけ荒れた海で冷たい中に入って恐怖と…本当に死ぬ間際まで無念だったと思います」

長男の優さん。千葉県から旅行に来ていたところ事故に巻き込まれました。遺体は翌日、知床半島の先端付近で見つかりました。それから2年以上が経ったある日。両親の元に帰ってきたのは優さんが使っていたデジタルカメラです。

■優さんの母親(カメラ取り出し):
「このストラップだ。これ優のだ。冷たかっただろうね。きっとこういう感じで絶対離さなかったと思うんです。」

東京の専門業者にデータの復旧を依頼したところ、700枚以上の写真を取り出すことができました。そこには事故当日の優さんの姿も。

■優さんの母親:
「どこだろうここ、ここに泊まったんだね。誰かに撮ってもらったのかなあ」

今年3月、両親は初めて捜索ボランティアの隊長である漁師の桜井憲二さんに会いました。

■桜井憲二さん:
「初めまして」

■優さんの父親:
「デジカメの件では助かりましたというか感激しました」

■桜井さん:
「あれは息子さんたぶん息子さんが見せたかった」

事故発生時から多くの遺体や遺留品を見つけてきた桜井さん。
去年8月、知床半島の先端付近の砂浜で優さんのデジタルカメラを見つけました。

■桜井さん:
「一応船でですね文吉漁港に当日入って皆さんと一緒に歩いて、安全なところを歩いて、啓吉湾に入って洋上慰霊をするんですけれど/その際にご希望であればカメラのあった発見現場まで連れていきたいなと思いますので」

去年の夏、桜井さんは初めての洋上慰霊を計画。カメラを発見した捜索がきっかけの1つでした。
■桜井さん:
「今回デジカメを探して帰りの行程でふっと頭の中に浮かんだんですよね/そういえば洋上慰霊って何でやらないんだろうと思って。そういう計画ってないのかなと思って/誰もやらないんだったら、したら俺がやるっていうだけ。」

また、桜井さんは乗客家族と交流する中で「あの海で人目を気にせず名前を叫びたい」という声にも後押しされたといいます。

船のチャーター代などの寄付を呼びかけ、全国からおよそ1400万円が集まりました。

■桜井さん:
「今回は同じ境遇にあったひとがみなさんで来れるんでぜひ行きたいって人が多かったのでそういう意味でも心の癒しというか整理というか色んな意味で気持ちに良い方向に進めればいいなと思う」

洋上慰霊に参加したのは、乗客家族のほか桜井さんに賛同したボランティアなどおよそ70人です。花束や思い出の品などを持って船に乗り込みました。船は始めにウトロ漁港から知床岬の先端付近にある文吉港へと向かいます。慰霊の日は1年で1番海が穏やかだという日を選びました。

船は1時間半ほどで文吉港に到着。乗客家族らはここからおよそ500mを歩き多くの遺体や遺留品が見つかった啓吉湾へと向かいます。道沿いに張ったロープをつたい、高齢の家族はボランティアが背負って進みました。
魂を安らかに送り出すため、家族らは花と一緒に亡くなった家族の名前を書いた半紙を海へと流しました。
慰霊式の少し前。優さんの家族だけがさらに30分ほどかけて奥へと進んでいきます。

■優さんの母親:
「これだけあったら大丈夫?優/これね、霊界のお金なんです沖縄の/夢のために貯金をしてくれてた優が向こう行って困ってるかもしれないからお金を供えさせていただきます」

ここは、優さんのデジタルカメラが見つかった場所。優さんの好きだった食べ物やお酒を供えました。

■優さんの父親:
「本当に崖を登って下りての、急峻な道なき道を行くという感じで/そこを今まで桜井さんたちが何度も行ってくれたと思うと、本当に頭が下がりました」

■乗客家族:
「ありがとうございます。みなさん。おかげで息子のそばまで行けました。ありがとうございます。」

そしていよいよ、家族らが乗った船は「KAZUⅠ」が沈没したカシュニの滝の近くへ。海上に手向けられるたくさんの花束。家族の祈りをのせて、静かに流れていきました。大切な人へ向けて、叫びます。ついにたどり着いたこの場所で家族に想いを伝えることができました。
家族を乗せた船は、KAZUIがたどることのできなかった帰りの航路につきました。港では家族の代表から桜井さんらボランティアに向けて手紙が。

■被害者家族会・副代表:
「いつも遠くからそっと祈ることしかできなかった観光船の陰で声を殺して泣くしかなかった私たち遺族にとってこの洋上慰霊は夢でした/私たち家族が何よりもしてやりたかったこと、でもできなかた慰霊をずっとずっと続けてきてくださったこと、遺族として心より感謝しております。
本当にありがとうございました」

■桜井憲二さん:
「きょうという日を迎えることができたのはこの洋上慰霊に賛同して寄付してくださった全国のみなさまのおかげです/そして自分の思い付きに最後まで付き合い親身になって協力行動してくれたスタッフ、仲間たちには感謝してもしきれません。(涙こらえて)ありがとうみんなありがとう」

慰霊の旅を終え、家族は。

■優さんの父親:
「花を海上で投げ込んだ時にはなみだがとまらなかったです我々はあの場所からここまで帰ってきましたけど息子はこの帰り道がなかったのかと思うといまでも悔しくてたまらないです/息子も同じものを見たんだろうなと。見た全ての景色がそうですけれど、同じ景色を目に焼き付けました」

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