“水源”めぐる新たな計画?森林の違法伐採に関わった元工事関係者が語る中国人富裕層向け開発の裏側とは
2025年 8月12日 19:27 掲載
北海道倶知安町の無許可伐採問題で新たな動きです。元工事関係者への取材から違法状態と知りながら工事を進めた理由がわかってきました。さらに水源を巡る計画も明らかになってきました。
要諦山麓での伐採問題では、道の許可がないまま約3.9ヘクタールの森林が伐採され、都市計画法による許可申請がないまま開発が行われるなど、これまでに7つの違法行為が指摘されています。行政による再三の指導にも関わらずなぜ工事は進められたのか。実際に建物の建設を担当した人物がHTBの取材に答えました。
《一帯の開発はどのような計画なのか?》
■建設会社T社の元関係者「数年前からエリア一帯を買収というか地上げをどんどん進めていたという話で、ある程度まとまってきたので、そこにリゾートというか別荘街を作って、超富裕層が仲間内で持ってもらうみたいな計画。8年ぐらいかけて10数棟から建てていきたいみたいな計画だ」
この大規模開発に関わったのは、開発を担当した札幌の不動産会社J社と札幌の建設会社T社の2社です。T社のホームページには「当社は法人、個人の不動産物件を数多く手掛けてまいりました。この分野については豊富な知識と経験を保持しております」と書かれていますが、この男性は去年設立されたばかりだと話しました。
■元関係者「(J社の仕事を)専属でやるための会社ですね」「入ってくるお金というのはJ社からしかない。基本的にはJ社が親会社みたいな形で、関係性が悪くなればT社にお金は下りてこなくなって成りゆかなくなる」
《なぜ違法な工事は進められたのか?》
男性は、必要な申請をせず工事が違法な状態だと把握していたと証言しました。
■元関係者「最初は申請を出す予定だった。去年6月を目指していたんですけど確認申請出すということで図面が遅れたりとか、構造計算に時間がかかったりとか、そのときJ社から『いや、もうできないんだったら、違う会社に頼むだけだから』というような話をされたと」「もうこれはやるしかないねという判断をT社の上層部の方でして、工事着工して、確認申請はちょっと遅れたけどちゃんと出して行政の指導を受ければ…というぐらいの感じではいたんですけど。でも結局ずっと出さないでいてしまった」
専門家は…
■中央大学法学部洞澤秀雄教授「建築事務所としての登録も取り消される可能性も出てきますし、建設業の許可にも影響が及ぶ可能性も当然あります。それ以前に普通に会社としての信用は失います」
《開発を行った不動産会社J社と中国との関係は?》
開発には日本人の工事関係者のほかに、多くの中国人が関わっていたといいます。
■元関係者「関東の方から在日の中国人の方たちをチームで呼んだりとか、あとは中国本土から外壁チームを呼んだりとか2週間スパンで入れ替わるような形で、おそらく60人から70人ぐらいは常時動いていたと思います」
中国からの労働者や資材を手配したのはJ社とされています。J社の代表は中国から日本にきたとみられる男性で、自身のSNSに「チーム一同、そして大切なパートナーの皆様とともに休日用別荘『陽雪ノ華』をオープンできることを大変うれしく思っています」と、自らの会社のプロジェクトをアピールしていました。陽雪ノ華とは3年前に公開された巽地区で計画されていたリゾート別荘地です。35万平方メートルの敷地に200棟の豪華別荘が並びます。この計画は一度とん挫したと言われていますが、その予定地で違法伐採と、工事関係者によりますと2棟の別荘が建築中です。J社が開発の主体ですがJ社の代表の上に、ある中国人の存在があるといいます。
■元関係者「今回のこの事業のボスみたいな人はもっと上の方でいます。名前も聞いたことないですね。みんな『ビッグボス』としか呼ばなかったので」「中国の方で、羊蹄というブランドをそういったインバウンドだったりというのを集客したいんだと。最終的にはJ社が管理をして、それで収益を立てようとした」
《地元で不安視される“水源”をめぐる計画とは》
計画の全体像は依然として明らかになっていませんが、違法伐採の現場からわずか1キロほどの場所に水源を利用した計画があったことが明らかになりました。地元の関係者に出回ったウォータープラントとみられる計画書には、約4.9ヘクタールの土地に巨大なミネラルウォーターの工場とみられる予想図もありました。去年10月に作成されたとみられ、15ページ全て中国語で書かれています。計画書に書かれた場所では一部の森林が伐採されていました。この土地はJ社が去年5月に購入した事がわかっていますが、計画書との関連は明らかではありません。
■元関係者「(Qこの計画書を見たことは?)これは見たことがないですね」「当初はあそこの敷地内に(井戸を)掘ってウォータープラントを建てて、中国人の富裕層が来たら見学できるようにしたいねというようなことを言っていました」
《今後の開発の行方は?》
現在、道は不動産会社J社と建設会社T社に工事停止を勧告しています。今月4日、T社は工事再開に向けた是正計画書を提出しました。着工前に行わなければならなかった住民説明会を改めて10月以降に行い、12月までに開発に必要な許可申請をするという内容です。申請された場合、道は工事再開を許可するかどうかの判断を迫られます。
今回取材に応じた建設会社T社の元関係者は、T社から違法伐採など一連の責任などとして損害額1億5千万円の補填を求められ、理不尽に責任を押し付けられているとしています。
■元関係者「この工事全て僕も携わっていたので、悪くないとは全然言わないですし、業者とかの手配とかも全部やってきましたけど」「全て会社の中で全部話し合って方向性も決めていたし、僕の一存で何かを決定したということは本当になくて、あくまで会社の上層部だったりとか、J社も含めて会議をやっていた。その中でこういった結果になったものを、全てこちらに押し付けられるというのもちょっとおかしな話なのかなと本当に思っています」