知床・羅臼岳クマに襲われ不明の男性 14日の捜索では発見されず 登山客約60人をヘリなどで救助
2025年 8月14日 19:19 掲載
■新井カメラマン:
「道警の救助隊員によって登山者が救助されています」
知床のクマが人を襲いました。斜里町の羅臼岳で友人と登山をしていた20代の男性が、クマに襲われ行方不明となっています。男性は友人とともに午前5時ごろ入山。
警察によりますと、午前11時すぎ、友人が男性よりもおよそ200メートルほど後ろを下山していたところ、友人の名前を呼ぶ男性の大声が聞こえたといいます。友人が声の方へ近づいて行くと、クマに襲われている男性を発見。男性は太ももから出血し、クマに登山道脇の林の中へ引きずりこまれていったということです。
男性2人が登山していたのは、知床半島中央部に位置する羅臼岳。クマに襲われた現場はウトロ側にある標高およそ550mのオホーツク展望周辺だということです。道警のヘリコプターが上空から捜索しましたが、男性を発見することはできず、きょうの捜索は打ち切られました。警察などは羅臼岳にいる60人ほどの登山客を、ヘリコプターなどで救出しました。また、羅臼岳の3つの登山口は、新たな登山客が入らないよう入山規制をしているということです。
専門家は、最近この山で現れている人につきまとうクマと同じ個体の可能性があると指摘します。
■北海道大学獣医学研究院・下鶴倫人准教授:
「一つは、最近特に同じ羅臼岳の登山道で、人に付きまとう案件というのが何例か報告されてますので、その個体との関連性というのが強く疑われる状況なのかなというふうには思います。」
知床財団によりますと、羅臼岳の登山道では12日、登山客が、近づいてきたクマにクマ除けスプレーを噴射しましたが、クマは逃げずにその後も数分間登山客につきまとってきたということです。
■北海道大学獣医学研究院・下鶴倫人准教授:
「今回のケースの、おそらくですけれども、過去に何回かにわたって人に付きまといしていくうちに、だんだんと行動がエスカレートしたのではないかと考えています。必ずしも複数人だったら大丈夫かどうかというと、違うということになってしまいますよね。私もその辺は重大な案件として受け止めているという状況です」
■スタジオ依田アナウンサー:
はい、まず地図で見ていきましょう。
今回男性が襲われた場所は羅臼岳の登山道の上です。斜里町側の岩尾別温泉から羅臼岳の山頂を結ぶ非常に人気の登山道で、オホーツク展望という場所があるんですね。ここがちょうど標高550mあたりで、このちょっと上で20代の男性がクマに襲われたということです。
2人はこちらの岩尾別温泉側から登山道に入って、上の方に行って帰ってくる途中にクマに遭遇したということなんです。
これまでに分かっていることと経緯も見ていきましょう。まず午前5時頃です。男性が友人と共に岩尾別温泉側から入山しました。
午前11時前になって下山中に先を歩いていた男性から大声で友人は名前を呼ばれました。近づくと男性がすでにクマに襲われていたということです。襲われていた男性は太ももから出血もしていたということなんですね。そして襲われた男性、クマに林へ引っ張られて行方不明になって、現在も安否不明です。そして友人が11時過ぎ、もう一度登山道に戻ってから警察に通報したということです。この友人は救助され、怪我はありませんでした。ただなんです。
道警などは、他の登山者がいる可能性があるため、銃を撃てないことから下からの捜索、地上からの捜索ができずにヘリで上空から男性を捜索しましたが、発見には至りませんでした。
そしてこの羅臼岳周辺ではここ数日、非常に人間とクマが近い距離で出会うケースが増えているんです。
・まず10日の日曜日、登山者がヒグマと遭遇しました。スプレーを構えて後退していったところ、クマは逃げていったということです。
・おととい12日、朝の8時頃でした。これは登山者がヒグマと遭遇してスプレーをクマに向かってシューっと噴射したんですが、その後も数分間つきまとわれたということです。
今回男性が襲われた場所から山の山頂方向に向かって2時間ぐらい歩いたこの辺りにつきまといのクマがいたということなんですね。一連の事象に関して、下鶴先生はこう話しています。
「知床ではヒグマが人に慣れてきているとも言われている。これまでと同一個体かは分からないが、人につきまといをしていくうちに、行動がエスカレートしたのではないかと分析をしています。」