知床・羅臼岳のクマ被害から1週間 明らかになった被害状況と安全対策の課題 専門家が語る回避策とは
2025年 8月21日 16:08 掲載
知床半島の羅臼岳で男性がクマに襲われ、死亡してから1週間。襲われた当時の様子が明らかになってきました。
事故の直前、羅臼岳の登山道で目撃が相次いだクマ。閉鎖された登山道の、再開のめどは立っていません。
羅臼岳の登山道で14日、東京都の26歳の男性がクマに襲われ、翌日、遺体で見つかりました。事故から1週間となる21日、道などが開いた「ヒグマ対策関係者会議」。事故の経緯が明らかになりました。
友人と2人で岩尾別温泉に向かって下山中だった男性。羅臼岳登山道の標高550メートル付近でクマに襲われました。道によりますと、男性は事故の直前、友人と離れて先に1人で走って下山していました。
こちらは1年前の、現場付近の映像です。道幅が狭く、登山道の脇は草木が生い茂っています。道によりますと、男性がクマと遭遇したとみられる場所は、登山道のカーブで見通しが悪く、道幅は狭かったということです。
さらに道の調査で男性はクマ鈴は携帯していましたが、クマよけスプレーは持っていなかったとみられています。
被害を防ぐためにクマと出合わないことが重要だと話す専門家は。
北海道大学獣医学研究院 下鶴倫人准教授)
「クマにとっては人が歩いて近づくのと、人が走って近づくのでは全然違う。いきなり距離が詰まる。そこでクマが興奮し、子どもを守るために攻撃行動に出るのは想像に難くない」。
依田アナウンサー)
専門家は「クマにとっては、人が歩いて近づいてくるのと、人が自分に向かって走って近づいてくるのとは、全然違った意味合い、いきなり距離が縮まるわけですね。そこでクマ側が非常に興奮する。子どもを守るために攻撃行動に出るというのは、決して想像に難くないのではないかと思います。」と話しています。
実際に自然の中でクマに会った際の防衛策で、大きな役割を果たすのがクマスプレーです。今一度、このクマスプレーに関して見ていきましょう。
主成分が唐辛子などに含まれる辛味成分のカプサイシンです。射程距離が、短いなと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、3メートルから4メートル。これぐらい引きつけてクマの顔を狙わないと効かない場合が多いということです。
販売されている場所は、ホームセンターやアウトドア専門店などです。そして、世の中にはたくさんのクマスプレーとされるものがあって、いわゆる粗悪品というものもあるそうなんですが、元知床財団の笠井さんは、こんなものを勧めています。
カプサイシンの含有量が2%以上のもの、これが、いわゆる高濃度とされるものだそうです。そして、アメリカの環境保護庁のEPAという認証を受けているもの。缶に、こうやって表記があったりするそうなんですね。日本にはこの認証制度がないため、これを一つ参考にしてほしいということでした。
ただ、ちょっと高くて1万円から2万円ほどです。加えて、飛行機にはこのクマよけスプレーは一切搭載することができませんので、レンタルサービスを行っているところもあるんです。例えば、知床財団だったら、貸出料24時間1100円で、使用した場合15400円がかかるというもので、ニセコ駅などでもレンタルサービスを行っているということです。
そして山の中で走ることへの注意、下鶴先生はこう話しています。
クマは動いている動物に反応する習性があるので、人が近くを走ると興奮して追いかけることも。何よりクマを刺激しないことが大切だと指摘しています。正しい知識と備えを持って山には入りたいものです。