10年余りで75倍に?リゾートバイトで急増するシニア世代 趣味と実益をかねた人生満喫のライフスタイルとは
2025年 8月25日 20:20 掲載
観光地の宿泊施設などで短期間住み込みで働く「リゾートバイト」。いまこのリゾートバイトをするシニア世代が急増しています。一体なぜなのか?そこには趣味と実益を兼ねた人生を楽しむライフスタイルがありました。
《温泉旅館で60代の新人2人が奮闘》
北見市にある温泉旅館「塩別つるつる温泉」。北海道の四季折々の食材を使った料理や、弱アルカリ性でお肌がつるつるになると言われる温泉が人気です。この旅館で、先月から来月末までの3か月間、「リゾートバイト」をしているのが東京出身の安増岳彦さん60歳と、奈良県から来た桑田真さん62歳です。なんと源泉かけながしの温泉が無料で入り放題!1日3食付きで、家賃・光熱費も無料!そんなリゾートバイトを楽しんでいます。
《なぜ?シニア世代の進出は10年余りで75倍に!》
「リゾートバイト」とは、観光地にあるホテルやレジャー施設などで短期間住み込みで働くこと。「リゾートバイト」に特化し人材派遣を行っている「ダイブ」によりますと、働き手は20代から40代半ばまでが多いものの、ここ数年で50代以上の中高年が急増。データを取り始めた2012年のおよそ75倍に増加しているといいます。
■ダイブ原由利香さん「アクティブな方だったり、定年退職をしてもまだ元気なので社会貢献をしたい、まだまだ元気なうちに働きたいという方が増えている。旅行でも遠くて行けない場所だったりすると、働きながら観光しながら大自然を味わうみたいなところは、(勤務地として)北海道のひとつ人気なところ」
《東京から北海道の車好き仲間に会うために…》
物流センターで働いていた東京出身の安増さん。車の運転が大好きで去年12月に定年退職した後はSNSで知り合った全国各地の車好き仲間と交流するため、車中泊をしながら旅をしてきました。先月からは北海道にいる仲間に会う目的で、リゾートバイトに初挑戦しています。
■安増さん「北海道はちょっと遠いので、行ったらお仕事もして、少し稼いでというところです。時間がいっぱいできたので、自分のためにいろんなところに行きたいというところで、1つの方法としてリゾートバイトはありかなと思った」
妻の理解も得て始めた「リゾートバイト」。仕事はレストラン業務です。午前と午後の2回に分けて勤務があり、朝は6時から10時まで4時間働きます。
■安増さん「おはようございます。いらっしゃいませ。お席お好きなところにおかけください」
午前10時朝食バイキングの仕事を終えると…
■安増さん「あっウィンナー1本残っていました」。
毎朝、旅館のバイキングが無料で食べられるのも楽しみのひとつです。北見市の特産品が食べられるのも、バイキングならでは。
■安増さん「(白花豆は)とても甘くておいしいです」Q食べ終わった後はどう過ごす?「部屋に戻って、ちょっとくつろいで寝ます。夕方5時からの仕事に備えて」
午前10時から午後5時までは7時間の中休みです。こちらの旅館では、使っていない客室が従業員の寮がわりとなっています。
《奈良から北海道の山々を登るために…》
■桑田真さん(62)「洗濯物干場が客室なのでない。(洗濯紐やハンガーは)リゾートバイトの必需品」。
奈良県から来た桑田さんは元教師です。リゾートバイト歴は2年半で北海道は7か所目の勤務地です。働きながら全国各地の山を登るため、定年退職を機にリゾートバイトを始めました。
■桑田さん「地元の人が親しむ山は、そこで暮らしながらでないと奈良からわざわざ旅行に来て、そこに登るということはなかなかしないので、リゾートバイトで暮らしながら楽しめるのが良い」
ここでの時給は1100円。社会保険がついて月の手取りは15万円ほどです。4週間の間に休みが6日あり、休日に山登りを楽しんでいます。
■桑田さん「自分で泊まって遠征をずっとしているとなったら、それこそ何十万円(かかる)。その分働くことでプラスになっているわけなので十分ペイする」
Qご家族は奈良にいる?「そうですね。妻はいますね。好きにしろと」
午後5時から9時まで再び勤務です。夕食の配膳やお客さんに料理の説明もします。
■安増さん「鍋物が豚肉のすき焼きになります。ただいまより火をつけてまいりますので、煮立ちましたらお召し上がりください」
Q表情から余裕が消えていますが?「そうですか?」
一方、リゾートバイトの先輩・桑田さんは…
■客「ここはもう何年経つ?大分経つ?僕はもう20年ぐらい前に(来たことがある)」
■桑田さん「そのころは旧館の。今もお風呂はあります」
旅館の情報もしっかりと頭に入れて接客にあたります。しかし、お酒を飲まない桑田さんには苦手なことも。
■桑田さん「これロック(グラス)なのか?」■従業員「水割りグラスはこちら」■桑田さん「こっちか。下戸なので(お酒を出すのが)一番苦手」
■安増さん「ビールをつぐのはたぶん僕の方が慣れている分上手かもしれない」
《人手不足の観光地にもメリット》
シニア世代のリゾートバイトは、人手不足に悩む旅館にとってもメリットが大きいといいます。
■塩別つるつる温泉野上洋平支配人「3月末で数人辞めてしまいまして、やっぱり人生の先輩でございますので、意識がすごく高くて我々も勉強になるというところはあります」
午後9時、1日の仕事を終えた2人。桑田さんは翌日休みなので雌阿寒岳に行くといいます。
今回取材した2人は単身赴任ですが、夫婦でリゾートバイトをする人もいます。また趣味を楽しむだけではなく、移住を考えてお試しで短期間住み込みで働いてみるというケースも多いそうです。北海道は特にゴルフやスキーが趣味の人に人気の勤務地で、高齢化や物価高、人手不足が叫ばれる中、人生を積極的に楽しむ「リゾートバイト」は、今後もシニア世代から注目を集めそうです。