タンチョウ生息地でメガソーラー建設 文化庁、調査不十分の場合「原状回復」示唆 釧路湿原メガソーラー問題
2025年 8月26日 15:56 掲載
釧路湿原周辺のタンチョウが生息するエリアで進むメガソーラー建設について、文化庁が「天然記念物に及ぼす影響について十分な確認がされていない場合、原状回復を命じる可能性もある」との見解を示したことが新たにわかりました。
国の天然記念物・タンチョウの親子。湿原を歩くそのすぐ後ろでダンプカーやショベルカーが動いています。
釧路湿原周辺の4・2ヘクタールの土地で建設が進むのは6600枚の太陽光パネルを並べるメガソーラー。事業者は大阪に本社を置く日本エコロジーです。
日本エコロジー・大井明雄営業部長)
「キタサンショウウオに関しては再調査しました。タンチョウはもともと大丈夫だというお墨付きをもらっています」
日本エコロジーはこの建設現場で釧路市のガイドラインに沿って希少生物の生息調査を行い、タンチョウだけでなく絶滅危惧種のキタサンショウウオや猛禽類も生息していないという結果を得たと主張しています。しかし、この調査について釧路市側は複数の問題点があると指摘します。
釧路市立博物館・秋葉薫館長)
「調査報告書と専門家の意見というのを付して提出していただくもの。我々に提出いただいたのはタンチョウに関する専門家の所見。調査の時期も一般的なオジロワシの調査時期とは異なる時期の調査報告でした」
市立博物館によりますと、タンチョウの調査は専門家へのヒアリングのみで現地での生息調査が行われていないほか、日本で繁殖する猛禽類のうち最も生息数が少ないチュウヒについては調査自体が実施されていませんでした。
また、国の天然記念物・オジロワシの調査は2月中旬から9月下旬の繁殖期に最低でも毎月3日間行うべきものの、実際には去年の10月に3日間行われただけだったということです。
釧路市側は6月、日本エコロジーに再調査を求めましたが、回答がないまま工事が進められているため、今月21日、文化財保護法に基づき、「希少生物の生息が危惧される」とする意見書を文化庁に提出。これに対し文化庁は。
阿部文科大臣)
「騒音また振動等を伴う天然記念物への保存に影響を及ぼす行為をしようとしているときは、影響が軽微でない場合は文化庁長官の許可が必要であることから、釧路市の意見の通り、この影響の確認を求めることは適当である旨を22日付のこの文書で北海道を通じて回答しているところでございます」
調査が不十分なまま工事が行われている場合、「原状回復を命じる可能性もある」という見解を示した文化庁。釧路市側は27日、日本エコロジー側にこの内容を伝えるとみられます。
日本エコロジーは26日、HTBの取材に対し「事前調査は適切に行っている」とコメントし建設を続ける意思を示していますが、文化庁の見解が今後の工事に影響を与えるのか、注目されます。