北海道の小さな町から世界へ 競技歴3年で日本一! パワーリフティングに目覚めた高校生 強さの秘密は?
2025年 9月 9日 19:30 掲載

空知の沼田町に、あるスポーツで日本一になったという高校生がいるということで、取材しました。世界の舞台で奮闘する18歳の挑戦です。
沼田町の夏の風物詩、夜高あんどん祭り。太鼓を叩いている少年が、今回の主人公です。高校3年生の馬狩柊斗さん。ちょっと珍しい競技で、日本で一番になった実力者。
パワーリフティング。筋力を鍛えるウエイトトレーニングを競技にしたもので、競技人口は全国でおよそ5700人。
馬狩柊斗さん:「ベンチプレスだと、重たい物とか持ったら、絶対粘ると思うんですよ。その時に周りから応援があったら、その応援で頑張れたり、自分が見ていても応援したくなるので、上げた時が自分もうれしくなるし、その人もうれしくなる」。

馬狩さんは、競技歴わずか3年で全国大会に2回出場。14歳から18歳クラスの59kg級で、2年連続日本一に輝きました。そして、舞台は中米コスタリカへ。世界大会に出場した高校生の挑戦を追いました。
沼田町の高校3年生、馬狩柊斗さん。パワーリフティングの日本一に2年連続で輝き、いま世界の頂点を目指しています。
馬狩柊斗さん:「野球とかバスケとかの球技などと違って、自分自身との戦い。数字として結果が見られるので、大会に出る度に重量が上がっていったら、成長しているなというのも感じられる」。

パワーリフティングには、3つの種目があります。バーベルを肩に担ぎ、しゃがんで立ち上がる「スクワット」。仰向けでバーベルを押し上げる「ベンチプレス」。そして、床に置いたバーベルを引き上げる「デッドリフト」。3種目合計の重量で競うほか、種目別でも順位がつきます。重さだけでなく、フォームも審査の対象です。
馬狩柊斗さん:「バーを持った時に、しっかり尻を付けてないといけなくて。その時に『スタート』とコールがあるんですけれど、その時に尻が上がってベンチ台に触れていなかったらダメだし、胸からバーを上げる時も尻が上がると、試合ではダメになるので、自分はよく練習でもしてしまうので意識しながらやっていますね」。
今年2月に、滋賀県で行われた全国大会。馬狩さんは、14歳から18歳クラスの59kg級で総合優勝。さらに、スクワット競技で193kgの日本新記録を樹立しました。

深川市の高校に通っている馬狩さん。学校が終わると、毎日、沼田町の町民会館で練習に励んでいます。指導するのは、高橋竜介さん。競技歴22年のベテランです。
高橋竜介さん:「競技を始めて1年で日本一になって、世界大会に行っている。なめてますよね?僕でさえ、全国の表彰台がやっと最高位なのに」。
記者:「本当はうれしいんじゃないですか?」
高橋さん:「誘ってよかったかな、と。僕が誘わなかったら、というところもありますけど」。馬狩さん:「そこは感謝しています」。
高橋さん:「声が小さいよ!」

2人の出会いは、馬狩さんが中学3年生の時。パワーリフティングをしていた父親が、同じチームの高橋さんに、息子のことを話したのがきっかけでした。
高橋竜介さん:「『柊斗が筋トレに目覚め始めた』と。お父さんが(パワーリフティングに)誘ったがやらないと聞いて、せっかくトレーニングに目覚めたなら僕も声をかけてみようかなと。親子が北竜温泉に行っているということだったので、偶然を装って先回りして行って(誘った)」。
馬狩さん:「温泉は本当に偶然だと思っていた。仕組まれていたんですか?」
高橋さん:「お父さんも知らないよ」。

小さい頃からスポーツが得意だった馬狩さん。体幹と太ももの強さを生かし、パワーリフティングを始めてわずか10カ月後に、全国大会への出場を果たしました。そして、急成長の裏には、馬狩さんが欠かさず行っているという「振り返りと研究」が。毎日の練習をスマホで撮影して、より良いフォームを目指しています。
馬狩柊斗さん:「やっぱり自分を見返して、どんな感じだったのか確認したいので。たまに調子悪くなったときに『自分が調子よかったときはどうだったかな』と見返したりとかで、保管してますね」。
午後6時、トレーニングルームに筋肉自慢の人たちが集まってきました。旭川や滝川から通っている人もいます。
滝川からの男性:「『沼田にこんな場所があるぞ』と、ここにいる誰かから聞いて。気付いたら、一緒に連れてきてもらったみたいな感じです」。
旭川市からの男性:「(馬狩さんは)えぐいですね、フォームがきれいです。同じ体重でもフォームだけで何十kgも変わってくるので、お手本ですね」。
日本で一番になった馬狩さんが、次に目指すのは…。
馬狩柊斗さん:「(種目別で)アジア記録と表彰台ですね。せめて表彰台には立ちたいです」。

先月27日、馬狩さんが向かったのは日本からおよそ1万3000km離れた、中米・コスタリカ。今年の世界大会の開催地です。世界大会出場は2年連続。去年は総合11位でした。今年は8位以内の入賞と、種目別での表彰台が目標です。
(競技実況)
「世界一の力持ちは誰だ!?パワーリフティングの世界大会。3種目の合計で競い合います。日本の馬狩柊斗、沼田町の出身、登場です。まずは、スクワット…」
「全て合わせて475kgを持ち上げました。総合7位入賞です。種目別のスクワットでは3位。目標の表彰台に上がりました!」
大舞台での挑戦を終えた馬狩さん。コスタリカからインタビューに答えてくれました。

馬狩柊斗さん:「一番は、悔しいという気持ちが大きいが、楽しかったなという気持ちもたくさんあります。今までとは違うレベルの高い層での戦いになるので、目標に届くために小さなことからコツコツと始めていって、焦らず今の自分にできることを少しずつやっていこうという感じでいます」。
沼田町から世界へ。頂点を目指し、自身の限界に挑み続けます。