【独自・詳報】札幌・ハンターがゴルフ場でクマ1頭を無許可で駆除 “緊急避難”を主張か
2025年 9月 9日 16:15 掲載
札幌市南区のゴルフ場で、運営会社がシカ駆除のために雇っているハンターがクマ1頭を無許可で駆除していたことがわかりました。ハンターは猟友会に所属していないということです。
雄大な自然に囲まれた札幌市南区のゴルフ場=「滝のカントリークラブ」。このゴルフ場のコース内に先週、クマが出没しました。
こちらはゴルフ場を訪れていた人が撮影した映像。カートのモニターから警報音が鳴り響き「全組ハウスまでお戻りください」と表示されています。今月2日から3日間連続で出没したクマ。利用客によりますと、出没のたびにアナウンスが入り、プレーを中断せざるを得ない状況となったということです。そんな中・・・
■本間壮惟記者:
「シカ駆除のために雇われたハンターが、無許可でクマを駆除したということです。」
3日目の出没があった4日午前。ゴルフ場はコース内にいたおよそ220人を避難させ、契約している専属のハンターの男性にパトロールを依頼したといいます。
■滝のカントリークラブ・飛田寛大支配人:
「コース内の巡回に、契約しているハンターにお願いして、3日連続同じ場所に出ているので、餌になるもの等の確認も含めて巡回をお願いした。」
ハンターの男性が1人でコース内を巡回していたところ、クマに出くわしたということです。
■滝のカントリークラブ・飛田寛大支配人:
「目撃があった現場付近で餌になるもの等を探してた際に、大体4、5mの距離でクマが出たということで、自分の方に動いてきたということで、緊急避難的な措置として発砲したと聞いています。」
この発砲で駆除されたクマ。しかし、札幌市などによりますと、このハンターの男性は猟友会に所属しておらず、鳥獣保護管理法に基づくシカの駆除許可は得ているものの、クマを駆除する許可はなかったということです。
有害鳥獣としてのクマ駆除は、あらかじめ道などに申請を行ったうえで許可を得てから行う必要があります。通常は自治体が許可を得て、猟友会などに依頼し駆除してもらうケースがほとんどです。しかし、人命に危険が迫っている場合は、許可のない駆除が刑法の「緊急避難」として認められるケースもありえます。今回のケースは「緊急避難」に当たるのでしょうか。
■札幌市環境共生担当課・坂田一人課長:
「緊急避難で発砲すること自体がかなり特殊なケース。本当に差し迫った危機だったのか、警察としても確認をしっかりとするということでした。」
猟銃免許を持つ現役のハンターでもある中村憲昭弁護士は、「緊急避難」が認められるハードルは非常に高いと話します。
■現役ハンター・中村憲昭弁護士:
「緊急避難っていうのはあくまでも本当に例外的な措置なんです。
違法に見える行為を行った人でも、例がい的に違法性を阻却(そきゃく=退けたり妨げたりすること)しましょう、許してあげましょうという理屈なんです。ヒグマの駆除の許可を持っていないにも関わらず、ヒグマの見回りに出たとなれば、銃刀法の解釈を安易に考えすぎかなと。緊急避難で逃れられるというのは安易かなと思います。」
クマによる被害が相次ぎ、駆除のあり方が問われている中で起きた今回の問題。駆除の許可を出す道は、警察などとハンター立会いのもとで現場の確認を行っていて、今回の駆除が適切だったかどうか詳しく調べています。
■依田アナウンサー:
ではスタジオで現役ハンターでもあります、中村弁護士の話を今一度まとめておきます。まず大前提としまして、猟銃所持の許可を持っていても、いつでも駆除ができるわけではないということです。事前に動物ごとに有害鳥獣駆除の申請をして、道などから許可を得た場合に限ってその動物への発砲が認められる、こういう矢印になるわけなんですね。
今回はシカの駆除許可しか得ていないハンターがクマに発砲をして駆除したということです。
ハンターは「緊急避難的な措置として発砲した」と話していますが、中村弁護士、緊急避難についてはこのように話しています。「例外的に違法性を許すものだが、要件が厳しい」と。具体的には「全く予期せずクマに出会った場合、そして襲われそうになった場合、命を守るために仕方なく打ったら違法性が問われない可能性がある。」そうなんですが、今回は「事前にクマの出没が確認されていて、クマの駆除を意図していた場合、この要件が満たされていないのではないか」という見方です。
クマの駆除許可がないのにクマの見回りに出ていたとしたら、緊急避難そして法律の解釈が誤っていた可能性もあると中村弁護士は話しています。