障害に負けず叶えた 野球選手の夢 独立リーグ 士別サムライブレイズ 新人選手に密着!
2025年 9月14日 15:14 掲載
「背番号68番、工藤琉人」
工藤琉人選手「背番号68番、外野手の工藤琉人です。よろしくお願いします」
2025年3月士別市で行われたのは、プロ野球独立リーグ北海道フロンティアリーグ所属のチーム=「KAMIKAWA・士別サムライブレイズ」の選手お披露目会見です。
少し緊張した面持ちで参加した工藤琉人さんは、高校を卒業したばかり。
今シーズンから外野手としてチームに加わりました。
実は工藤さんには軽度の知的障害と学習障害があり、実家の厚岸を離れ、網走市にある日本体育大学付属高等支援学校で3年間寮生活を送っていました。
兄の影響で、幼い頃から野球一筋だった工藤さん。
しかし工藤さんが通っていた学校には野球部がなく、3年間、たった一人で野球の練習に励んできました。
そして去年の夏、甲子園への出場が叶わなかった高校3年生を対象に開かれた「リーガサマーキャンプ」に参加。
試合で多くのヒットを打つ素晴らしいバッティングを披露。
その活躍がきっかけで士別サムライブレイズにスカウトされました。

KAMIKAWA士別サムライブレイズ代表・菅原大介さん「チームの関係者から、凄い高校生がいるという話を聞いて。凄くハツラツとして、そのプレーする機会を凄く楽しんでいた姿が印象的でしたね」
入団からおよそ1ヶ月。
新たな生活にも少しずつ慣れてきました。
工藤琉人選手「この間だったらダム。ダム行って雪かきしたり、ネットも張りましたし」
プロ球団といっても所属している選手たちは、午前中は働き、午後から全体練習に入ります。
新人の選手に求められるのは、第一に徹底した基礎固め。
周りの選手たちに追いつくため、懸命にトレーニングに励みます。
本西厚博監督「完璧!」
工藤琉人選手「みんなの自主練の量が凄いなって、みんなについていけるように頑張りたいと思います」

大好きな野球に打ち込む工藤さん。
しかし障害があるため、「サインの習得」が苦手です。
本西厚博監督「彼の中でも自分だけが覚えられないとか、そうしたらチームに迷惑かける仲間に迷惑かけるっていう部分がどこかしらあったと思うんですよ。それで積極的に覚えようとしてくれたので」
そして迎えたオープン戦は、旭川ビースターズとの対戦です。
工藤さんにとって初めての実践の場です。

工藤琉人選手の兄・啓斗さん「楽しそうだなっていうのと、緊張ですよね」
工藤琉人選手の母・香織さん「今日をずっと楽しみにしてきたので」
球場には、工藤さんの家族の姿も。
選手としての晴れの姿を見ようと、厚岸町から駆けつけていました。
いよいよ打席に立った工藤さんに、本西監督がサインを送ります。
そして5球目。
三遊間を破る見事なタイムリーヒット!
その後、一塁ベースでトラブルが。
本西監督からのサインを読み取ろうとしますが、1塁ベースコーチに確認しながら首をかしげる場面も。
本西厚博監督Q今日の工藤さんは?「いいんじゃない?一本打ったから上出来。あとね、盗塁(のサイン)出したのに走らなかった。まあこれからだよね」
久しぶりにフィールドに立つ姿を見られたという家族は。
工藤琉人選手の母・香織さん「とりあえずヒット打てて良かったよね最初。なんか三振の仕方も懐かしくてね」
工藤琉人選手「おはようございます!」Q焼けましたね「日焼けえぐいです」オープン戦からおよそ3ヶ月。
8月に入り、チームはシーズン真っ只中を迎えていました。
北海道フロンティアリーグは士別、石狩、別海、美唄の4チームで戦います。
工藤琉人選手Q朝ご飯ですか?(笑って頷く)
Q腹ごしらえはばっちり?(グッドサインで答える)

工藤琉人選手の母・香織さん「頑張って!」この日も応援に駆けつけていた工藤さんの家族。
なかでも妹の萌瑠さんは一人でも応援に通っているといいます。
工藤琉人選手の妹・萌瑠さん
Qカメラは元々持っていた?「(首を振る)買った!」
応援に来る度に、工藤さんの姿を写真に収めています。
Qあ、かっこいい!「かっこいい?」
Qいいですね「いい?やったー」
「プレイボール!」この日は別海パイロットスピリッツとの対戦。
工藤琉人選手「絶対打ちます」
本西厚博監督「必死になって打てよ」
工藤琉人選手「はい」
2回裏、打席に立った工藤さん。
まずは1球目はボール。
本西監督からのサインに頷きます。
その後、5球目を打ちますがショートゴロでアウト。
残念ながら塁には出られませんでしたが、しっかりとサインを読み取ることができました。
本西厚博監督「来年はレギュラーを取ってもらわないと困る選手。それくらい期待しています」
この日のリーグ戦は4対5で惜しくも敗戦。

試合後、ファンの男性が工藤さんにサインを求めます。
別海町から来たファンの男性「日帰りです」
工藤琉人選手「日帰り!?」
海別町から来たファンの男性「このあとすぐ帰ります」
およそ300キロ離れた別海町から、応援にかけつけたといいます。
別海町から来たファンの男性Q工藤さんのどんなところを応援?
「年近いからすごい頑張ってるなって思ってるのもあるし、なんだろう…かっこいいです」
工藤琉人選手(19)「応援してくれる人がいたらすごい心強い。頑張ろうってなる」
Q楽しいですか?「毎日。まず野球できるのがすっごい楽しい。野球のグラウンドに立っちゃったら、もう色んな事忘れて『野球、野球!』てずっと頭の中野球しか考えてないです」「来シーズンも独立で北海道でやりたいと思っているので、レベルを自分で高めていって、もっと上のレベルに行けたらいいなと思います」
障害を抱えながらも、自ら掴み取った野球選手としての夢舞台。
来シーズンに向けてさらに成長していく工藤琉人選手の活躍に期待です。